攻略対象者と、領地の孤児院訪問です
ジルベルト王子は、広い会場をくまなく回って、一人一人に声を掛けて行きました。
勿論、僕達の所へも見えられましたが、形式的な挨拶のみのようです。
笑顔で一言二言会話をされて、騒ぎが大きくならないようにか、会場を出ていかれました。
ジルベルト王子の斜め後ろには、宰相様の息子のサイナス・カンツァー様と、ケビン・マクヴェル様が付き従っていました。
三名とも、ゲームで言うところの『攻略対象者』です。
ええっと…確か、ジルベルト王子が王道攻略者ですね。
一番最初に出会う、一番易しいルートだったはずです。
ジルベルト王子は、金髪に碧眼。絵に描いたようなザ・王子様です。
今はまだ子供らしくふっくらしていますが、ゲームのスタートする頃になると、凛々しい感じになります。
そして、サイナス・カンツァー様は、カンツァー伯爵家次男です。お父君は宰相様です。
サイナス様は、藍色と言うのですかね? 一見すると黒髪なのですが、良く見ると暗い青色の髪に、金茶の瞳です。
ゲームのスタートする頃には、確か髪を伸ばして、ひとつ縛りにしていた気がします。
もう一人、ケビン・マクヴェル様は、マクヴェル辺境伯家の三男でしたよね、確か。お父君は、王宮筆頭魔術師様です。
ケビン様は、茶金色の髪に、金の瞳です。
お父君譲りの魔法適正があり、扱える魔力量も多いと、確かキャラ説明に書いてあったような?
それとあと一人か二人攻略対象者がいたはずです、が……。
姉達の助言を聞きながらゲームはやっていましたが、前世の事ですし、プレイしたのは、多分生まれ変わる何年も前です。
カインとして七年、この世界の事をお勉強しているので、あまり細かい設定や人物像を覚えていないのです。
とりあえず今判るのは、シシィがジルベルト王子に惹かれてしまったと言うことくらいでしょうか。
デビュタントが終わった後は、領地へ帰ります。
王都のマーケットを見て回ってお土産も買いましたし、ルーベンス兄様にもしっかり甘えてきましたので、満足です。
兄様はこのまま王都の学校へ戻られるそうなので、後、一年は気軽に会えません。なので目一杯甘えておきました。
マーラ姉様と母様、僕の三人で帰路につきます。
父様はルーベンス兄様を送って、仕事を少し片付けてから帰るそうで、別になりました。
「マーラ姉様、ルーベンス兄様に何をいただいたのですか?」
「兄様が使わなくなった、授業をしたためたノートですわ。これを使って、お勉強をするのよ」
姉様はそう笑って、兄様に貰った荷物を包んだ布をほどいて見せてくれました。
中には羊皮紙が束になったノート? が数冊あります。
どうやら、兄様はそれぞれの分野別にノートをとっていたようです。
表紙はありませんが、一番表の左上に、魔法学、作法学、歴史学、と大きめの文字が書かれています。
パラパラと捲って見せていただきましたが、兄様の字は丁寧で読みやすそうです。
姉様が使い終わったら、僕にいただけるらしいです。今から楽しみですね。
領地へ戻るとすぐに、マーラ姉様と母様が教会へ行くと言うので、僕も連れていってもらいます。
検査が終わりましたし、これからはある程度自由にお外へ出ることが出来ます。
「カイン、私やマーラから離れないようにね」
「はい」
教会の裏手に併設されている孤児院には、現在十二人の子供が居るそうです。
孤児と一言で言っても、親御さんが冒険者なために一時預かりをしている子供や、家族に感染する可能性のある病気の方がいるために隔離保護されている子供も居るそうです。
勿論、親御さんが亡くなってしまい行くところが無くなってしまった子供もいるそうです。
「だから、可哀想な子だと一纏めにしてしまうのはダメよ? きちんと前向きに生きている子達ばかりだし、親御さんが迎えに来てくれる子もいるのだから」
「はい、マーラ姉様」
孤児院の役割や在り方、子供達への心構えなどをマーラ姉様から教えていただいてから、孤児院へ入りました。
「マーラ様!」
「マーラ様だ!」
「奥様もいる!」
孤児院は入ってすぐに食堂になっているらしく、長机と椅子が等間隔に並べられていて、奥に扉のない出入り口が一つと、扉のついた出入り口が二つ有りました。
子供達は、姉様と母様に気付くと、嬉しそうに近寄ってきました。
「まぁまぁ、お戻りになられたのですね。無事なご様子で、なによりですわ」
「ご無沙汰してしまって。シスターもお元気そうでなによりですわ」
「シスター。今日からは弟のカインも通えるようになったのです」
マーラ姉様が、シスターと呼ばれた修道服に身を包んだ女性に僕を紹介してくれました。
そこで初めて気付いたのか、子供達も僕の方を見てきます。
こんなに大勢の方達に一斉に見られると、ちょっと照れてしまいます。
「カイン・ロンガヴィルです。どうぞよろしくお願いします」
「あらまぁ、ご丁寧にありがとうございます。私この孤児院を任されております、クラメンスと申しますの、よろしくお願いしますね」
「はい!」
シスター・クラメンスはにっこり笑って、僕の頭を撫でてくれました。
その後、今孤児院にいる子達とも挨拶を交わしてから、マーラ姉様に付いて何処に何があるか、どんなお手伝いをするのか、などを教えてもらいました。
「では、マーラ姉様は薬草を取りに森へ行かれるのですか?」
「いつもではないわ。森へは、大人の方と一緒でなければ危険だから、薬師の方と、護衛をしてくださる冒険者の方がみえられる時に行くのよ」
「冒険者! マーラ姉様は、冒険者の方を見たことがあるのですね!」
冒険者。
やはり男としてはその響きはワクワクします。ファンタジーの定番ですよ!
憧れますね。
興奮した僕を微笑ましそうに見ながら、姉様は冒険者の方のことを色々教えてくださいました。
孤児院の依頼として出される、薬草取りの護衛は、報酬としては薬草採取よりも少し高いくらい。
ですが、森の浅い場所とは言っても魔物がいつ出るか分からない場所へ行くのです。
そしてもしもの時は、依頼人を守りながら戦わなくてはならないので、依頼内容と報酬額がみあっていないらしいです。
ですが、孤児院に子供を預ける事のある冒険者さんや、孤児院出身の冒険者さんが依頼を受けてくださるそうです。
ロンガヴィル領は薬草が豊富に育つ自然豊かな領地ですので、冒険者としては薬師さんを護衛する依頼は回り回って自分のためになるので、文句を言ったりする方はいないのだそうです。
凄く素敵な考えです。冒険者さんは優しい方が多いようです。
ご都合主義の孤児院ですね。あり得ません。
ですが、こうしないと後の展開に支障があるので、強行します。




