忙しい日々とか、マジ?
ライブをするにあたって、おおまかに書いても以下のような担当者が必要になる。
演出【監督】:ステージの最高責任者。
美術 :舞台のデコレーションを担当する人。
照明 :そのまま。舞台上の明暗や時に色彩を添える。
音響 :スピーカー等の拡声を取り仕切ってくれる。
衣装 :出演者の服装を考案する人。今回はマダム・キャラが先頭にたってくれる。
ヘアメイク :出演者の髪型を整えてくれる。
大道具 :ステージ上の見える場所を考案して作成してくれる。
メイク :出演者の化粧係。
演奏 :バンドマンの方々。
振り付け :ダンスの振付を考案する人。
他にも広報やら各係の助手やら製作やらと、人手は大いに必要となる。
とはいえ、基本はリリジさんが手配してくれたので心配はない。
私たちが無理をいってマダムを仲間にいれたぐらいで、初日から動き回ったリリジさんは3日目には
「この街で最高の人材です!」
と各担当者を選んでくれていた。
そうとなれば、残るは私たちの問題だ。
というか、私の問題だったりする。
ライブは最低でも1時間半は上演する必要がある。
できれば2時間。さらに言えば、2時間半ぐらい上演時間があると、観客は嬉しいはずだ。
なんせ、安くないお金を出すのだ。
1時間半では、そうとう盛り上がらないと納得できないだろう。
1時間半。
これを短いと感じるか、長いと感じるか。
観客としてなら短い。
でも、演者としてなら、なかなかに長い。
特に我がモイライは持ち歌が皆無なのだ。
もう1度いう。
皆無、なのだ!
たしかにグリングランデ商会の宣伝歌はあるけど、あれをライブで歌うのは違うだろう。
さて。そうなると、早急に、ライブ初日までの2ケ月余りで曲をつくらないといけない。
いいや、違った。
演出やら各種担当との擦り合わせや製作を考慮すると、猶予は1ケ月ない。だいたい20日ぐらいがギリだろう。
20日……。
私だって、こっちの世界に来てノンベンダラリとしてたわけじゃない。
…してたように見えたかもしれないけど、してなかったのだ!
私は転生してから幾つも新曲をこさえていた。
それこそモイライというユニットにバッチリ合う曲だってある。
けど、それでもせいぜいが10曲ぐらいだ。
前世だと、バンドやアーティストはライブ・コンサートで平均20ぐらいの曲数を演奏するらしいと聞いたことがある。
確かに、そんな感じだった。
それがアイドルになると40曲ぐらいに跳ね上がる。
歌って、踊っての、40曲だ。
これは、口パクがあるからこそ曲数だと考えていい。
そうでもなければ、酸欠で倒れてしまうだろう。
40曲。
…無理。どー考えても無理。
30は?
つらい。きっと、無理。
20曲だったら?
…あと10曲追加か。頑張ればいける…気がしないでもない。
というわけで、私は常に新曲を考えていた。
ハッキリ言っちゃうと、前世の曲をリスペクトしちゃえばいいと考えないでもない。
でもなぁ…。
私には私のプライドがある。前世の流行歌を我が物としてコッチの世界で歌うのはプライドに反するのだ。
「大丈夫、リリン?」
「隈ができてますわよ」
ロッカとサシャに心配されるほどに頭を悩ませていた。
だからといって曲作りだけに集中するわけにいかない。
考えていた10曲を披露して、演出の先生とみんなとで舞台をどうしたいか話し合ったり。
私が前世のアイドルの振り付けやムーンウォークを披露して、振り付けの先生方の度肝を抜かしつつ、そのダンスを元にして私たち向けの振り付けを考えてもらったり。
衣装の相談。演奏との練習。
更にはライブの宣伝として、私たちモイライの写真を撮影したり。
ラジオで流す曲を録音したり。
時間が幾らあっても足りなかった。
そんな忙しいなかで、私が四苦八苦して8曲目を捻りだした、そんな日。
事件は起こった。
20日間で新曲を10とか……普通に無理だと思います。
でも、創作なので、ファンタジーなので…許してください。
この忙しい日々は、詳しい描写をしていると、この期間だけで1か月ぐらい投稿しないといけない気がします。だから、ダイジェストです。