学園のアレコレです
オリエンテーリングは、三日間掛けて行われました。
初日は学園内の案内でした。
クラスごとに、担任の先生に連れられて、各学年の校舎や、実習室、教員室等を見て回りました。
実習室は、『室』と付いていますが、大分違いました。
魔法訓練室は、ほぼ体育館です。床や壁、天井と、隙間なく魔法障壁の魔道具が付けられていて、使用する際は必ず全てをオンにしないと、規律違反で罰則があるそうです。
武器訓練室は、ドームでした。『前世』の、首都にあるあのドームです。
流石に観客席はそこまで多くはなかったですが。
下は床ではなく地面でした。
的の様なものがあったり、何故か岩場のようになっていたり、沼地の様になっていたりする地面がありました。
天井には天候用の魔道具が設置してあり、雨や霧、竜巻などを発生させられるのだそうです。
魔道具作成室という場所もありました。
此方は魔道具を作る実験室なのだそうです。
魔道具作成は集中力が大事なので、完全防音、外部魔力完全遮断、魔法障壁、物理障壁など、数多くの魔道具が常時発動されているのだそうです。
他にも、図書塔は名前通りに様々な本が置いてある三階吹き抜けの塔でしたし、調薬室は教室三つ分はある温室プラス煉瓦造りの小さな家でしたし、購買室は物語に出てくる魔女の店のようなちょっと暗めの部屋でした。
まだまだありますが、それはまた追々探索してみたいと思います。
二日目は一週間の授業計画、要は時間割についてと、各授業の目的、役割、選択の仕方についてでした。
Cクラスは他のクラスとは違い、学園を卒業した後のことを、入学した今考えなくてはならないので、サリー先生はとても詳しく、真剣に説明してくださいました。
三日目は授業外の活動についての説明でした。
所謂委員会や生徒会、クラブ活動のことです。
必ず所属しなくてはならないものでは無いとのことですが、Cクラスの場合は、将来の伝になる人物や団体と知り合えたり、身に付けると良い技術や知識を習えるような活動もあるらしいので、こちらもサリー先生が詳しく丁寧に説明をしてくださいました。
「クリス君は、何か活動に所属しますか?」
「僕ですか? う~ん…特に所属したいと思えた所は無かったですね。カイン君は?」
「僕も特に。それに、活動は休日にもあるのですよね? 僕は教会へ奉仕活動をしに通う予定ですから、そちら優先です」
わざわざ父様に紹介状を書いて貰いましたし、神父様にも薬師様にも、王都にある教会の方々の魔法技術や調薬技術は飛び抜けて凄いと教えていただきましたので、そちらも勉強をさせていただきたいのです。
クリス君に言うと、感心されてしまいました。
ですが、貴族というのは民のお陰で生活していけるのです。だから権力も知識も技術も、民のために惜しみ無く与えなければならない。と言うのが、ロンガヴィル家の家訓だと、ルーベンス兄様に教えていただきました。
それが普通だと思っているのですが?
「……カイン君のお家は、とても素晴らしいんですね」
「クリス君? 何か言いました?」
何かを呟かれた気がして聞き返したのですが、何でもないと首を振られてしまいました。
オリエンテーリングが終われば、通常授業の始まりです。
Cクラスでは平民の方も在籍されているため、まず座学では基本的な事を学びます。とはいっても、それも一週間ほどで終えてしまい、次の週からは専門分野事の基本を学びます。
体学‐『前世』で言う、体育です‐では体術の基礎運動‐ストレッチのことですね‐や走り方、剣の基本動作、魔力操作等を学びます。戦うためではなく、主に生きるため、逃げるための技術でした。
「カイン」
「シシィ。何だか久し振りですね」
クリス君と、新しくお友達になれたハンナさんと食堂で夕食を摂っていたら、シシィが僕達のテーブルに来ました。
シシィも今から夕食のようです。
「シシィ、こちら僕の友達のクリス君とハンナさんです。クリス君、ハンナさん、こちら僕の従妹のシシィです、夕食を一緒でも良いでしょうか?」
「「ハイッ勿論っ!」」
おや、お二人とも声が揃いました。
元気ですね。
「ふふ。私はシシィ・フォン・サルグリッドと申します。お言葉に甘えさせていただきますわ」
「ぼっ僕はクリスです!」
「私! ハンナっですっ!」
シシィが挨拶をしてから僕の隣へ座ります。
学園には、一人につき二人まで侍従や侍女を連れてくることが出来ます。
シシィの後ろにも侍女さんが控えていて、シシィの食事を持っていました。
僕は誰も連れてきてません。自分のことは自分で出来ますし、子爵位なので連れていなくとも何か言われたりすることもありませんしね。
シシィの場合、公爵位なので使用人を連れていなければいけません。
でないと公爵位よりも下位の方々が使用人を連れられなくなったりもしますし、学園とはいえ、警護も必要になります。
シシィも身の回りの事くらいは自分で出来ますが、周囲の方々のために侍女のサブリナさんと侍従のカルロさんを連れています。
ちなみに部屋は寮の各部屋の隣にそれぞれあるそうです。
僕は気付きませんでしたが、従者部屋へ続くドアが部屋にあるそうです。
「ふふふ、そんなに畏まらないでくださいな」
「シシィそれは無理があるのではないですか?」
公爵令嬢ですし、平民にとってはまず声も、姿も見ることが無いような存在ですよ?
僕が言えば、シシィにちょっと呆れた目を向けられてしまいました。
「カインも貴族なのですけどね…」
「何か言いました?」
「いいえ。さぁ、手を止めさせてしまったわね。食べましょう」
基本的には、食事中のお喋りはマナーが悪いとされていますが、会食等ではないので、過度でなければ大丈夫です。
暫くはギクシャクとしていた二人ですが、僕が話題を振ったり、シシィが終始笑顔でいたので、徐々に緊張がほどけてきたようです。
ハンナさんがシシィにダンスやパーティーについて質問をしています。
Cクラスの女子生徒の中には、ダンスや侍女作法を学ぶ時間もあるようです。
「では、ダンスも楽曲によって全て違うのですか?」
「そうですわね。基本としては二曲ほどありますが、場の雰囲気やパーティーの目的によってなど、嫌と言うほどありますわ」
ハンナさんとシシィが、大分打ち解けたみたいです。
僕達男には解らない話になっていき、どこそこのカフェが美味しいとか、あそこの雑貨屋は安いけど可愛い小物があるだとか、最後には二人でお出掛けするお話になっていました。
仲良くなるのは構いませんが、二人だけではお出掛け出来ませんからね、シシィ? きちんとカルロさんとサブリナさんにも日程の確認をしてください。
「お嬢様にさっそくご友人が出来ましたわ」
「女性のハンナ様なら、旦那様への報告は楽ですね」
……サブリナさん、カルロさん、そんなに感動しなくても……
後から聞いたのですが、Sクラスではシシィに気軽に話し掛ける方がおらず、お友達がまだ居なかったようです。




