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ついにきました、学園です

お久しぶりです。カイン・ロンガヴィル、十ニ歳です。


一気に年が過ぎましたが、特に語ることは……

教会の薬師さんに弟子入りして雑用をしてみたり、冒険者さん達に森へ連れていっていただいて狩りや採取についてを実地で教えていただいたり、家庭教師さんに魔法の基礎から地理、歴史、果ては野菜の育て方まで教えていただいたりしたくらいです。


シシィも時々うちに来てくれるので、二人でよく孤児院にも奉仕活動でお邪魔させていただきました。

シシィと一緒に薬師さんのお手伝いもたくさんしました。主に器具の洗浄や片付けでしたけどね。


「もうすぐカインも学園へ行ってしまうのね。寂しくなるわ」

「僕も、母様や父様と離れるのは寂しいです。でも、もっと色々なことを勉強したいので、学園へ行くのは楽しみです」


あと二ヶ月ほどでしょうか?

先月の終わりにお庭の一角に移されたピンクスノーの花が、ちらほらと咲き始めています。

あの花が全て開いて、ピンクの絨毯のような花畑になると、ちょうど学園への入学になるのだと、マーラ姉様が言っていました。


僕が学園へ入るということは、ルーベンス兄様が領地へ戻って来られるということです。三歳違いですから。

ルーベンス兄様は父様から領地を引き継ぐため、学園とはまた違うお勉強をしなければならないそうです。

僕、次男で良かったな。とか思ってしまいました。


卒業生達は学園の一番広いホールで、卒業パーティーをするのだそうで、それが所謂卒業式になるそうです。

婚約者が見えられる方はその場で結婚を宣言したり、婚約を発表したりする方もいるのだそうです。

なので、卒業パーティーには親も出席出来るのだとか。父様は仕事の都合上出席出来ないそうで、大変落ち込んでいました。

マーラ姉様は在校生なのでパーティーのお手伝いをするそうです。

パーティーの一週間後から新一年生が入寮できるそうなので、僕はルーベンス兄様の卒業パーティーに合わせて王都へ行くことになりました。






「わぁ! 大きな門ですね。木々もとても大きくて瑞々しいです」

「カイン、あまり身を乗り出すと危ないわ」

「でも叔母様、カインの言う通り、植物がとても元気で綺麗ですわ」


早くも入寮の日となりました。

僕、母様、シシィの三人で学園へ訪れました。

馬車用の門はとても大きくて立派です。


シシィがなぜ一緒なのか、ですか?

それはですね、ドロシー伯母様と公爵様は公爵様の親類様の結婚披露宴に招待されているらしく、今日はついてこられないのです。


『何でこの日を選んだんだあの野郎』と、公爵様は眉間に深く皺を刻んでお怒りでした。

しかし、公爵様の親類ということは、王族縁の方です。出席はほぼ強制ですので、公爵様は伯母様に引き摺られるように出掛けて行きました。


『カイン! 私の可憐で凛々しく優しいシシィが誰かに懸想されたら、すぐに調べて報告を! どこの馬の骨とも判らん奴に娘はやらんっ!』


あぁ、公爵様の声が聴こえる気がしますね。

伯母様に馬車へ押し込まれる瞬間まで叫んでいましたから。

シシィを溺愛するのは、まぁ、家族仲が良くてよいことですが、馬の骨って……

学園の八割近くは貴族位を持つ方々なのですが。

しっかり報告はしますけどね。僕だって、並大抵の男をシシィの相手とは認めませんよ。


学園へ入る門の前では、馬車一台ずつに検査? があります。

そのため待ち時間があるのですが、貴族位を持つ方達しかいないため簡単なチェックだけのようですね、さくさく進んでいきます。

僕達も検査はすぐに済みました。


警備の方? が持っていた水晶のような物を馬車に向けて何か呪文を紡ぐと、水晶のような物が青く光りました。

母様に聞いたら、あれは魔道具なのだそうです。

危険な物‐毒薬や禁忌とされる魅了の魔道具など‐が持ち込まれないか調べる物なのだそうです。

魔法とは凄いですね。ワクワクします。


寮はまるで『前世』の校舎のような建物でした。

玄関ホールを真ん中に、左右にVの字を描くように男女各々の寮部屋があり、ホールをまっすぐ行くと‐Vの字の下の中央が半円になって膨らんでる感じですか? ‐食堂があります。


玄関を入ってすぐに寮の管理人さん? の部屋があり、そこで名前を言って入寮手続きです。

一年生は一階の二~三人部屋らしいです。これは貴族位は関係なく決められ、伯爵位でも男爵位でも優劣なしだそうです。

僕は二人部屋でした。

シシィと別れて部屋へ向かいます。荷物は僕達が寮の説明を受けているうちに職員さんらしき方達が運んでくれたみたいです。

母様はシシィの荷解きの手伝いをするそうです。


「ではカイン、後程食堂でね」

「はい、母様」

「また後でねカイン」


今日だけは親や使用人も寮に出入りできるのだそうで、最後のティータイムくらいは一緒に過ごそうと約束をしました。

さぁ、さくさく荷物を片付けましょう。


教えられた部屋の番号を確認しながら歩きます。どうやら一番端から二つ目の部屋のようです。玄関からちょっと遠いですが、その分静かそうです。

部屋へ入ると、左右対称に机、ベッド、クローゼットがあります。

入ってすぐの左側に扉。シャワールームとトイレが各部屋にあると言っていたので、多分それですね。

窓も大きいです。外側にバルコニー? ベランダ? があります。小さめのテーブルと椅子が置いてありますね、使っても良いのでしょう。


「……ぁ、」

「あ、同室の方ですか?」

「は、はいっ! クリスです! えっと…へ、平民です…すみません…」

「…? ロンガヴィル子爵家次男、カイン・ロンガヴィルです。よろしくお願いします」


何故か名乗りながら謝られてしまいました。どうかしたのでしょうか?

僕も名乗ります。一応、貴族位も言った方が良さそうなので名乗りましたが、何故かクリスさんはまた謝ります。


「? クリスさん、とりあえず荷物の整理をしましょう。明後日には入学式が始まりますし、あまり時間がないですよ」

「ぇ…あ、あの……ろ、ロンガヴィル様、僕、平民です…」

「? はい、お聞きしました。あ、あと、僕のことはカインで良いですよ。同級生になるのですし、同室です。仲良くしましょう?」

「ぁ、は、はいっ!よろしくお願いします、カイン君!」


クリスさんは自身が平民ということを気にしていたみたいです。

学園に入れたということは、それだけ優秀なのですから、そんなにビクビクしなくても良いと思うのですがねぇ。

仲良くしたいと伝えたら、やっと顔を上げて笑顔を見せてくれました。

僕もクリス君と呼ばせてもらうことになりました。

さっそくお友達ができました。

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