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勝負の結果とか、マジ?

「嘘じゃない、2人へのボクの愛は本当さ!」


私がそう歌うと、レイとユウがドレスの裾を切り裂いた!


素晴らしい! ワンダフォー!


ミニスカート姿になった2人が身軽に踊る。


令嬢教育の一環としてダンスを徹底的に習ってるレイとユウの踊りは、ハッキリ言って綺麗だ。


そして…えへへ、エロイ。

歌に集中しないといけないのが残念でしかたない。


「愛してる」


マジで!


気持ちを込めて言葉を送ると、練習の通りに両サイドからレイとユウのパンチが飛んできた。


押し付けるぐらいの軽いパンチ。


なのに…え? 2人の目が怒ってる。激怒げきおこって奴だ。


聞こえる。聞こえてしまう。


あとで覚えてなさいよ!


という2人の心のお怒りが。


やっぱ、ミニスカートはやり過ぎたか…。


ず~と前にも言ったけど、この世界の令嬢は肌を露出するのを嫌う。真夏でも長袖を着ているぐらいだ。それは一般の女性でもあまり変わらずに、さすがに夏に長袖はないけど、素足をさらすような真似はしない。見せても足首ぐらいまでだ。


そんなハレンチ極まりない恰好を、令嬢の中の令嬢たるサシャとロッカにさせているのだ。


うんうん、我ながら調子に乗り過ぎた。


こんなロッカ…もといユウを父親であるフェクターさんが目にしたら、激怒するのはまちがいないだろう。


だが悪いのはミニスカートが似合い過ぎる2人なのだ。

私の落書きを見て、目の色を変えたマダム・キャラも悪いのだ。


断言できる! 私に罪はない!


もちろん、レイとユウも最初は嫌がった。


それを『勝つには必要なんだよぉ』と私とマダム・キャラとで泣き落としたのだ。


ちなみに、ミニスカートの下はスパッツもどきだ。パンチラとかは無いのだ! というか、これでもコノ世界の男性には刺激が強くて鼻血ブーものだと、スタッフの皆さんで証明されている。


そして、さらに言っちゃうと若い女の子からの評判も悪くなかった。自分が履きたいとまでは言わなかったけど、縫製ほうせいを担当している10代20代の女の子たちは目をキラキラさせてた。


分かる! 分かるよ!

真夏のくそ暑いなかを重たいスカートとか苦痛だもんね!


歌ううちにも、お客さんが戻ってくるのが分かった。

建物からも人の頭がにょきにょき生えてくる。


でも、歓声がわかない。

反応がいまいちだ。


どうしよう、どうしよう。


そう思っているうちに、8曲を歌い切ってしまった。


「ありがとうございました!」


3人で頭を下げて、舞台袖に戻る。


すると、そこにはアポロスターの面々が待ち受けていた。


勝利者宣言をする積もりなんだろう。


私はレイとユウをかばうように進み出た。


土下座。これしかないだろう。

プライドもへったくれもない。ここまで計画が進んでるのに中止になんてされたら、リリジさんにもスタッフの皆さんにも迷惑が掛かってしまう。


これも全部、私のせいだ。


「許してください!」


その場で頭を地面に擦りつけようとした……その時だった。


「負けたよ」


アポロスターのリーダー格でもある最年長のアンディーさんが言った。


まさしく青天の霹靂へきれき。どうゆ~こと?


「客はみんな、君たちの歌に聴き入っていた。ワタシ等の時とは大違いだ」


ふ、と自嘲するようにアンディーさんが笑う。


「認めるよ、君たちモイライのことを」


アンディーさんから手が差し出される。


勝った…のかな?


色々と理解が追い付かないけど…とりあえず、アンディさんの手を取った。


ゴツゴツとした手の平だった。

楽器を長いこと扱ってきた人の手の平だ。


この世界では男の人がどんなに楽器を弾いても神様に祈りとして届くことは無く、だからこそ男性のバンドマンは白い目で見られることも多いし、女性もシスターにらなずに楽器を弾いているということで冷たい目で見られる。シンガーとなれば尚更だ。

アンディさん達は、そんな冷ややかな視線を向けられても頑張って『一流』にまで伸し上がった人だった。


私は、以前。この世界の音楽はモイライのせいで変わると言った。

多くのアーティストが生き残れないと言った。


でも、違う。思い上がりだった。

この世界のアーティスト。ミュージシャンは、絶対的な白眼に耐えてでも楽器を手放さなかった、本当に心底から音楽が好きな人々なのだ。


きっと、彼等彼女等は誰一人くじけるようなことはなく、モイライの音楽を受け入れて更なる高みに登ってくれるだろう。


だって、それはアンディさんの手の平が。

そして、私を正面から見るアポロスターの面々の嬉し気な顔が。

教えてくれている。


「アンディさん、みなさん! ステージに登る体力はまだありますか?」


「体力ならまだあるが…?」


「だったら」


私はステージを振り向いた。


「行きましょう! 一緒に!」


アンディさんの手を引っ張る。


アンディさん達なら、1回でも聴いただけで私たちの楽曲の演奏は可能だろう。


「いいのか?」


「いいもなにも、私たちは同じアポロ・プロの仲間じゃないですか!」


ニッ、とアンディさんが男臭く笑った。


「そうだったな! 行くぞ、みんな!」


私たちは、再びステージへと返った。


撤収の準備をしていたバックバンドの皆さんに代わって、アポロスターのバンドマンが席に着く。


そして、マイクの前にはモイライとアポロスターのシンガー達。


気付いたお客さん達が期待に満ちた顔になっている。


「おっと! 帰るのはまだまだ先だよ! 息が止まるほど魅せてやるぜ!」


わぁ! とお客さんが声を上げる。


モイライとアポロスターの共演は始まったばかりだ!

これにて、アポロ・プロの内での対決はお終いです。


そして。書いているうちに大切なことに気がついてしまいました。

物語は真冬なのです!

なのにサシャとロッカはミニスカート…。

踊っているうちに体はポカポカになっている…といいなぁ。

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