録音スタジオについたとか、マジ?
総合評価が600を超えていました!
これも読んでくださる皆様のおかげです。
これから物語は、芸能編へと少しづつ移行していきます。
といっても、この進行速度だとまだまま先ですけど…。
頑張りますので、待っていてください。
マダム・キャラの店にいたのは時間にして4時間! もいちど言いますよ。4時間!
しかも、そのうちの半分以上は私がイジラれてたんだよ。
ぐー、という私の腹時計に感謝だよ。
「お昼にいたしましょう」
マダム・キャラのひと言で、ようやく私は解放されたってわけ。
マダム行きつけだっていうレストランで食事をして(失礼だけど、味はイマイチだった。やっぱり出汁とか取ってないんだよね)、それから店を出て、私たちはマダム・キャラに案内されて録音スタジオのある建物へと向かった。
人は多いけれど、馴れてしまえばどうってことない。
これでも前世で日本の記憶があるのだから。
とはいえ、物珍しいものは珍しいわけで。
道々、私はおのぼりさによろしく、あっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロしていた。
そして気づいた。
「ねぇねぇ、なんかコッチを見られてるんですけど」
私はアゼイに訊いた。因みに女子組みは、私といるのが恥ずかしいとか失礼なことをのたまって5歩ぐらい先を他人の振りして歩いている。
「何を今さら」
アゼイは呆れたように私を見た。
「みんな、お前を見てるんだよ」
「あ、ああ…」
なるほど、私は納得した。道行く女の人が注目してくるな、とは思っていた。そう、女の人限定だ。たまに男の人もいるけど。
ふと通りがかってコッチを見ている2人連れの女の子と目があった。
ニッコリと笑う。意味なんてない。元が日本人としての愛想の振りまきみたいなもの。
けど、効果は絶大だった!
ふらり、と片方の娘がその場で崩折れたのだ。
唖然として、アゼイと一緒に女の子たちを見守ってしまう。
その場で女の子座りをした娘は、連れの娘に腕を引っ張られて立たされている。
どうやら、びっくりして腰が抜けただけみたい。
「…お前」
「いいから、何も言わないで」
もしかして、だけど。サシャ・ロッカ・マダムが私と歩きたがらなかったのは、これが理由なのかな? てっきり、私が落ち着きなく観光気分でいるのを恥ずかしく思ってるんだと…。
私たちはドンドンと繁華な区域に進んだ。
進むにつれて、視線が多くなるけど。私は前世でパフォーマーだったわけで、べ地に見られることに関しては何にも感じたりしない。
街並みは5階建てぐらいのビルばかり。まさしく大都会だ。建築の技術が低いからそれほど高い建物はないけれど、あと何十年もしたらニューヨークとかみたいになりそうだ。
マダムは真新しいビルに私たちを案内してくれた。
『マリーン・レコーディングスタジオ』&『アポロプロダクション』
と看板がかかっている。
多分だけど、録音スタジオと芸能事務所が併設されてるんだろう。
広々としたロビーに入ると「それでは、みなさん。ココでお別れね」ろマダム・キャラが言った。
彼女は用事があるらしい。経営者だからね。店は休みでも、マダムに休みはないんだって。それなのに、わざわざ道案内までしてくれたんだ。
マダム・キャラはロッカとサシャにハグをして、私ともハグをしたんだけど
ちゅ
と、私だけ頬にキスをされてしまった。
ビックリして硬直する私に、マダムは微笑むと
「バーイ」
颯爽と去って行った。
「モテモテですね」
「ひゃ!」
背中から耳元に声をかけられて、私は飛び上がってしまった。
「どーしてシスター・ライザは気配を消して私の背後に立つんですか!」
いっつも、そうなんだから。普通に話しかけてよ。
「モテモテですね」
シスターは私の注意に耳を傾けてないのか、同じ言葉を繰り返す。
…というか。怒ってるのかな? 無表情だからわかりにくいけど。
あ、そうか! 私は脳内でポン! と手を叩いた。
「シスター・ライザも、あとでマダムのお店で服を見繕いましょうよ」
私たち3人プラスすることのアゼイだけが服を買ったんで、拗ねてるんだろう。でもさ、シスター・ライザは見習いじゃなくて正式な修道女だから、街だろうと何処だろうと、修道服を脱ぐわけにはいかないんだよね。そう、聞いたもん。けど、女心は別だ。院長の目の届かない場所でぐらい、着飾りたいんだろう。
あらまぁ。シスター・ライザも可愛らしいところがあるじゃん。
私は微笑ましくシスターを見たのだけれど。
「分かってない」
彼女は口をへの字にしてひと言。それから、ハンカチを取り出して、私の頬をひと拭きすると、踵を返してしまった。
「「女殺し」」
左右からサシャとロッカがジト目で見てくる。
へ? と困惑する私を残して、2人も受付のほうへと行ってしまった。
「生まれる性別を間違えたな」
最後にアゼイが私の頭をかるーくはたく。
私は若干、自分の魅力に…男としての魅力に恐怖しながらも、みんなの後を追った。
「待ってよぉ」
ほら、声は女だから。女の子だから!
ですから受付嬢さんたち。
「あら、声代わりしてないんだ」
とか嬉しそうに言わないでください!