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side:トルク・ロンガヴィル

私はトルク・ロンガヴィル、ロンガヴィル子爵家当主だ。


私……まぁ、気取る必要はないか。

俺には愛しい妻と可愛い三人の子供がいる。

妻は何年経っても出会った頃のまま、いや、年々美しくなっていくし、娘も妻に似て綺麗になっていく。

最近は領地の協会に通って奉仕活動も進んでしていると聞く。

優しく気配りの出来るところは妻にそっくりだ。

長男は俺に似てきたな。

……俺のように、学院でゴリマッチョだとからかわれてやしないか心配だ。今度帰省した時に聞いてみよう。

からかわれているようならば、黙らせる方法(物理)を教えなければ。

次男は、顔は妻に似て柔和。しかし、子供達の中で一番好奇心が旺盛だ。


最近、妻の姉であり公爵夫人でもあるドロシー義姉上の一人娘のシシィ嬢が我が家に泊まられる頻度が増していた。

妻も次男のカインも喜んでいるので、不思議ではあるがまぁ良いだろうと思っていたのだが、どうも良いことだけではないらしい。

妻とカインは揃って俺の部屋を訪れ、シシィ嬢が泣いていたと相談をしてきた。


「父様、シシィは公爵様に嫌われているのですか?」

「貴方。一度、お義兄様に真意をお訊ねいただけないかしら」


妻もカインもシシィ嬢を可愛がっているからな。

俺も、あまり会う時間はないが、会えば何時も楽しそうにしているシシィ嬢が悲しんでいるのは気にかかる。




仕事の調整をし、早速公爵に会う算段をした。

俺の侍従は優秀だな。たった半日で時間を開けて約束を取り付けてきた。


「久しぶりだな、トルク」

「お久しぶりです、サルグリッド公爵」


形だけの挨拶を交わし、ティーセットを置いて退出する使用人を見送る。

二人だけになれば、促されるまでもなくさっさと用意された椅子に座った。

公爵は俺の行動にただ笑いを浮かべるだけ。


エファン・フォン・サルグリッド公爵。

王族の血を引く者であり、本人も国益のために身を削るのを厭わぬ者。

学院時代からの気の置けない友であり、妻の姉の夫という、親戚関係になった奴だ。


「それで? こんな急な面談を取り付けて、どうしたんだ?」


ムスッとした表情で抑揚なく言うが、エファンはこの不機嫌な顔が通常なんだよな。

昔から、やれ機嫌が悪いだの、悪いことを考えているだのと陰口を叩かれていたな。

…っと、昔話に来たのではなかったな。


「時間もないから、単刀直入に聞く。エファン、お前は娘が嫌いか?」

「………………は?」


おぉ。珍しいな。

ティーカップを持ち上げたままの体勢で、たっぷり五秒は固まりやがった。

無表情ながらバカ面なのが判るぞ。


「カイン…うちの末の息子が心配していてな。何でもお前、シシィ嬢を第二王子に押し付けて家から追い出したいらしいな?」


呆然としたエファンを待つことなく、カインや妻から聞いた話をする。

時間がないのは事実だからな。

多分、耳は聞こえてるだろう。


シシィ嬢がなぜその話を知ったのか、そしてどう思ったのかも話してやる。

お、だんだん顔色が変わってきた。眉が寄ってる。眉間の皺が深くなってるな、考え事をしているときの特徴だ。

さぁ、時間がないからさっさとお前の考えを話せ。早く家に帰らないと、妻達の寝顔しか見れなくなってしまうではないか。





エファンから聞いたことをカインに教えると、カインが悲しそうに眉を下げた。

カインの…子供の考え方を聞いて初めて、エファンの事を心底馬鹿だと罵りたくなった。

カインは男の子だから、エファンの考えは歳を重ねたら理解が出来るかもしれない。

だが、シシィ嬢は女の子だ。妻にも聞いたが、大分呆れていた。

そして、本音を話さなければ親子でも解り合えることはあり得ないとも言われたな。


「妻とカインが、言っていたよ。どんなに高位の者に嫁げても、実の親に嫌われていたら悲しいとね」

「私は、」

「俺も娘がいるが、お前のような非情さは持ち合わせていない。だから、とりあえずお前はシシィ嬢と、ドロシー義姉上と腹を割り本音を話し合え」

「……私は、」


こいつの場合は自分一人で考え、一人で答えを出して、そこで完結してしまうから悪いのだろう。俺やドロシー義姉上以外に十文字以上話すことが殆んどない。

昔からそうだな。

言葉足らず以前の問題だ。

自分の思っていることを口に出すということをしない。

だから他人に色々言われるんだ。

こいつの噂の八割は見た目と無口すぎるせいでの誤解が主だからな。


「……公爵領を継いでも婿に期待が出来ないから、シシィ嬢を王子に押し付けると。……確かに、第二王子ならば第三側妃の子供だから、新たに領地を下賜されるだろうな。国の内部の、比較的平穏な地を」

「妻は私の、我が領の意味を理解しているし、娘も理解してくれるだろう。…違うのか?」


馬鹿か、こいつは。

話せと言ったからって、だらだら纏まり無いまま喋りやがって。しかもトンチンカンなことほざきやがって。


領地の在る意味を知っていたとして、だからって父親に役立たずだなどと言われて、どう思うかくらい予想出来んのか、この馬鹿は。


「とにかく、一日休みを作ってじっくり話し合え。シシィ嬢の話を遮らず、最後まできちんと聞け。シシィ嬢の全ての考えを聞いた上で、お前の考えをどう思うか聞いてみろ」


エファン達親子には言葉が足りなさすぎるのだと口を酸っぱくして言い聞かせておいた。

これで、この馬鹿のカッチカチに凝り固まった国益主義も少しは柔らかくなるといいんだがなぁ。

トルクは一度会った後、二、三度会う機会を設けております。

話の流れ的に、次の日だとか後日だとかを入れると話が切れてしまうので、あえて表記なしとなっております。

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