やってきました、七歳です
お久しぶりです。カイン・ロンガヴィル、七歳です。
待ちに待った七歳です。
魔力検査があるのです。この検査で魔力の有無、魔力の多さ、適性属性なんかが判るのです。
魔力の有無に関しては……あれですね、実の子ではなかっただとか劣性の先祖帰りだとかがわかるのだそうです。
‐魔力のある貴族同士の子供ならば、必ず魔力を持っているのですが、極稀に、魔力を持たない子供、『純血』が生まれるそうで。
まぁこの話はまた時間のあるときで。‐
検査は貴族の子供は絶対に受けなくてはいけません。
受ける場所は、王都にある教会です。
約一月の間、国中の貴族の子供が王都に集まり検査の順番を待つのです。
なので、毎年この検査の時期に王宮で七歳の子供達のでびゅたんと? って言うのを開くそうです。
ようは同級生はこんな顔ぶれですよーっていう、顔見せですね。
デビュタントで婚約者を見付けたり発表したりする貴族もいるそうです。
多分、ゲームではこのデビュタントでシシィと王子の婚約が正式に決まったのでしょう。
幼い頃からの婚約者だと、ゲームの説明にあった気がするのです。
「シシィ、デビュタントで着るドレスは決まったのですか?」
「はい。お母様とお父様と一緒に決めました。カインは? どのようなものにしたのですか?」
王都にあるロンガヴィル邸。
今日はシシィが遊びに来てくれました。
魔力検査が始まるのは、来週からですが、僕の順番は三週間くらい先の予定です。シシィは来週すぐです。
僕とシシィは教会に行く日が二週間ほど違います。
公爵家と子爵家ですから、当然公爵家の子息、子女の方のほうが優遇されます。
なので、シシィが王都に来た日に、僕も母様にお願いして王都に来たのです。
「僕は、ルーベンス兄様と同じ型で、色だけ変えたものにしました。……シシィ、公爵様とは、ちゃんとお話出来ていますか?」
「はい。お父様とは、毎日は無理ですが、色々なお話をするようになりました」
二年前の、シシィが泣いた日から、公爵様へ僕の父様が働きかけてくれて、公爵様は家族との時間を作りました。
父様に言われて、一日とことんお話をしたそうです。
そのお陰か、公爵様はとっても、とーっても、家族思いになりました。
家族思いになりすぎて、若干溺愛の傾向にあるのは……まぁ、愛されていると実感したシシィが嬉しそうなので、良しとしておきましょう。
王子様との婚約? 公爵様が握り潰してましたね。
「それより、魔力検査がとても楽しみです。魔力検査が終わったら、私もマーラ姉様と一緒に教会へ言っても良いと、お母様に言われました」
「そうですね。僕も検査が終わったら良いと言われてます。皆で行きましょう」
「ほうし活動とは、どのようなことをするのかしら?」
「マーラ姉様に、後で聞きましょう」
教会には様々な方がみえられます。
祈る方、子供を預ける方、怪我をした方。
特に、怪我をした方が多く、教会で聖魔法を受けにみえられるのですが、そういった方々は魔力のある冒険者の方が大半なのだそうです。
僕達貴族は魔力がありますが、幼いと魔力が安定していないため、あまり強い力の方々に一度に沢山会うのは危険なのだそうです。
なので、貴族の子供が外出出来るのは限られているのです。
魔力検査を受けると、仕組みはよく解りませんが自分の魔力が安定するため、外出して魔力の高い方に会っても影響を受けにくくなるそうです。
「明日にはルーベンス兄様がこちらへ来てくれるので、シシィも一緒に学院のことを色々お聞きしましょう」
「ルーベンス兄様が? お久しぶりだわ、楽しみです」
兄様や姉様と色々なお話をしたり、ほんのすこしだけれど王都を散策したりしていると、魔力検査の日はすぐにおとずれます。
シシィはもう終わりました。
僕の検査が終わったら、二人で教え合おうと約束したので、シシィの結果は母様にも父様にも聞いていません。
母様と教会の入り口で別れます。
僕の検査の日は後半ですが、それでも結構人数がいるので、教会に入れるのは検査をする子供と、警備のための騎士や警備団の方達のみになっています。警備の方々は、魔力を持っていない方が選ばれるのだといってました。
「それでは皆様、今から魔力検査を行ってまいります。名を呼ばれた方から彼方の部屋へ入っていただき、司祭様から洗礼を受けていただきます」
シスターの方がこの後の説明をしてくれます。
司祭様が一人ずつに魔力をほんの少しだけ流すと、僕達の中の魔力の流れが安定して属性が完全に固定? されるそうです。
その属性を、司祭様が魔力を文字や記号に変換させて定着させる魔力紙と言うものに写し取ってくれるそうです。
司祭様お一人でするのは大変そうですが、後から父様に聞いたら、これは魔力検査特有の魔法らしく、代々司祭様お一人にしか受け継がれないものらしいです。
やり方をただ教えるというのではなく、魔法の術式を譲渡するのだかとか。
難しくてあまり理解が出来ませんでした。
それにしても、今年七歳になる子供という狭い条件ですが、結構人数がいますね。
……あ、そうです。第二王子様も今年七歳です。
皆さん、王族の方と関係を作りたいと、同じように子供をつくられたのですよね。
女子ならば婚姻、男子ならば側近として王族の方と縁を結べます。
「カイン・ロンガヴィル様」
「はい」
他愛ないことを考えていたら、順番が回ってきました。
返事をして、シスターの元へ行けば、奥にある扉へ案内されます。
中へ入れば、司祭様が小さな丸テーブルの側に立っていて、他には何もない部屋でした。
「カイン・ロンガヴィル様ですね。どうぞ、こちらへ」
「はい」
司祭様に手招きされ、丸テーブルの前へ立ちます。司祭様と向かい合う形になりました。
丸テーブルの上には、B4くらいの大きさの紙が置いてありました。
真っ白な、この世界では珍しい紙です。
貴族や王族でも使えるのは羊皮紙です。
なのに、丸テーブルに置いてあるのは、前世で馴染みのあった紙。
何だかとても不思議な感じです。
紙が懐かしいと思ってしまうし、そういえば、ゲームの中でもヒロインが手にしていた魔力検査の結果は、白い紙に書かれていたな。と思い出します。
確か、ゲームのオープニングでチラッとこの検査のことに触れるのです。
その時にヒロインの検査の紙が画面に映ったのですが、あれは見やすいように白にしていたのではなく、検査の紙自体が本当に白だったのですね。
デビュタントの本来の年齢やら時期やらは違う気が物凄いするけど、フィクションなので。
あと、さっさと主要キャラを出したいので。