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人に聴かせるための音楽とか、マジ?

勢いで書く!

バックバンドが掻き鳴らすのは、エレキギターだった。


邪道の楽器だ。


どんなに祈っても決して神に届かない楽器。


そんな楽器だから、普通の演奏家は手にすることさえ嫌がる。


エレキギターの音なんて一般の人間は耳にしたことさえないだろう。


だけど、これは…。


俺は迫りくる音の迫力に圧倒された。

それは今までに聴いたことのない波のように広がる音だった。


しかも、エレキはギターだけじゃなかった。


ベースも、キーボードまでもがエレキなのだ。

ただ、ドラムだけが素のままだった。


知らない音。


知らない音楽。


体がほとばしる旋律に押しつぶされそうになる。


なんだこれは?

何なんだ!


当惑するうちにも、少年…リンと、少女たち…レイとユイが歌い始めた。


それは今までに聴いてきたJAZZとは余りにも違っていた。


JAZZを柔らかな夜に例えるなら、このモイライの楽曲は真夏の昼間のような曲だった。


あまりにも単純な旋律。

歌詞だって、同じようなフレーズを繰り返すだけ。


なのに…なのに、カッコよかった!


「すげぇ」


友人の思わずといったていの感嘆が耳に入る。


そうだ。スゲェよ、あいつ等。


スカー、が歌い終わる。


時間にして3分弱だろうか。けれど、あっという間に感じてしまった。


次は、どんな曲を聴かせてくれるんだ?


俺は立ち上がった。


「2曲目、いっくぞ! メモリー!」


さっきの曲はリンの歌声を全面に押し出してカッコよかったが、今度の曲はレイとユウが主に歌を担当して『愛らしい』ものだった。


もっとも、今までに聴いたことのない楽曲だというのは同じだ。


ざわざわというノイズがうるさい。


せっかくの歌声と曲が聴こえないじゃないか!


俺は文句を言おうと振り返って、そこに大勢の連中が戻っているのを見た。


誰もが、ただステージを観ていた。


アポロスターの時のような熱狂はない。

それはそうだろう。俺たちは今、とんでもない体験をしているのだから。


3曲目がはじまる。


「笑顔でパンチ!」


再び少年が歌い、そうして今度は少女たちが踊った。


けれど、少女たちはドレスを着ている。どうしたって動きにくそうだ。


そう思っていると


「嘘じゃない、2人へのボクの愛は本当さ!」


少年がそう歌った時だった。


少女たちがドレスの裾に手をかけて、それを引き千切ったのだ!


ドレスなんて、そう簡単に千切れるものじゃない。

してみると、そのように細工がしてあったのだろう。


それでも俺は…いいや、俺たちは度肝を抜かれた。


膝より短いドレスたけになったレイとユウが身軽に踊り舞う。


あんなに短いスカートは見たことがなかった。


煽情的? いいや、むしろ健康的だった。


そうして少年が


「愛してる」


と歌ったところで、その両側から「ふざけんな!」と2人の少女が満面の笑顔で少年にパンチをぶつけた。


思わず笑ってしまう。

それは友人も、後ろの連中も同じようだった。


そして、俺は分かってしまった。


これは神に聴かせる音楽じゃないのだと。

俺たちに。人に聴かせるための音楽なのだと。


それが分かった瞬間…。


俺の背筋を何か…熱のようなものが駆け上がった。


ぞくぞくとした!

涙が出るほどの感動が体を満たした。


声もなく、モイライの曲を聴く。


俺だけじゃない。

みんな。


みんなが、心の中で熱狂して歌を聴いているはずだった。

この世界のJAZZは、曲が神に捧げるためのものということもあって、聴衆に目を向けてません。

歌声をともなうともなれば、一段下とさえ思われています。あくまでもシンガーは添え物なのです。

だから、本当の本物のJAZZとは似て非なる物と考えてください。


というようなことを、JAZZを馬鹿にしてるよね? と姉のお友達から言われたので逃げ道として設定しておきます。


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