3人の幼い女の子とか、マジ?
それからというもの、私たちは村に着くたびに歌とダンスを披露した。
村の人達は喜んでくれた。
どの村も貧しげだったけれど、秘蔵のお酒やお肉を供出して、お祭りのように楽しんでくれた。
実際、村の人達からしたらお祭りだったのだろう。
なかには涙を流して、私たちに感謝をしてくれる人もいた。
「こんなに笑えた日は久方ぶりだ」って。
ただ、サシャは……何処かしら義務的にこなしている感じがあった。
本音を言えばジャックに付き添っていたいけど、私が言うから仕方なく付き合う、みたいな。
ロッカも同じ。お金にならない物事にはあんまり積極的じゃない彼女だけど、私がやる気みたいだから「しょうがないわね」と嫌々じゃあないけれど、一緒に披露するみたいな感じ。
2人とも無表情で、微妙に投げやりに踊って歌う。
こんなアイドルを昔…そう、前世で私は見たことがある。
WINK【ウィンク】だったかな?
動画で、お馴染みの悪友兼親友と見たんだよ。アイドルなのに無表情で、なんか知らないけれど屈託したような雰囲気があって。
ひと言でいうなら『ミステリアス』なアイドルだった。
サシャとロッカも、お人形さんみたいで神秘的だと、好いとらえ方をされていた。
「さすが都会の女の子は違うなぁ」みたいに。
女性にも男性にも人気だった。
対して、男装をしている私はと言えば、ガキンチョどもにモテモテだ。
女性が色目らしきものを使ってくることもあったけど、そういう場合は、直ぐに男性が飛んできて割って入った。
村の女子をかさらわれちゃぁたまらん! ということだろう。もちろん、そんなだから男性には敵を見るような目を向けられた。両隣に美少女を侍らせているのも、癇に障ったのかも知れない。
女性にも男性にも相手にされない。無視をされる私。
そんなボッチな私に話しかけてくれるのが、ガキンチョという訳。
ここでポイントなのが、お子様、じゃないということ。
ガキンチョ、なのだ。
村でも跳ね返りの悪ガキ、そんな連中に私は何故だか好かれた。
ハッキリ言おう!
私もガキンチョは嫌いじゃない。ただし、隙を見つけてはカンチョウをしようとするのはいただけないぞ! おい、お前! 狙ってるのは分かってるんだからな! 私はやられたら、やり返すからな!
村に滞在している間、私は全力でガキンチョどもと遊んでやった。
鬼ごっこにドロケイ、かくれんぼにおしくらまんじゅう。
それこそ日が暮れるまで遊んで、ガキンチョだけじゃなくて、ちょっと内気な子も仲間に入れて楽しんだ。
そんな態度が、不味かったのだろうか。
3つ目の村でのことだった。
早朝。いざ出発という段になって、見送りに出てきた村長夫妻がこんなことを言い出したのだ。
「是非とも、村の女の子を連れて行ってくださいませ」
「お代は要りません。あなた方なら、不幸な目にあわせることもないでしょう」
つまり。働き手にならない幼い女の子を無料で引き取ってくれと言うのだ。
しかも、私たちなら子供を無下に扱わないと思われている。
「あっちゃ~」
とロッカが天を仰いでいる。
私も同じ気分だった。
原因は私だ。私が、村の子供と気安く接し過ぎたのだ。加えて、家にはジャックもいる。ジャックを構いつけているサシャを観られてもいたのだろう。
村長夫妻が家から、幼い女の子を連れだしてきた。
人数は3人。下は4歳ぐらいから、上は6歳ぐらいかな? 働き手にはなれない年齢だ。
両親や村長夫妻に言い含められたのだろう。昨日は溌剌として笑っていたのに、今は諦めたように押し黙っている。
「困りますよ、わたし等は芸人なんです。とてもじゃないけど、子供を引き取れる余裕なんてないんですって」
「どうかどうか、頼みます。この村も切羽詰まってるんです」
リリジさんが対応しているけど、村長夫妻も退く気はないようだ。
そうしてジリジリと押し問答を続けていると、村長がこんなことを口にした。
「なんでしたら、この子たちを娼館に売り払っても構いませんので」
私は思わず並ばされた3人の女の子を見てしまった。
娼館の意味は分からないだろうけど、ずっと俯いたままでいる女の子たち。
そのうちの1人。いちばん幼い子が待ち草臥れたようにフッと顔を上げて、私の背後を見た。
「なんで、そんなことを言うんだ!」
ジャックだった。
私の背後に何時の間にかいたジャックが、怒声をあげた。