表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/101

復讐鬼:アゼイ・ワード③-1

忘れた頃にアゼイの復讐のお話です。

次で、アゼイの復讐はお終いです。

「よぉ」


俺が声をかけると、アンディの奴は目をこぼさんばかりにかッ開いて驚いていた。


「な、なんで?」


「はぁ? 何だよそれ、真っ先に喜んでくれると思ってたのによ」


「い、いや、まぁ。そうだな、その体、回復したんだな、よかったなアゼイ」


「おう! シスターに治癒の魔法を使ってもらってな。で、アンディは故郷に帰ってたんだってな。なんだって、あんな田舎に?」


アンディが目を逸らす。そして彼が何かを言いかけた時だった。


「アンディ!」


懐かしい声が耳に届いた。


「もぉ、なにやってるの! 荷物を下ろすの手伝ってよね!」


「エリカか?」


そこに居たのは知った女性だった。そう女性だ。俺が知っている姿から成長した、女になった初恋の人がいた。


「もしかしてアゼイ?」


故郷を出た時と変わらない人懐っこい笑顔を浮かべて、エリカが小走りに遣って来る。


「うわー! 久しぶり! アゼイってば、大きくなったわね!」


「あれから5年だからな、でかくもなる。エリカは、どうして?」


「え? 聞いてないの?」


エリカは非難するようにアンディの奴を見た。それから気を取り直すようにニッコリすると、アンディの腕をとって言ったのだ。


「あたしね、この人と結婚したのよ」


胸が苦しくなった。


「そういえば、結婚式にも来てくれなかったし、アンディも頑なにアゼイの話をしないし。喧嘩でもしてたんでしょ、あなた達」


エリカの声が遠い。


『あたしね、アゼイのことが好きよ』


故郷を出る日。俺に呟かれた声がよみがえる。


『待ってるから。ずっと』


涙を流していた少女の顔が思い出される。


その少女は。俺との別れを惜しんで、待っていると言っていた女は。

今。そんな昔のことは忘れたと言わんばかりに、憎い復讐対象者の男の胸に頬を寄せていた。


ああ。そういうことか。

アンディ。

お前は。

俺から、何もかもを奪うつもりだったんだな。


「まったくエリカには敵わないな。言うとおりだよ、アンディとは喧嘩してな。俺もココへの配属が決まったから仲直りしようと思って、待ってたんだ。それが、まさかエリカを嫁にして戻ってくるなんてな」


へへへ、とエリカが無邪気に笑う。


俺は何気ない調子で、居竦んでいるアンディの肩に腕を回して、耳元でささやいた。


「話がある。夜に練兵場で待っている」


それからな。と付け加えておく。


「先輩方は、もういないぞ」


ブルリ、とアンディが震えた。分かったのだろう。俺が何もかもを知っていると。そして、連中を潰したと。


奴から離れて、俺はエリカに「またな」と言って踵を返した。


「ちょっと、アゼイ!」


「あんだよ?」


呼び止められても、俺は振り返らなかった。この顔を見せられない…憎しみに凝り固まった顔はもう上辺だけでもヘラヘラと笑うことができなくなっていたからだ。


「まだ、あたし言われてないんですけど?」


「何をだよ?」


「おめでとう、て」


拳を痛いほどに握り込む。

俺の顔を見た兵士の連中がギョッとして、足早に逃げていく。


「結婚、おめでとさん」


俺は拳を無理やりにほどくと、手をヒラヒラさせて、その場を去った。






「すまん!」


誰もいない夜の練兵場で、アンディは俺に頭を下げた。


「それで…済むと思ってんのかよ?」


自分の声ながら猛獣が唸るような声だった。


「思ってはいない! 思ってはいないが、謝らないことには始まらないだろ」


「顔を上げろよ」


そう言っても、奴は顔をあげない。


「顔を上げろと言っている」


再度の促しで、奴はそろそろとコチラを伺うように顔を上げた。


そのツラを全力で殴る!


ぐえ、というカエルが潰れたよう声を漏らして、アンディは尻餅をついた。


「や、やめてくれ!」


頭を両腕でかばって、アンディが命乞いをする。


こいつは、ハッキリ言うと弱い。座学も格闘術も、剣でも槍でも、俺に勝ったことはない。むろん、俺が潰した4人にだって及びやしない。


それが分かっているのだろう。


だから、アンディは端から俺に頭を下げてきた。抵抗しようとはしなかった。


卑怯な奴だ!


「情けねぇ! 情けない奴だ! 昔のお前なら、食って掛かっただろうが!」


「俺はもう自分の器量をわきまえてる、アゼイにはどうしたって敵わない」


俺は泣き言をほざくアンディの胸倉をつかんで、無理矢理に立たせた。


「敵わないから、俺を事故でリタイアさせてってのか!」


「…そうさ」ポツリとアンディは言った。

「俺は…俺は、騎士養成校にはいってから、みじめだった。お前との実力は日に日に開いて、俺はアゼイの腰ぎんちゃく扱いだ。エリカだってそうさ、俺のほうが早くに知り合ってたんだ! なのに…なのに、お前が横から割って入って!」


ジロリとアンディが俺を見る。


その目を見て分かった。


「そうかよ。親友だと思っていたのは、俺だけだったってわけだ」


俺はアンディの奴を放り棄てた。


もう復讐心もなくなった。


グスグスと嗚咽する声が聞こえる。


「復讐する気にもなりやしねぇ。あばよ」


俺は練兵場を後にした。


「糞ったれが…」






この時。俺は完全に油断していた。

アンディの心は折れたと思っていたのだ。


だが。


奴は全てを知っている俺を生かしておこうとは思わなかったらしい。


事件は、魔獣の間引きで森にはいった帰りで起きたんだ。

とにかく早く書こう!

ということで焼く2時間で書いてみました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ