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薬師さんのお手伝いをします

シシィがリリーナ様とお話しされている間、僕は孤児院の畑を少しだけ手伝い、薬師様の元へ訪れました。


「おはようございます、タチアナさん、テクさん」

「「おはようございます、カイン様」」


タチアナさんとテクさんは王都でも指折りの薬師の方達です。以前シスターのお一人が嬉しそうに語られていました。

お二人は平民の出だから、との理由で様付けを拒否されるので、僕もシシィもお二人を『さん』付けにさせていただいてます。


タチアナさんは深紅の長髪をお団子にされて頭頂部で纏められた、サバサバされた方です。姉御肌って言われる方ですね、女性ですが、格好良いです。

テクさんは長身で細身ですが確り筋肉の付いた、所謂細マッチョです。

深緑色の髪を襟足だけ伸ばされています。眼鏡が知的で格好良いです。


「あれ、今日はお一人ですか?」

「シシィも一緒に来たのですが、クラスメイトの方が教会に見えられていたので、そちらに」

「そうですか。まぁでは、カイン様、始めましょうか」

「よろしくお願いします」


ぺこりと三人でお互いお辞儀をし合い、早速お手伝いを始めます。


まず、テクさんのお手伝いです。

部屋の隅に置かれている麻の大きな袋から薬草を取り出して、横に置かれていた木桶に二つかみほど入れたら、外へ持っていきます。

孤児院の隅には井戸があり、そこで水を汲み上げて使います。

木桶にたっぷりの水を入れてざぶざぶと薬草を洗っていきます。この時に薬草を傷つけてしまいますと、薬効のある草の汁が流れ出てしまうので、薬草同士があまり擦れないように、指などで潰さないようにしなければなりません。

昔、領地の孤児院では大分薬草を無駄にしてしまった記憶があります。薬師さんは怒るとコワイのです。


「……よし、大丈夫そうですね…」


薬草についた土や埃を綺麗に洗えたら、水を切ってテクさんの元へ運んで行きます。

そして、また木桶に薬草を二つかみ取り出して、再び井戸へ向かいます。


僕の出来るお手伝いは、これくらいです。

薬草を磨り潰したりなどはまだまだ出来ません。失敗してしまうと、薬草を無駄にするだけでなく、時として薬が毒となってしまう危険があるのです。

マーラ姉様に何度も言い聞かせられましたので、僕もシシィも興味はありますが、決して気軽には頼めません。


「テクさん、薬草はこれで全部です」

「ありがとうございました。では、次はタチアナの手伝いをお願いします」

「はい」


タチアナさんは、保管してある薬の期限や品質をチェックしています。

声を掛けて、僕でも出来ることを指示して貰います。


「そうですね…では、テーブルへ避けた物を箱に……確か保管室に空の木箱があるはずなので、それに入れていっていただいていいですか?」

「木箱ですね、分かりました取りに行ってきます」

「あ、一応誰かに声を掛けておいてください」

「はい、わかりました」


保管室とは、孤児院の備品が置いてある部屋のことです。

其所へは教会の壁沿いを回り込むように向かいますので、途中で出会ったシスターに、保管室へ行くことと木箱を使用することを伝えて、了承を得ることが出来ました。備品を勝手に使用するのは、あまり良くないですからね。


木箱を持って行き、タチアナさんの指示に沿って期限の切れそうな薬を箱に詰めていきます。

これらは教会の方で、怪我の治療に来た方や、お祈りに来た方達に無償でお配りすることになっています。

貰う方達も、期限が切れそうなのは承知されていますし、期限が切れて廃棄、というのは勿体ないです。


「……あ~、これはダメね」

「どうかされたのですか?」

「丁度良いですね。カイン様、見てください」

「これは……虫、ですか?」


タチアナさんに渋い表情で見せていただいたのは、壺で保管されていた塗り薬でした。

蓋をしていた布に小さな穴が空いており、中を見れば、蟻のような小さな虫が数匹居ました。


「これはあかぎれに使われる塗り薬なのですが、材料の一つに花の蜜が使われているんです」

「なるほど。だから虫が入ってしまったのですね」

「えぇ。傷口に直接つける物なので、全て口にしても良い材料ですし、虫にとっても害がないんです」


よく見てみると、虫はまだ生きていますし、薬を食べているようにも見えます。

材料は花の蜜に薬草、野菜を煮出したとろみのある汁などなので、虫にとってはお食事になってしまうみたいです。

さすがにこれはどうしようもないので、廃棄となります。

勿体ないですが、虫がいる薬は誰も使いたくありませんから。


「ではカイン様、こちらの薬は教会へ運びましょう」

「はい」


タチアナさんと、木箱の両端を一緒に持って教会の方まで向かいます。

テクさんは薬作りを黙々と行っていますので、声を掛けずに行きます。集中が切れてしまいますと大変ですからね。


教会へ入っていき、神父様にお話しして薬を隅の机へ置きます。

薬には何の薬か、ラベルが付いていますので、神父様やシスターさん達でも間違えることがありません。薬を配るのは皆さんにお任せするそうです。


「カイン、タチアナさん」

「シシィ」

「シシィ様。ご友人はもう良いのですか?」

「えぇ、お話は出来ましたわ。お手伝いが出来ず申し訳ありませんでしたわ、タチアナさん」

「いいえシシィ様。お顔を見せていただけるだけで充分です」


リリーナ様は先に帰られたようで、シシィとカルロさんが待っていました。

気付けば結構な時間が経っています。そろそろ帰らなければいけません。

タチアナさんも時間に気付いたようで、僕達はこのままお暇させていただくことになりました。


まだ片付けをお手伝いしていませんし、テクさんにもご挨拶していないのですが、今回はタチアナさんのお言葉に甘えさせていただきます。

……お腹が鳴ってしまって、ちょっと恥ずかしかったのです。

薬の材料とか、考えるのがめんど……げふん。

ツラいです。

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