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リリジの勧誘とか、マジ?

馬車の開け放たれた窓から、懐かしい空気がはいってきた。


魔獣の森のニオイだ。


「この森の独特なニオイ? かぐわしからず、臭からずの、なんとも言えないニオイ。帰ってきたんだと実感するわぁ」


ホッと溜め息が出てしまう。


私ってば、つくづく田舎者なんだわ。

都会の水は体に合わない。


いや、マジで。


だってさ……欠伸あくびが止まらなくなるんだよ。


毎度おなじみの、悪友兼親友が言ってくれやがりましたところでは、私は猫と同じらしい。

なんでも、猫もストレスが溜まると欠伸あくびをするらしいんだよね。


まぁ? 私ってば? 子猫ちゃんみたいに? 繊細だし?


むふふ、と笑って言えば


ちゃんちゃら。自由奔放な野良が、ケージに放り込まれたみたいなストレスでしょうに。


なんて辛らつに突っ込まれたのは遠い思い出だ。


もっとも欠伸を防ぐ方法はある。

飴ちゃんを舐めるのだ。それもミント味の。

そうしたら、欠伸はでなくなる。

理由は知んない。結果がすべてだ。


まぁ、都会に行く機会なんてもうないだろうけどね。


「リリジさん…あれって、本気だったのかな?」


ロッカが眉をひそめて言った。


「本気のようでしたけれど…」


サシャが悩まし気な顔をして応える。


リリジさんねぇ…。私は街でのことを思い返した。


何を思ったのか、ファンキーなリリジさん。

いきなり『君たち、この街に住まないか?』と言い出したのだ。


私たち3人を気に入ったらしい。

孫とか、増して女としてではなく、商品として気に入ったらしい。


すんごい勢いでデビューからスターに駆けあがるまでのサクセスストーリーを立て板に水の勢いで語ってくれた。


涙あり友情ありのそれが意外に面白くって……じゃない!


私たちからしたら当惑して呆然だよ。


ロックをひとしきり歌ってコントロール・ルームを振り返ったらさ、防音ガラス越しに、スタッフさんや楽団員さんたちが青い顔をしてるんだもん。

リリジさんが恐い顔をしていたから、仕事で不都合でもあったんじゃないかな?


で。そんな叱られたらしい皆さんを見て、私は申し訳ないながらも密かに安堵していたわけです。


だってさ! ロックを聴かれたのかと思うじゃん?


でも、皆さんの様子からして、ロックは聴いてなかったみたい。

冷や汗ものだよ。もしもコントロール・ルームで録音ルームからの音声入力がONになっていたらと思うとさ。


この時代にいきなりロックなんて聴かせたら、前にも言ったけど非難されかねないからね。

もしもリリジさんの不興をかったら、せっかく録音した宣伝歌だって破棄されちゃうかもしれないもん。


あ~よかった。


と、思いつつ録音ルームをでたら、リリジさんの『ここ住め、わんわん』の攻勢だったわけなのよ。


え? 私たち、もう断ってるよね?


サシャもロッカも、すんごい困ってた。

…でも、少し興味がありそうだったけど。まぁ、女の子だし? アイドルとか憧れるもんね。


フェクターさんもさ「この子たちがOKと言わない限りは、わたしからは何とも」とか、どちらかといえばリリジさん寄りの歯切れの悪い発言してたし。


だから、最終的には、私たちがシスター見習いであることを明かさないとならなかった。

もちろん、言ったのはリリジさんにだけだよ。


絶句してたね、リリジさん。


それで、シスター・ライザに詰め寄って、それでも納得してくれなくて、アゼイが騎士の剣をみせて、本当のことだと誓って。


ようやく、リリジさんは引き下がってくれた。


あの時のリリジさん。がっくり肩を落として、まるっきりお爺ちゃんに見えたもんなぁ。

ちょっと可哀想だった。


でもね。話はコレだけで終わらないのだ。


終わるようなら、サシャもロッカも途方に暮れたりしない。


リリジさん、私たちが馬車に乗り込む間際に宣言したのだ。


「わたしは諦めませんぞ! 砦の街まで追いかけてでも!」


目が、すんごいギラギラしてたし。


あれは本気だと思うんだけど。

…んだけど、リリジさんはアレでも街の顔役みたいだから、本人の一存だけで離れることはできないんじゃないかな? と私は思ってる。


「で? もしも説得にきたらどーすんの?」


私はニマニマとしながら2人に訊いた。


「わたくしは…将来が決まってますから。ですが、ちょっとの間なら歌手として働いてみるのも面白そうだとおもいますわね」


「あたしは、正直に言って興味ないかなぁ。みんなと歌うのは好きだけど、あたしはパパとママを手伝わないといけないもん」


で? と2人の親友が私に目を向ける。


「歌いたいよ、もちろん。この3人でさ、全国を回ってライブとかできたら最高! でも、現実問題として無理だろうね。2人共さ、もしかして忘れてない?」


「何をですの?」


サシャが小首を上品に傾げて、ロッカも『?』を表情に浮かべている。


あらま。本当に忘れてるんだ。


それが少しおかしくて嬉しくて、私は微笑んで言った。


「私が悪辣令嬢だってこと」


あ! という顔を目の前の親友たちがしてくれる。


「もしもさ、私が歌手になんてなったら、直ぐに捕まっちゃうよ」


反省してない! これは首ちょんぱだ! てなるだろう。


「だからさ、変装でもしないと無理だろうね」


馬車は軽快に走っている。

ニオイだけではなく、遠くに砦の威容が見えてきていた。

ついこの間。

父ちゃんと一緒に、BSで放映したのを録画していた「刑事物語」という邦画をみました。

期待のキの字もなく見たのですが、ビックリするぐらいに面白かったです。


冒頭のシーンは何とも気詰まりになりましたが、それ以外は、父ちゃんと楽しんでみました。


いや~。邦画を見直しました。古い映画だからと馬鹿にできない。というよりも、今の邦画よりもよっぽど面白かった。

何よりも武田鉄矢! ハンガーヌンチャク!

かっこよかった…。


父ちゃんが言うには、刑事物語の2も面白いとのこと。

何時かまたBSとかで放映されないかなぁ。


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