表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/101

ロッカに卍固めをされたとか、マジ?

短いです!

でも1日1回投稿!

「ど~ゆ~こと!」


ぐええ! 現在、激昂してロッカに卍固めを決められております、リリンシャールでっす!


孤児院で幼児ジャックに教えていたのを見ていたらしい。なんという才能!


それにつけても…タップの意味も教えとけばよかった! 体をパンパン叩かれたら、それはギブアップの意味なんですよロッカさん!


ぐえええええ!


「ちょっと、やめてあげなさいな」


まさに天使! サシャが言って、ようやくロッカは私を開放してくれた。


ロッカの部屋のふわふか絨毯じゅうたんに力なく寝転がってしまう。


…それにしても、ルームメイトを他所よその部屋に行かせておいてよかったね。こんなところを見られたら、ロッカのおしとやかなイメージは丸潰れだから。


「いてててて」


私はようよう立ち上がった。


良妻のサシャが、私の体をはたいてくれる。


まぁね。ロッカが怒ってるのも分かるんだよ。だって、お祭りで私が『美味しいもの』を提供するということは、当然だけど私だけで大量の料理をこさえることは不可能なわけで、イコール、不特定多数の人にレシピを公開して手伝ってもらうことになる。そうなると、もしかしないでも遠からず王都にまでレシピは広まってしまうわけで、ロッカの『美味しい料理で王都の貴族や商人の胃袋をおさえちゃおう!』計画が水泡に帰してしまうのだ。


「ロッカさんや、ロッカさん。フェクターさんからの言伝ことづてを聞いてくださいな」


ぷんすか怒っている彼女に、私は声をかけた。


「あのね、どうしたってメリニ将軍の要請を断れなかったんだって。あそこで断ってしまうと、街の人からのやっかみも含めて、この街での商売が立ち行かなくなる可能性もあった、と言ってました」


「完全に誤算だったわ…!」


「だよね、お祭りだなんてねぇ?」


ロッカに私は同意したんだけれど


「違うわ、違うのよ。誤算だったのは、あなたの影響力よ。他の商人や職人さん達への好感度は計算のうちで、リリンを独占してしまったことに関しては、あとでグリングランデ商会からお詫びなりしてどうとでもなったけど。まさか、食で兵士さんや暮らしている人たちの気持ちを鷲掴わしづかみにして、暴動寸前になるだなんて思わないじゃない!」


「いや~、私もそこはビックリだったよ」


メリニ将軍やケンプさんに訊いた話だと、私の料理を食べた人たちから口伝くちづてでドンドン噂が尾ひれをつけて広まったらしいんだよね。そのうちに、食べた人と食べてない人とのあいだで『不公平だ!』『ずるい!』なんていう喧嘩まで起きてたとか。


たかが食べ物で、と馬鹿にすることなかれ。美味しいものは音楽と同じで人の心を魅了するのだ。


「でも、確かにリリンの作る料理は独創的で、この世の物とは思えないほど美味ですもの」


「ああ~どうしよう…。リリンの料理は、王都で成功するのに必要だったのに。ママに何ていえばいいのか…」


「いやいや、そこは安心してちょうだいな。ちゃんと考えてるから」


「だって…」


「まぁ、お聞きくださいな。そもそも街の人達にくまなく配れるほど大量のブイヨンやフォンを用意するとなると、材料の牛や鶏がどうしたって足りないし、それにまきだって街中からかき集めても不足するでしょ?」


「そう…ですわね。牛や鶏といった材料はグリングランデ商会が用意できるかもしれませんけど、薪はこれから寒くなることを考えると他の街や村から仕入れるにしても追いつかないでしょうね」


そうなのだ。ブイヨンやフォンはとにかく煮込まなければならない。そうなれば、燃料の薪だって莫大な量になる。私の場合は廃材を使わせてもらったから、ほとんど費用は掛からなかったけどね。


「ということで、ロッカに教えて、前にこさえたような料理は、今回はつくりません。それにね、暴動寸前になるほどみんなは美食に飢えてるんだよ? ここでお祭りの日まで待ってもらったとしても我慢できないだろうしね」


「けどさ、だったらどうするのよ?」


「そこは、おまかせあれ」


私はニヘヘと笑ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ