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モイライの衣装係り決定とか、マジ?

時に両腕を広げ、時に天を仰ぎ、時に顔芸…もとい、表情をつくって語ってくれたマダムのお話を要約すると。


作物の高騰で服がパタリと売れなくなって、赤字も赤字、大赤字。

マダムは店番をしつつ、自分を励ますために私の男装した写真を眺めていた。

そんな時。

ちょうど店をひやかしに来ていた女の子達が私の写真を目にしてしまったのだという。


「それが、もの凄く評判が良くて。どうしても写真が欲しい、売ってほしいって言われて」


背に腹は代えられずに、売ってしまったらしい。


それからは噂が噂をよんで、お客さまがドシドシ入店するようになった。

もちろん、服を購入に訪れたのではない。

私の写真…もはやプロマイドと言ってしまっていいだろう、それを買いに女の子たちが引きも切らずに遣ってくるようになった。


「そのうち、熱心なファンがパネルを持って来てくださったのよ」


私たちは一斉に飾られた特大パネルに目を向けた。


すんごい極上の笑顔だ。

…思い出した、直前にオヤツでクレープを食べたんだ。

そんな俺様系の笑顔を浮かべつつ今しもクレープの味を反芻はんすうして舌なめずりしそうな私が、胸元の微妙に開いた服を着てるもんだから、我がことながら色気がハンパない。


サシャが釘付けになるもの頷ける。


それからはプロマイド販売だけではなく、売れ残っていたタオルに私の顔写真をプリントした物を販売したりして、グッズ販売に手を広げたとのこと。


「で、こうなったと」


ロッカが店内を見回す。


「ごめんなさいね、無断でこんなことをしてしまって」


マダムが心底から申し訳なげに謝る。


けど、私としてはどうだって良かったりする。


「別に問題ないですよ」


前世でも同じようなことをして悪友兼親友は学生時代から荒稼ぎしてたし。


「むしろ、これからのことを考えると認知度が上がっているのは渡りに船ですし?」


「そういえば、歌手になるんでしたっけ?」


「ええ、この3人で」


と言った時だった。


「ピンときたわ!」


ロッカが溌剌として声を上げた。


「これよ、これこれ! 絶対にバカ売れもうかること確定だし!」


どうせグッズ販売をもっと大々的にしようとか考えてるんだろう。


この世界にアイドルなんて存在はいない。だからファン向けのグッズなんてものもないのだ。

有名な歌手のプロマイドなんかは売られているけど、それぐらいだ。


だから、グッズは作れば人気に比例して売れるだろうけど。


「あのね、ロッカ。水を差すようだけど、それって失敗するよ」


べよ!」


理由を、という言葉を省いてロッカが私に迫る。


思わず一歩退いてしまうほどの迫力だ。


「えーとね、直ぐに真似されるでしょ? 海賊版って分かる?」


前世で荒稼ぎした悪友兼親友も、それでコケたのだ。しかも1度でも質の悪いのが横行してしまうと、印象が悪くなってしまうから、そのものの販売そのものが先細りになってしまう。


というような予想を、前世のことをぼかしながら説明すると


「たまに、ビックリするほど鋭いことを言うわね」


「本当に、たま~にビックリさせてくれますわよね」


ロッカとサシャの発言が微妙にひどい。


「というかさ、グッズ販売の話をしにきたんじゃないっしょ?」


「そうだった!」


パン! とロッカが手を打ち鳴らす。


「キャラおばさん。もう服飾に戻る気はないの?」


「それは、戻れるものなら戻りたいわよ」


「だったらさ、私たちの衣装係りをやってみない?」


これこそが、今回、マダムのお店を訪問した理由だった。


「衣装係り?」


「そ。歌手をするにあたって、衣装を用意してもらおうと思って」


「……男前になる衣装を?」


「そ」


「あなた達にフリフリな衣装を?」


「…まぁ、いいけど」


「受けるわ! 受けさせてもらうわ!」


マダム・キャラはロッカの手を強く強く両手で握った。


ここにアイドル・ユニット『モイライ』の衣装係りが決定したのだ。

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