友達からの、アドバイスです。
アドバイス (強制) です。
「お! カイン、久し振りー! 」
「ヨーリン、お久し振りです」
食堂へ向かう廊下で、後ろから声を掛けられました。
振り返れば、ヨーリンが手を上げていました。
本当に久し振りに顔を会わせる気がします。
「昨日まで実習だったからなぁ。校舎にいるのが、変な気分だ」
騎士科は、入学してから一週間しか座学をしていないそうです。
座学で基礎的な野営についてを学び、即実践。平原や森を移動しながら、食べられる植物、毒のある植物を見分け、水の確保の仕方や夜の過ごし方を身につけるのだそうです。
そして、座学で、今度は騎士のマナーや口調、仕草何かを学び、再び野営をしに平原や森へ。
カリキュラムが結構過密です。
「それは……ヨーリンは楽しかったみたいですね」
大変でしたね。と言おうとしましたが、話すヨーリンは凄く笑顔です。
きっと楽しかったんでしょう。
ちら、とヨーリンと一緒にいた方を見れば、苦笑しながら頷かれました。
僕の予想は当たっているらしいです。
せっかくですので、ヨーリンと、彼のご友人のザッハ君と一緒に食堂へ向かいます。
「ザッハは平民だっていっつも逃げるんだぜ? 騎士になったらそんなこと言ってられないのにさぁ」
「仕方ないっすよ~。話し方変えたら、近所のオバチャンらに熱測られて笑われるっす~」
「ふふ。確かに、染み着いているものを変えるのは難しいですからね」
「だが必要だろう? 普段まで口調を変えろとは言ってないんだから。お前が困るんだぞ」
ザッハ君は、そうっすけど~。と気のない返事をしています。
騎士科の学生は、今は話し方やマナーを勉強をしているのですが、ヨーリンのような貴族子息はともかく、平民の出である学生達は結構大変みたいです。
大変というか、恥ずかしさがでてくるのでしょう。
「騎士の方は、話し方が多種あるのでしょう?」
「そう。平民に対してと、下位貴族に対して、上位貴族と、王族、他国の貴族、他国の王族……」
「頭爆発しちゃうっすよ……」
指折り数えるヨーリンの隣で、ザッハ君はゲンナリした表情です。
疲れてますね、僕のパンを一つあげましょう。多くて食べきれなさそうなので。
三人で話しながら昼食を食べていると、食堂の入り口辺りがざわざわと煩くなってきました。
何だろう? と其方へ視線を向ければ、女の子達が集まっています。
「なんだぁ?」
「何でしょうね?」
「……ぁっあれ、ケビン・マクヴェルっすよ!」
「は? あの辺境伯の魔術バカ息子?」
人の間から見えたらしいザッハ君が言うと、ヨーリンが首を傾げて椅子から少し腰を浮かせました。
頭をゆらゆらさせ、見えたのでしょう、再び椅子に座り直しました。
「はぁ~。マジで魔術バカだったわ。図書塔以外にも現れるんだな、アイツ……」
「ヨーリン、失礼ですよ」
「あぁ、まぁ……。でも、実際あのマクヴェル辺境伯子息が人の多い場所にいるのは、珍しいだろ?」
「まぁ、そうなんですけど……」
否定は出来ませんね。
何せ、ケビン・マクヴェル様は、授業以外は殆どの時間、図書塔で魔術書や魔術論文を読んでいるらしいので、校内といえど、どなたもお姿を見られないそうです。
女の子達は、滅多に姿を見せない方を見付けたのと、美形なケビン・マクヴェル様のお姿の、両方に驚き騒いでしまったようです。
背が高いからか、女子生徒のあいだから、ちらちらとケビン・マクヴェル様の茶金色の髪の毛が見えかくれしています。
百七十は優にありますよね、羨ましいです。
僕はあまり背が高くはないのです。
あ、でも女性よりは高いです。そこはキチンと主張しておきたいですね。
さて、お話ししながらも食べ終えた僕達は、食堂から出ようと思います。
どこから話がいったのか、女子生徒さん達が増えてきましたから。
乙女ゲームの攻略対象だけあって、ケビン・マクヴェル様、美形ですからねぇ。
髪型とかは、割りと無頓着らしいですが、逆に無造作なヘアスタイルが云々かんぬん……? 僕にはちょっと解らないです。
「カインは、どういう授業を取るんだ?」
「僕は、薬学と聖属性魔法を専攻しようと考えています。あとは錬金術の基礎か、栄養学ですね」
「はぁ~、つうことは、教会か?」
「教会所属でも良いですが、最近はギルドも考えています。三年…いえ、二年生までには決めますよ」
「そうか」
ヨーリンとお話ししながら、適当な場所で別れました。
騎士科は、午後は毎日訓練所なのだそうです。ザッハ君の張り切り方が……いえ、何でもないです。
きっと座学に向かないタイプなのでしょう。
そういえば、ヨーリンに聞いたのですが、騎士科の皆さんも魔力を使って常に身体強化をしているそうです。
無意識下においても、最適な強化を、最小の力で、最大に発揮できなければいけないのだそうです。
ザッハ君と二人がかりで説明していただいたのですが、ちょっと言ってる事が理解出来ませんでした。
なので、後日にはなりますが、ヨーリンにシシィとリリーナ様に直接説明していただきます。
お願いではありません。確定事項です。
ヨーリンが物理的に後退しましたが、気のせいですよね、きっと。
「…カイン、お前そんな強引だったっけ? …」
失礼です。
僕はただ、リリーナ様が何時までも成果が出ずに、段々と食欲がなくなってきたらしいと、小耳に挟んでしまったので、少しでもお力添えを。と考えただけです。
シシィが悲しそうでしたしね。




