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学園のお茶会です

お茶会当日。

朝から良く晴れていて雲ひとつありません。


クリス君はハンナさんとプリシラさんからの良く解らない主張 (ドレスをプレゼントする) を避けきりましたが、二人が朝昼夕の食事の時間にクリス君を捕まえようとするので、クリス君は走り回り、隠れ、食事を掻き込み……少し疲れた表情です。


流石に前日には諦めたのか、二人は貸し出し衣装を選びにいきました。

クリス君に少し笑顔が浮かびました。


僕とクリス君、ハンナさん達がいるのは、下位貴族から平民の為の会場です。

入り口から真っ直ぐ、正面に大きなガラス扉があり、庭園へと出る事が出来ます。

その庭園を挟むように、斜め向かいにも大きなガラス扉があって、そちらが高位貴族から中位貴族の会場となっているそうです。


開催の挨拶は、庭園の中央、此方と彼方の両側からきちんと見える場所に設えられた御立ち台 (?) に学園長自ら登ってお言葉をお話ししてくださいました。

軽く乾杯をして、早速賑やかな空気になります。


「ドレスの色がとてもカラフルですね」

「本当に。僕ら男子は殆ど同じなのに、凄い色とりどりですよね」


クリス君と二人、壁際に立ってぐるりと見回してみました。

タキシードやスーツは落ち着いたダーク系の色合いが多いのですが、ドレスは、良くこんなに色のバリエーションがあったなぁ。ってくらいカラフルです。

同じ色のドレスがあったら奇跡って思えそうなくらい、カラフル。


「クリス君! 」

「クリス! 」

「「ぁ」」


クリス君の名前が呼ばれ、其方を向いた僕らは、思わず声が揃ってしまいました。


ハンナさんとプリシラさんが、乾杯用のドリンク (勿論ノンアルコールです) を手にしたまま立っていました。


「ハンナさん、プリシラさん…」

「お久しぶりです、ハンナさん、プリシラさん」

「カイン君、お久しぶりです」

「久しぶり、カイン」


呼ばれた瞬間クリス君の表情が、スンッてなってしまいました。

手助け? 出来るかと声を掛けたのですが、二人共僕の方はチラッと見ただけで、すぐにクリス君に向き直ってしまいました。


僕は気にしてないから良いですが、他の貴族の方にそんなことをしたら罰せられますよ。気を付けてくださいね。

声に出して言えない雰囲気ですが。


「クリス、どう? 私のドレス。綺麗でしょ」

「ぁ、うん。水色のドレス、キレイだね」

「クリス君! 私のも、可愛いですかっ」

「うん。黄緑色のドレス、カワイイね」


プリシラさんのドレスは、水色のワンショルダータイプで、I ライン。レースも同色が使われていて余り目立たない気もするけれど、近くで見ると華やかさがあります。

ハンナさんのドレスは、黄緑色でA ライン。襟ぐりが波うつ感じになっていて、パフスリーブは二の腕の半分くらいまで。

裾にはレースとオーガンジーかな? 花があしらわれていて、全体的に円と曲線で可愛らしいです。


クリス君に誉められて嬉しそうな二人は、お互いを見合い、何故か二人共勝った。みたいな表情をしています。

……クリス君、二人の台詞を反芻しただけな気もしますが……。

ちら、とクリス君を見れば、何か、何処か遠くを見る目をしています。


「クリス君、あっちに美味しそうなケーキがあるの。一緒に行こ? 」

「クリス、あそこにターキーがあったんだ。食べよう! 」


二人は、クリス君の左右の腕を掴んでグイグイと連れていきました。


僕は無視ですか。

別に良いのですが、あの態度は、最初から最後まで、貴族相手には最悪以外の何物でもないですね。

クリス君がこの先、二人のうちどちらかを選んでも、苦労しかしないのでしょう。


「頑張ってください、クリス君」


何となく、祈ってしまいました。




気を取り直しまして。


周りを観察していると、徐々にではありますが、庭園へ向かわれる方々もいます。

何せ、下位貴族から平民までとは言え三学年殆ど全ての生徒が集まっていますから、会場には圧迫感があったのでしょう。


「マーラ姉様は、庭園にいますでしょうか」


姉様は、グラビス辺境伯子息の婚約者なので、バーナード義兄様のエスコートで彼方の会場にいるのです。


バーナード義兄様には、愛称で呼んでもらいたいと言われましたが、ちょっと恥ずかしいので、慣れるまでは。と義兄様にいさまで許してもらっています。

バーナード義兄様、顔が格好良いのですよ。

綺麗とかキラキラとかではなく、格好良いのです。漢! って感じに顔が濃いのです。

僕もあんな風に格好良い顔が良かったなぁ。


「……っと、あれはヨーリンですかね? 」


バーナード義兄様を羨ましく考えていたら、チラッとヨーリンが見えました。

姉様への挨拶は後にしましょう。

見失わないうちに声を掛けなければ、二度と探し出せない気もします。


「お久しぶりです、

ヨーリン」

「お、カイン。久しぶりだな。元気にしていたか? 」


給仕の方に新しい飲み物を貰っているヨーリンに声を掛けると、僕の分も飲み物を取り、渡してくれるヨーリン。

受け取って軽くグラスを掲げれば、ヨーリンも同じように少しだけグラスを掲げました。

グラス同士は触れ合わせませんよ。シャンパングラスは薄くて割れやすいので、カチンとやるのは危険です。


「そう言えば、父に聞いたが、ルーベンス様とマーラ様の婚約が決まったらしいな」

「えぇ、姉様が張り切って動かれましたから、お蔭様で、兄様の結婚も目に見えてきました」

「はは。あの人は理想が高くないが、高くないが故に女性からは声を掛けづらい人だからなぁ」


ヨーリンは深々と頷きますが、僕はそんな話は初めて知りました。

兄様って、良い物件 () だったのですね。


「ヨーリン、と……ぁ、失礼しました」

「ザッハ」

「いえ、大丈夫ですよ。お久しぶりです、ザッハ君」


ヨーリンの背後から声が掛けられ、少しずれたヨーリンから見えたザッハ君。

きっと僕の姿が見えなかったのでしょう。

ヨーリン、縦もですが、横にも体格が良くなってきましたから。


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