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サシャとロッカの事情とか、マジ?

ちょっと鬱風味

リムジン馬車は揺れをほとんど感じない。それもそのはずで、タイヤはゴムをはいてるし、サスペンションも装備してるんだって。もっとも両方とも新技術らしくて、凄い高価らしいんだけど。


で、ね。


早朝から夕方まで、ダラダラと何をするでもなしに馬車に居るとね……暇なんだ。それはそれは暇なんだ。


楽器の練習をしようにも、シスター・ライザが熟睡してるから申し訳ないし。つーか、シスターは寝過ぎじゃね? 放っておくと、起きるのはご飯時だけなんですけど。


まぁ、ともかく。

暇に飽かして、私たちはボソボソとお話をずーーーーーとしてた。


おかげで、サシャとロッカの事情がよくわかった。


サシャは侯爵家の出なんだけど、実家は多くの貴族がそうであるように投資で失敗して貧乏らしい。けど、侯爵家でしょ? 体面を保たないといけないらしくて、使用人も減らせないし、そうそう生活も変えられない。そこで普段は成り上がり者とけなしている商人からお金を借りて暮らしているらしい。


「それって、借金だよね?」


ええ、とサシャは恥ずかし気にうなずいた。


それなのに、実家は借金が膨らむのを頓着しないでドシドシ使っているとか。そういえば、サシャの取り巻きだって、彼女がお金を出して飲み食いしてるもんね。


「商人の娘として言わせてもらうけど、それで平気なの?」


平気らしい。何故なら。


「借金のカタはわたくしだから」


何と言っていいか。言葉を失ったね。


大商人のご当主様に見染められたらしい。ちなみに相手は40代で、当然だけど妻も子供だっている。

要するに、サシャは囲い者というわけだ。


「わたくしが修道院に入れられたのは、逃げ出さないように。それと、男遊びをしないようにってことかしら」


ふふ、とサシャは笑った。


「きっと辺境の修道院は厳しくて、敷地の外に出歩くこともできないと思ったんでしょうね。でも、わたくしはアソコで恋をすることができた」


満足だわ。


サシャがふんわりと笑う。


私とロッカは黙って、サシャを抱きしめた。


あの気の強いサシャが少しだけ泣いていたけど、私もロッカも慰めなかった。ううん、慰められなかった。何を言ったところで、表面的なものにしかならないって思ったから。


ロッカはといえば、こちらも修道院に入ったのに理由があった。


「そりゃあ、人脈を作りたかったってのもあるけどね。実はあたし、パパとママとも血がつながってないんだよね」


アッケラカンと言われて、私とサシャは「へ?」という顔をしてしまった。


ロッカが語ることによると、彼女は行き倒れた男の腕に抱かれていたらしい。


「その赤ン坊を拾ったのがパパとママだったのよ」


当時のフェクターさんは魔獣の森のほとりの砦なんていう辺境も辺境ではなく、ほどほど大きな街で商いをして、やっぱり成功していたんだって。

そんなフェクターさん夫婦が突然、子供を拾って、養子にすると言い出した。


「すると、どうなると思う?」


私もサシャも首をかしげる。


「てっきりパパの店を継げると思っていた親戚が騒ぎ出すのよ」


フェクターさん夫妻の年齢は、当時で30代。前世の医療技術があるならともかく、この世界の技術では、まず子供は難しい年齢だ。


「え? そうなると、フェクターさんの年齢って…」


「50歳に近いんじゃないかな? パパもママも本当の年齢を教えてくれないから。若作りで驚いたでしょ?」


驚きましたとも。てっきり30代の半ばぐらいだと思ってたよ。


「でね」


騒ぎ出した親戚は、ロッカをさらおうとしたんだって。

それが1度ならまだ見過ごせたけど、2度3度と続くうちに、フェクターさん夫妻は親戚を見限ったらしい。そして魔獣の森のほとりの砦という辺境にまで逃げた。でも、そこから商人としてイチから確立するには夫婦でそれこそ寝る暇もなく働かなくてはならない。とてもじゃないけど、ロッカの面倒は見ていられない。だからといって、ロッカを放っておいたら、いつ何時、親戚が遣って来てかどわかされないとも限らない。


「というわけで、あたしは8歳ぐらいだったかな。安全な修道院に隔離されたの」


ロッカのママが王都に進出しよとしているのも、親戚への牽制があるんだとか。お前らとはもう格が違うんだから、近づくなよ! ってことだね。


はてさて、サシャとロッカの事情を聞いてしまったからには、私だって話さないといけないわけで。


とりあえず、簡単にあの日のことを聞かせてあげたんだけど。


「なによそれ!」


「王子には憧れてましたのに幻滅ですわ!」


自分のことのように怒ってくれた。


なんだかさ、涙が出てしまった。あの時のことを思いだしてしまったから、というのもあるけど。それ以上に友達ができたんだなって実感できて、それが嬉しかったんだ。

もっとも、サシャに「よしよし」と頭を撫でられたのは気恥ずかしかったけどね。


サシャさん。孤児院で幼児を相手にし過ぎですよ!

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