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シシィ・フォン・サルグリッドと、対面しました

シシィ・フォン・サルグリッドの誕生日の一日前、僕と母様は馬車に乗ってサルグリッド本宅へと向かいます。


サルグリッド領とロンガヴィル領は隣接しています。

サルグリッド領は三方を山脈に囲まれていて、唯一平地になっている方向が、ロンガヴィル領と繋がる街道のある方向です。

山脈の麓には傾斜を活かして果樹園や牧草地、水田や麦畑が広がっているそうです。

領都と呼ばれる、領主の邸宅のある街が主な領民の暮らす都市になっていて、そこがロンガヴィル領と半日ほどで行き来が出来るくらい近いのです。

サルグリッド公爵が領地を下賜される時に、隣国との国境となる山脈を含んだ場所を、国防と開拓を考えて戴いたそうです。

サルグリッド公爵は王家の血筋だからこそ、国益を第一に考える方なのだそうです。


因みに、ロンガヴィル領は、子爵領なので領都が全てです。それ以外は森になっています。領地は公爵領の四分の一にもあたりません。

子爵領の特産は薬草だそうです。森に魔素が多いらしく、薬効の高い薬が出来上がるのだそうです。なぜ魔素が多いかは、まだ研究途中なので解っていません。


「とうさまは、こられないのですか?」

「旦那様はお仕事を終わらせてから来られるのですよ。パーティーが始まる時に間に合えば良いのですけれど…」

「まにあうとよいですね」


母様と向かい合った馬車の中、他愛ないお話をして暇を潰します。

馬車の中は割りと広く、ラグが引かれクッションがたくさんあります。それにゆっくりと進んでいくのでお尻が痛くならないです。車‐馬車酔いもしなさそうで安心です。





夜になる少し前には、サルグリッド公爵領に着いたみたいです。

僕は初めての馬車、初めての遠出に疲れてしまったのか、おやつを食べた後に寝てしまったみたいで、起きたら公爵家の客室のベッドでした。

夕食は、あまりにぐっすりだったので起こさなかったのだと、母様ににっこり笑われました。


「かあさま。ごはんをたべたら、こうしゃくさまに、ごあいさつしますか?」

「お義兄様はお仕事があるそうなので、お姉様、貴方の伯母様にご挨拶いたしましょう。シシィ様はパーティーの身支度でお暇はないと思いますから、パーティーが始まったらご挨拶いたしましょうね」


どうやら結構大きめの規模のパーティーのようです。

誕生日パーティーって、僕、前世のお誕生会的なの想像していました。

公爵家の一人娘にもなると、全く見も知らない大人の人がたくさん来るんですね。

……貴族って面倒くさいです。


シシィ・フォン・サルグリッドは三才。

なのでパーティーは昼食時に、立食形式でするそうです。

招待客は大人が多いですが、当然のように、子息子女かいる方達は子供連れでの出席になります。

相手は公爵家の一人娘。女の子ならばお友達に、男の子ならば婚約者に、と考えているんだそうです。

貴族って面倒くさいです、本当に。


母様の身支度を横目にちょっとのんびりして、僕も身支度をします。

まぁ、僕は男なのでメイクやヘアメイクは がないので五分で支度が終りました。

どの世界でも女性は大変ですね、こういう時は、男で良かったって思います。


「久しぶりね、アン。元気してた?」

「お姉様、お久し振りですわ!」


母様とパーティーが行われるホールへ入ると、すぐに声を掛けられました。

サルグリッド公爵夫人の、ドロシー・サルグリッド。僕の伯母様です。

母様と似た顔立ちだけれど、伯母様の方はつり目気味で、緩くウェーブのかかった金髪です。

母様はたれ目でストレートの金髪なので、並ぶととても対照的です。


「そちらの可愛い男の子が、アンの息子ね?」

「えぇ。カイン、ご挨拶して」

「はじめまして、ロンガヴィルけ、じなんの、カイン・ロンガヴィル、さんさいです」

「まぁ、ご丁寧にありがとう。ドロシー・サルグリッドよ。よろしくね」


ドロシー伯母様‐呼び方の許可はもらいました‐と挨拶をして、少しお話をしていたら、パッと会場の魔石照明が消えて暗くなりました。

そしてスポットライトのように、一つだけ魔石照明が付いてホールの入り口が照らされます。


弦楽器が奏でるゆっくりとした曲に合わせてゆっくりと開かれた両開きの扉。

その扉の中央に立っている、一人の女の子。

あれが、シシィ・フォン・サルグリッドのようです。

伯母様に良く似たつり目の大きな瞳。ゆるくウェーブのかかった髪は、公爵に似たのか、紫がかった銀…光の加減で金にも見える、不思議な髪色です。

こんな感想は陳腐かもしれませんが、どことなく、猫のようです。

あれです、あれ。ロシアンブルー? それのキンキラバージョンです。


「みなさま、きょうは、ようこそおこしくださいました。ししぃはさんさいに、なりました。きょうは、わたしのたんじょうかいを、たのしんでいってください」


拙いながらもはっきりと話し、ゆっくりとお辞儀をして挨拶をしたシシィ・フォン・サルグリッド。

会場からは、おめでとうございます。との声と、拍手が送られています。

公爵家って、大変ですね。あをんな小さな子が大人ばかりの会場で一人で挨拶とかしなくちゃならないのです。

僕、子爵家でよかったです。


「シシィ、こちらにいらっしゃい」

「はい、おかぁさま」

「シシィ、こちらは私の妹のアンシィ・ロンガヴィル。そしてアンシィの息子のカイン・ロンガヴィル。貴女の従兄よ」

「はじめまして、カイン・ロンガヴィルです」

「はじめまして、アンシィ・ロンガヴィル、貴女の叔母になるわ」

「はじめまして、ししぃです。よろしくおねがいします」


和やかに挨拶をしあうと、母様とドロシー伯母様は挨拶回りがあるから、と僕らを残して行ってしまいました。

初対面の幼児二人を誰にも預けずに放置って、どうなんですか、母様…。

まぁ、いたる所に侍女や侍従、警備員? もいますけど。

さて、どうしましょうか?

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