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モイライの初ステージとか、マジ?

読み返すと、微妙にチグハグな文章になってました。

許してください。

私のつくる曲は、悪友兼親友に言わせると、良く言えば『縦横無尽』悪く言えば『節操せっそうがない』らしい。


譜面に書き上げるのはハードロックが多いけれど、その日の気分によってはポップスだってカントリーのような曲だってつくる。

たまたま深夜に見たアニメが面白かったからという理由で、そのアニメをモチーフにした曲をつくった時もあった。

こぶし、を効かせた歌がうたいたくなって、演歌みたいなものをこさえたこともある。とはいえ、これは徹底的に悪友兼親友に駄目だしされてお蔵入りになってしまったけれど。


というわけで、モイライ用の楽曲はロック寄りのポップスを提供することにした。


前世でいうと、昭和アイドルの最高峰『山口百恵』や『中森明菜』みたいな感じだ。


本当は、もっとハードな歌をうたいたかったんだけど、それは中止した。


試しに前世で歌っていたハードロックを披露したんだけど、スタッフのみなさんが一様にドン引きしてしまったのだ。

正直、あそこまで顔色をなくされるとは思ってもみなかった。


とはいえ、考えてみれば当然なのだ。


私のやったことは、小学生の体育の鉄棒で、いきなり順手背面懸垂前振り上がり1/2ひねり支持のB難度の大技『オノ』を繰り出してしまったようなものだろう。ちなみにA難度はデスメタルだ。


前世でも、白人ロックの先達たるエルビスプレスリーは若者にこそ受け入れられたけど、大人には批判されたというし。

もっとも、エルビスの場合は人種差別問題とかあったみたいだけどね。


それにしたって、徐々にならす必要があるということだ。


運が良かったというか、助かったのは、事前に考えていた10曲がどれも大人しめのものだったことだろう。

ちょっと手直しして、アイドルが歌うのに違和感のないように仕上がった。


対決勝負での持ち時間は1時間。


予定だと30分だったらしいけど、お客さんが多すぎて、演奏時間が短いと暴動になりかねないということで、急遽、30分延長されたのだ。


う~ん、とそれを聞いて私は唸った。


だって、モイライに1時間を歌えるほどの楽曲は無いのだ。

今、歌えるのは16曲。そのなかでも人前で使えるほどのものは8曲だろうか。


これを全力で歌うのだ。


ひと際大きな歓声が上がった。


時間的に、アポロスターのステージが終わったんだろう。


ふぅ、と息を吐いて、私は手を叩いた。


控え室のみんなが、私に注目する。


「行こう! 度肝を抜いてやろうぜ!」


おお!


気合いの声を上げて、みんなが立ち上がる。


私たちはステージに向かった。


途中でアポロスターの人達とすれ違う。


なにか嫌味のひとつでも言われるかと思ったのだけれど、彼等彼女等はすっきりしない顔をしていた。


まるで曲や歌を聴いてもらえなかったみたいな顔だ。


まずは、バックバンドの皆さんがステージにあがって楽器の準備をする。


それが終わるまで、私たちは舞台袖で待機してるんだけど。


あっちゃ~、と思わずにはいられなかった。


だって、お客さんがドンドン帰って行ってるんだもん。

建物の窓や屋上から観ていた人たちも頭が見えなくなっている。


私は、サシャとロッカならぬ、レイとユウを振り向いた。


レイは…すんごい怖い顔をしてる。緊張してるんだろうなぁ。


ユウは…ペロリと舌なめずりしそうな顔をしている。


本当に対照的な2人だ。


そうして、いよいよバンドの準備が整って、私たちがステージに登ることになった。


「魅せてやろう!」


私はまっさきに一歩を踏み出した。


お客さんは潮が引くようにいなくなりつつあった。


ステージに近い場所で帰るに帰れないのだろう、そんな一部のお客さんが私たちに注目する。


レイはすっかり緊張しきって、睨むようにお客さんの方を見ている。


というか、さっきから脚が生まれたてのバンビみたいにプルプル震えてるんですが…。大丈夫かなぁ。


そんなレイに、ユウが


「そんなに気を張る必要ないって。有象無象どもに、あたし等の歌を聴かせてやろうじゃないの」


とニヤニヤ…他人が見たらニコニコ顔で言ってる。


う~ん、黒い。真っ黒だよ、ユウさん…。


私は改めて、眼前に広がる光景に目を移した。


絶景だ!


ステージから見下ろす風景にドキドキがワクワクに変わっていく。


あの背中を見せている人達を振り向かせてやろうじゃないの!


マイクの前に立った私は名乗りを上げた。


「初めまして! モイライです! 僕の名前はリンと言います。それで、こっちが」


と右隣りのレイを紹介しようとしたのだけれど、緊張し過ぎてカチコチで耳に入ってないみたいだ。


私はお客さんに見えるように大げさに肩を竦めてから、レイの肩を抱いて引き寄せた。


「名前は?」


問われて、レイが私を凝視する。


ポーと私……リン様を見ている。


あー、こりゃレイじゃなくてサシャになっちゃってる。


と、視界の隅でロッカが手を伸ばしてサシャのお尻をパチンとはたいたのが見えた。


それで、サシャはレイに戻ったらしい。


「…レイ」


怒った声でユウを睨んでる。


これは、あとでひと悶着だな。


スルーして、ユウを紹介する。


「で、もう1人のこっちが」


「ユウで~す!」


ユウが私たちを押しのけるようにしてマイクの前に出る。


「ちょ、何すんだよユウ!」


テンション高いな~。ロッカはこういうお祭り騒ぎが大好きで緊張しないタイプなんだよね。


「いいじゃん、みんなに早く名前を知ってもらいたかったんだもん」


「もん…て……」


ユウ…ロッカは間違っても『もん』とかぶりっ子をするような性格じゃない。


私もレイも。つい笑ってしまった。


「ちょっと! なんで、リンもレイも笑ってんの?」


ユウが、頬を膨らませて抗議する。


なにそれ! 似合わなすぎ!


私は笑うのを何とか我慢していたのだけど、レイは私に抱き着いて笑い顔をお客さんに見せないようにしている。


ユウがニヤリと…ニコリと微笑む。


ああ、緊張を解いてくれたんだね。


なんて思わない。


きっと、ステージで私たちを笑わせようと前もって考えていたんだろう。それが成功して満足なのに違いない。


ロッカはマジで凄いわ。

でも、度胸があるのかというと違う気がする。元から緊張しないタイプなんだろう。


レイが私から離れる。


いよいよだ。


「まぁ、仕切りなおして。では、聴いてください! スカー!」

次回は、またお客さんからの視点になります。

コロコロと視点が変更してすみません。


ハードロックを聴いたスタッフがドン引き。そのなかにはリリジさんも含まれています。

リリジさんが以前にスタジオで聴いたのは、ソフトロックだったということで…。

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