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従妹は可愛いです。泣き顔はみたくありません。

カイン・ロンガヴィル、五歳になりました。


一人っ子だったためか、シシィは僕にとってもなついてくれます。

三才の頃のシシィは、大人達に目一杯可愛がられ、ちやほやされ、少し我が儘で甘えたな女の子でした。


何故かと言うと、公爵様は朝から深夜までお仕事があってお家にいません。

ドロシー伯母様も、公爵夫人としてのお付きあいやお茶会などの準備、挨拶状だとかの手紙の返信があり、シシィには滅多に構うことも、一緒にお茶を飲むこともありません。

なので、シシィの家の使用人達がシシィを可愛がり、甘やかすようになってしまっていました。


僕に対しても我が儘を言ったり癇癪を起こすことがありましたが、僕が一つ一つゆっくりと言い聞かせていたら、半年くらいで我が儘が無くなっていき、今ではちゃんと周囲が見える、良い子になりました。

因みに、一月に一回はどちらかの家に訪問するくらい、仲良しになりました。


「シシィ、いらっしゃい」

「こんにちわ、カイン。ここに来るとちゅう、マーラ姉さまとすれちがったのですけれど、今日はお会いできないの?」

「姉様は今日は教会へ行く日なので、夕方には帰ってくると思いますよ」


今回は、シシィは一週間ほどウチに滞在します。

伯母様がお知り合いの貴族の結婚式へ出席なさるらしく、それならば、と母様がお泊まりを提案したのです。

公爵様は、王都でのお仕事が何か大詰めだとかで、手が離せないそうです。


シシィと手を繋いで、応接間へ向かいます。

シシィの荷物は、侍女さん達がシシィの使用している客間へ運んでいきました。


「母様、シシィがみえました」

「こんにちわ、アン叔母様」

「こんにちはシシィちゃん、待っていましたわ」


ソファに座っていた母様は一度立ち上がり、淑女の礼を取りました。

どんなに気安い間柄でも、キチンとした礼儀が出来ていれば、どんな場合でもきっと役に立つから。と母様と伯母様が言っていました。

僕とシシィも、ちゃんと作法に則ってご挨拶しましたよ。執事長と侍女さんが証人です。


挨拶か終われば、三人でソファに横並びで座ります。

母様、シシィ、僕の順です。

母様付きの侍女さんが直ぐにジュースを出してくれたので、それを飲みながらこの一月にあった出来事をお互いにお喋りするのが、僕もシシィも大好きな時間です。


「…シシィ? どうかしたのですか? 」


母様がマーラ姉様を迎えに行くため席を外し、二人になってから暫くすると、シシィは黙ってしまいました。ちょっとそわそわ? 視線がウロウロしています。

顔色も、なんだか良くありません。

体調が悪くなってしまったのかと訊ねましたが、シシィは首を横に振ります。

根気よく待っていたら、シシィはポツリポツリと、お話を聞かせてくれました。


どうやら、公爵様がシシィに婚約をさせようとしているらしいとのこと。

貴族ですので、親が婚約者を決めるのは不思議ではありません。


「お父様は、わたしのことがおきらいなのよ。だって、そうじゃなきゃ、あんなこと言うはずないもの」

「シシィ…」


その時のことを思い出したのか、シシィはポロポロと泣き出してしまいました。

ハンカチを渡し、シシィの背中をそっと撫でますが、なんの言葉も出てきません。


シシィに直接言ったわけではなく、シシィが偶然聞いてしまったらしいのです。

夜、ふと目が覚めてしまった日に、何となくお手洗いに向かったそうです。

夜でしたので、静かに廊下を歩いていたら、階下に灯りが見えて、何となくそちらに向かったシシィは、僅かにドアの開いていた書斎に近寄って行きました。

中には公爵様と、公爵様付きの筆頭侍従さんが居て、難しい表情でお話をしていました。


「はっきりと聞いたの。だいに王子と同じとしなのだから、シシィをあてがうと言っていたわ。シシィにはこうしゃく家をつぐことなどできやしないって」

「侍従さんは、何も言わなかったのですか?」

「…お父様に、いけんしてくれていました。でも、りょうちでは何の役にも立たないのだから、と…」

「……」


国益を第一に考える公爵様だからこそ、だからでしょうか?

ご自身の娘に対して役立たずなどと…シシィが女だからでしょうか?

それにしたって、可笑しな考えです。娘への愛情が感じられません。


公爵様と長くお話しする機会はありません。精々ご挨拶させていただくくらいです。

その短い時間では、シシィへの思いは判りません。

……そういえば、ドロシー伯母様と公爵様が一緒に居られるのも、殆どお見掛けしません。

どうしてでしょうか?


「シシィ、そんなに泣いては、目がとけてしまいます」

「はい。……ありがとう、ケニー」


いつの間に部屋から出ていったのか。

ケニーが部屋に入ってきて、温かい蒸しタオルをシシィに手渡しました。

シシィがお礼を言って受け取ると、ケニーも微笑んで会釈し、部屋の隅にあるガラスポットから新しいジュースを注いでくれました。


使用人にもお礼を言えるシシィです、役立たずなんてことはあり得ません。

後で母様に相談しましょう。





「…そう、御義兄様が、そんなことを…」

「母様、こうしゃく様は、シシィがお嫌いなのですか?」


夕食後、シシィにお休みの挨拶をしてから、母様の自室を訪ねました。

母様は何か書類を読んでいたみたいですが、明日でも大丈夫なものだから、と僕の入室を許してくれました。

僕がシシィに聞いたことをお話しする時に、ケニーにもお話ししてもらいました。ケニーなら、キチンとお話を纏めてくれるからです。

僕の語彙だと、なかなか上手く纏められないのです。話が下手なのは前世から変わらないのです。


「う~ん…シシィちゃんの立場を考えれば、そろそろ婚約者を決めるのは、不思議ではないのですけれど…」

「こうしゃく家を継ぐために、お婿さんを貰うのではないのですか?」


確か、マーラ姉様がお勉強していた貴族制度の中で、そのような記述があった気がします。

母様に言えば、女の子しかいない、しかも高位の貴族ならばその方法を取るのが一般的だと言われました。


「シシィが第二王子様とけっこんしたら、王子様はこうしゃく家を継ぐのですか?」

「それはないと思いますわ。王子が独立…ええっと、大人になられる際には、王様が持っている領地を一部賜わって新たな公爵や侯爵の地位を戴くのです」

「…そういえば、こうしゃく様にはミドルネームがついていました…シシィにも」


そうです。

公爵様も、元は王族です。シシィにもその血が流れています。

なのに、今代の王の息子と婚姻させるというのは、他貴族の反感を買いますし、近すぎるのではないのでしょうか?

貴族制度とか、訳がわからないから創作しまくります。


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