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御者に襲われるとか、マジ?

ドナドナを元気いっぱいに歌っている、子牛ならぬ元公爵家令嬢のリリンシャールでっす。


え? テンションが高すぎ?

前回までの悲壮な感じはどうしたって?


そう言われましても。

正直、何時までもメソメソしてたって仕方ないっしょ。

ていうかね、テンションを無理にでも高めてないとやってられない、こっちの事情もあるんですわ。


懲罰室に入れられた翌日には、私は護送車という名のオンボロ馬車に連行されて屋敷を追い出された。


余りにも速やかな手際だけど、ミューゼの家からしたら私が居るだけで醜聞になるわけで、とっとと追い出したかったんだろうね。


歌っていると、舐めるような視線を感じる。

御者の脂っぽい親父が2人、私をジロジロ見ていた。


ちょっと、あんた等。ココが郊外の野っぱらだからって、余所見運転はしちゃダメでしょ。


そう、これがテンションを上げていないとやってられない理由のひとつだ。


私は逃げられないように荷台に設えられた仮説の小屋に押し込められているのだけど、当然、監視のために御者台からは覗き窓が切られているわけで、四六時中、それこそトイレ時でさえ鼻の下を伸ばした2人に見られているという状況なのだ。

しかも今日で5日目だよ!


私は14歳、花も恥じらう年齢なのに。

どんな羞恥プレイだよ!


いいや、そんなことはまだいい。

よくはないけど、一時のことだから我慢もできる。

前世でライブの時に緊張した時と同じだ。相手を人間だと思わなければいいのだ。芋だと思えばいいのだ。


けどねぇ。

これから行く先のことを考えると、どうしたって不安にならざるを得ないのよ。


それこそテンションを上げていないとやってられない。理由の、その2がこれだ。


私の行き先の修道院は、別名『令嬢殺し』と呼ばれている。


令嬢殺しについては、女の子の間でまことしやかに囁かれている噂があった。

曰く。極めつけの問題令嬢を収容するために建てられた、修道院とは名ばかりの牢獄。

曰く。魔獣の森のほとりに位置するため、行ったら最後、魔獣に食い殺される。

曰く。生まれのたっとい令嬢ほど、生活の落差に悲嘆して、1週間もせずに首をくくる羽目になる。


噂に聞いていた時は、ただのオカルトというか怪談だったのだけど。

まさか、その令嬢殺しに送られようとは。


御者に行き先を告げられた私の絶望は測り知れない。


だってこの世界、マジで魔獣がいるんだよ。

乙女ゲーのくせして、何で魔獣だよ!

もっとメルヘンに妖精とかでしょうが!


私は完璧な箱入り令嬢なのよ。前世でも都会っ子だったし、魚すらさばいたことがない。

はっきり言って、令嬢殺しで生きていける自信がないんですが…。


なんて不安を忘れるために歌うのでッす!


悪役令嬢、乗ぉせて~

深夜だった。


私は御者たちの声で目を覚ました。


「お前さ、あの小娘をこのまま素直に送るつもりなのかよ」


「あ~ん? それが仕事だろうが」


「そうだよな、送るのが仕事だよな。でもよ、その前に美味しい思いをしてもいいと思わねぇか?」


「何が言いたいんだよ」


「だからよ。どーせ修道院送りになるんだから、その前に俺たちで味見しておかないか、と」


「…そんなことして、あの娘が告げ口したらどーすんだよ」


「告げ口なんてありえねーって。考えてもみろよ、相手はお嬢様だぜ? 俺たちにされてよ、そんなこと口に出せるか?」


「そう…かもしんねーな」


お酒に酔っているのか、結構な大声で悪だくみしている。


…ていうか! 貞操の危機じゃん!


前世ですらまだだったのに、生まれ変わってようやくの初めてがレイプとか!

そんなのイヤじゃん!


私は武器になりそうなものはないかと辺りを見回した。


何もない。

食器は既に片付けられてるし、本当に何もない。


ここで突然ですが運命の2択です。


①リリンシャールは深層の令嬢らしく隅で丸くなって恐怖に震えることにする。

②リリンシャールは出入り口の付近に隠れて、野郎どもがドアを開けたところで不意打ちをして逃げる。


ふむふむ。

これで①を選ぶお馬鹿さんがいるのだろうか?


私は堂々とドアの前に陣取った。


ガチャガチャと鍵を開ける音がする。


マジで来た!


心臓がドキドキする。手足が震える。

相手は大の男が2人。

それでも不意さえつければ、駆け足して逃げられるはず。


ゴトン、と重いドアが開けられる。


「りゃああああああああ!」


叫んで、私は脂下やにさがった顔つきの親父の顔面に膝をくれてやった。

真空飛び膝蹴り、ってやつだ。


ぎゃぼ、とか変な声を上げて親父が倒れる。


私はその勢いのままに荷台から飛び降りた。


もう1人の親父が、私を呆然と見ている。


今のうちだ!


私は全力で駆けた。


んだけど。

リリンシャール、足がおせぇええええ!


胸はナイナイペタンだし、平均よりも身長あるし、脚だって長いのに、なんだってこんなに駆け足が遅いんだ!


自分で自分にビックリだよ!


「待てや、こら!」


ほら、復活した親父が鼻血をまき散らしながら追っかけてくる。

月明かりに照らされて、さながらモンスターだもん、怖ああああああああ!


ぜッは、ぜッハ、喘ぎながら走る。

はやくも脇腹が苦しい。運動不足だよ、リリンシャール。


遂に、親父が私の後ろ襟をつかむ。

その瞬間だ!

私は両手を握り合わせるとクルリと体を回転させて、親父の私を掴む腕の肘に握った両拳を叩きつけてやった。


これぞ護身術『肘払い』。


前世で悪友兼親友に習ったのだ。というか習わされたのだ。

初めて感謝するよ、悪友兼親友!


肘を打たれたことによって、親父は私を掴んでいた手を放して倒れ込んだ。


ざまぁ! なんて思ってる余裕はない。

もう1人が追いかけてきてるのだから。


私は手近な木にスルスルと登った。

幼い頃は木登りをして、高いところから周囲を見渡すのが大好きだったリリンシャール。それも年頃になって止めさせられたけど、お転婆の由来は健在だ。


「おらぁ! 降りてこい!」


親父が2人してわめいているけど、降りるはずないでしょうが。


登ってこようとするたびに、松ぼっくりに似た木の実を投げつけてやる。

サルカニ合戦か! と心の中で突っ込む。


うん、大丈夫大丈夫。

突っ込めるだけの余裕があれば、まだ大丈夫。


心臓は相変わらずドコンドコン跳ねてるけど、手足はブルブルと震えているけど、窮地は脱したんだ。


でも、このままだとジリ貧なんだよなぁ。


どーしよう。


嗚咽交じりの溜め息をついた時だった。


おおおおォおーーーーーーン


不気味な声が轟いたのは。

キャラクターに動きがない! と友人に指摘されたので

アクション要素をいれてみました。

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