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ピザ祭りとか、マジ?

休日だから、まだいけました。

1日1回の投稿。

実は私。大発見をしてしまったのです。


それは魔獣の森に間引きにいった時のことでした。

兵士さん達が何か緑色の実を頬張っているではありませんか。


「それは、なぁに?」


勿論、私は尋ねました。


何ですって? どうせ余りにも美味しそうだから、あわよくばおこぼれにあずかろうとしたんだろう? ですって。まぁ、おほほほほ。面白い冗談を言いますのね。そんなハシタナイことをするはずがありませんのことよ。純粋に知的好奇心とかいう奴が働いたから尋ねただけでわよ。


異論は認めません!


で、兵士さんは答えてくれました。


「これは魔獣の森の近くに生えている木からとれる実なんだよ」と。

「あんまり美味いもんでもないんだけどさ、森に入る前にたくさんもいでおいて、小腹がすいたら食べるようにしてんだよ」


そうして、こうも言ってくれました。


「よかったら、食べるかい?」


「え、いいの? 食べる食べる!」


で、緑色の実を食べたんだけど。


これがビックリ。どう見ても早生わせミカンにしか見えなかったソレは、なんとまぁ、トマトだったのよ。


味は当然だけど、熟してないから不味かった。でも確かにトマトだったの。


「…これ、熟すと赤くなるはずなんだけど。待ってから食べたりしないの?」


「へー赤く熟すのかい? 俺は赤くなったのを見たことないな」


熟したものが地面に落ちたりしたのも見たことがないらしい。


ということは、鳥がついばんでしまうのだろうか?


「それはないな。魔獣の森のほとりには野鳥なんていないし、そもそも100や200ぐらいの鳥が食べつくせないほどに木はあるし、実も年がら年中鈴なりだ」


ほうほう、さすが異世界。

トマトが木に成っていたり、季節を問わずに収穫できるとな?


いやほおおおおおおお! 最高じゃん!


トマトってさ。マジで料理に革命をもたらした作物なんだよ。


原産地はメキシコ。そこからヨーロッパにもたらされたんだけど、初めのうちは毒があると思われていて鑑賞用だったんだってさ。そこのところはジャガイモに似てるよね。で、イタリアの貧しい人が余りにもお腹が空いて、トマトをパクリと食べてしまったそうな。


すると。


「うまいじゃん! それに毒もないじゃん!」


という驚愕の事実が判明。時に1767年より少し前あたり。

実にトマトが海を渡ってから200年後のことであります。


それからは、あれよあれよとトマトは食用としてイタリア・スペイン・ポルトガルといった地中海地域に広まりました。

そうなれば、食材としての活用方法も考案されて、ついに…ついにトマトソースが爆誕するのですよ!


分かっていただけますか?

ピザもミートソース・パスタも、実は200年と少しぐらいの歴史しかないんだよ。


それなのに、世界中で愛され食べられる作物となった。


まさに、料理の革命児。

というようなことをロッカとサシャに説明できるはずもなく、私はニヘヘと笑ったのだ。


「う~んと。まずはアゼイ…よりはメリニ将軍かな? 頼んで、トマトの収穫部隊をつくってもらって。それからロッカ」


「…なぜだか面倒ごとの予感がするんですけど」


「大正解! 何処かさ、人が集まっても大丈夫な場所を数か所選んで、かまをいっぱいつくってよ」


私は紙をもって来て、さらさらと逆Uの字をした窯の絵を描いた。


そう、ピザ窯です。


これが沢山あったら、美味しいものに飢えている人でも自分でピザを焼けるでしょ。それに材料は、年中豊作らしいトマト(仮)と、パン生地の小麦と、それにチーズ。どれも無理なく手にはいる食材だ。燃料だって、それほど必要としないし。なんせ、焼くだけだからね。


もちろん、作り方をレクチャーしたげないといけないけど。


きっと創意工夫で、いろいろなピザが生まれると思うんだ。

それを、各自が…各地域でもいいかな? お祭りで持ち寄って、食べ比べをする。


楽しそうじゃないですか?


「う~ん」


とロッカは腕を組んで考えている。きっと頭のなかでは窯の作成にかかる費用やらが忙しなく計算されてるんだろう。


「無理かな?」


「…できる、と思うわ。詳細は、パパやグリングランデ商会と詰めないといけないでしょうけど、いけるはずよ」


「さっすがロッカ!」


私は思わずハグをしてしまった。


だって、これでピザを食べられるようになるんだよ! マジで嬉しいじゃん。


むちゅーとキスもしようとしたら、ペイ! と両腕て除けられてしまった。


「あら、残念」


とサシャが言うと


「リリンとキスとか、洒落しゃれじゃすまないから!」


ロッカが顔を赤くして言い返している。


まぁ、自分としてもちょびっと浮かれ過ぎた自覚はある。


「じゃあ、次はサシャね」


「わたくしにも?」


「サシャはさ、子供たちとパンをふわふわにする酵母を量産してほしいんだ。酵母の作り方は、前にロッカと一緒に聞いて憶えてるでしょ?」


ピザ生地は決して発酵させる必要はないけど、バリエーションはあったほうがいいもん。


「ちょっと、まさか酵母を使うの? あれは、ふわふわパンの秘訣でしょうが!」


ごねるロッカです。


「いや、まぁさ。せめてふわふわパンぐらいは譲ってよ。トマトが取れたらさ、それを使った料理も教えるから」


「…約束よ」


ということで、サシャには子供たちを率いて酵母を量産してもらう。

お駄賃は、メリニ将軍にだしてもらおう。


もしかしたらリンゴ(仮)が季節柄でないかもしれないけど、それならそれでトマト(仮)を使って酵母を作ってしまえばいいだけだ。


「じゃ、そういうことで。私は早速、メリニ将軍のとこに行ってくるからね」


言うが早いか、私はロッカの部屋を飛び出した。


ピザが食べたい、早く食べたい! 私の頭のなかは一食…一色だった。

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