出来上がった宣伝歌と怪奇現象とか、マジ?
短いです。
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ふぁ!? 400ポイントを超えました!
ポイントの増減だけで頑張っているわけではありませんが、それでも嬉しい!
ここまでお付き合いしてくださっている方には、感謝しかありません。
ありがとうございます、本当にありがとう。
どーしても宣伝歌が出来上がらない。
自分で言ったおいてなんだけどさ『分かりやすい歌詞』で『耳に残るテンポ』なんて無理じゃね?
小林〇聖じゃないんだから。
え? 無理ならパクればいいって?
前世のドンキ・ホ〇テやヨドバシ〇メラの歌をちょいと拝借して歌詞を変えればいいって?
それは……できない! できません!
前世では場末のライブハウスで演じてたけど、たまーに耳にしてしまうんだ。
メジャーな連中に、曲をパクられた。って話を。
実際、あるんだよね。そーいうの。
悔しそうだったよ。せっかく苦心惨憺して作り上げた曲を、盗られちゃうんだもん。
しかも、今度は知名度の大きさからパクったって逆に糾弾されるんだから。
ああいうのを見てしまうとね、ド〇キやヨ〇バシがいくら前世の曲で影響がないとはいえ、パクるのは自分的に許されないんだよ。
ん? ピーラーとかパクったのに今更だって?
…………。
わ、私がこだわりあるのは、音楽だけだし…。
そ、それにさ。デビュー曲なんだもん。自分の手で作詞・作曲したいじゃん。
うーん、う~ん。悩む。
でも思い浮かばない。煮詰まってる感じだ。
だから、こんな時は己を開放してしまおうと、サシャに付いていって孤児院に出向いた。
泥だらけになって子供たちと遊ぶ。
でも、ちょっとばかし羽目を外し過ぎた。おかげでシスター・ライザに雷を落とされてしまった。
グーグーなるお腹をさすって、修道院へと戻って夕飯だ。
それから礼拝堂で晩のお勤めをする。
ここで私は力尽きた。
満足したお腹に、耳に心地いい音楽。
寝るな、というほうが無理でしょ?
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「リリン、起きなさいよ」
ほっぺたをモニュモニュされている感触と、サシャの声とで起こされた。
でも、おかしい。
サシャはこんなフランクなことしない。
そう思いながら目を開けると、やっぱりだ。ほっぺたを揉んでいるのはロッカだった。サシャは私の隣りで、呆れたような顔をして、声だけをかけている。
「おひひゃきゃりゃ、ひゃめひぇ」
「何言ってるのか、分からな~い」
「おひひゃんれ、ひゃめてきゅりゃしゃい」
「人類の言葉でお願いします」
「ひょぺひゃがとりぇちゃう」
ヒャッヒャッヒャ、とロッカはご満悦だけど、まじでほっぺたが取れちゃう。
「あのね、わたくしはもう部屋に帰りたいんですけど」
サシャが言ってくれて、ロッカはようやく揉み揉みの刑をやめてくれた。
てゆーか。
真面目ちゃんの仮面をかぶっているロッカが、こんな悪ふざけをするってことは、残っているのは私たちだけなんだろう。
そう思って周りに目をやれば、やっぱり居残っているのは私たちだけだ。
「熟睡しちゃった」
「ヨダレ」
とサシャがハンカチで私の口元を拭いてくれる。
「ほんと、サシャは好い嫁やで!」
「誰が嫁なのよ。ところで、院長とかシスターがみんな睨んでたから。明日になれば、お説教は間違いないわよ」
「マジか…」
「ねぇ、リリン? 期限まであと3日なんだけどグリングランデ商会の宣伝歌はつくってくれた?」
ロッカが笑顔なんだけど、ちっとも笑ってない目で訊いてくる。
ふふ…。ふふふノふ。
「よくぞ訊いてくれました。出来ましたとも!」
夢の中でね、とまでは口に出さない。
いえいえ、本当に夢の中で編み出したから。四六時中、宣伝歌のことを考えていたからね。遂に夢で練りに練っていた歌が結実したというか。
こういうことって結構あるんだよ、いやマジで。
他の人は知らんけど。
「さっすが、リリン!」
言いながらロッカが再びほっぺたに手を伸ばすもんだから、咄嗟に広げられた手の平に手の平を重ねた。
お? こうなって初めて分かったけど、ロッカの手はちんまい。いかにも女の子の手って感じだ。
私の指が長いばかりで骨ばった手とは違う。
思わず指を絡めてしまう。
すると、何故だかロッカがうろたえている。
「ん~」
ジッと彼女の赤くなった顔を見る。
「天然ジゴロ」
ボソリとサシャが呟く。
ジゴロ、て。サシャも幼児ジャックに下町に連れ出されるようになって、だいぶん悪い言葉をおぼえたわね。
というか。そっか、ロッカは恋人握りに照れてるわけだ。
愛いムスメじゃの~。
ここで私は茶目っ気をだした。
「ふんふふふ~」とさっき出来上がったばかりの『グリングランデ商会の歌(仮)』を口遊みながら立ち上がって、ロッカを連れて通路でクルクルと踊る。
久しぶりに踊ったけど、意外と踊れる。体がおぼえてるのかな? まぁ、王妃教育で徹底的にリリンシャールはしごかれてたしね。
興にのってクルリンクルリンとロッカを回していると、ふと視線に入ったイジリス教のシンボルがぼんやりと光って…あれ? その光がな~んとなく強くなっているような?
これは不味いですぞ。聖女呼ばわりされる切っ掛けになった時のことが思い出される。アゼイが言っていた。私のヘアピンが輝いてからとんでも現象が発生したと。
「それぐらいにしてあげなさいな。ロッカが目を回してるわよ」
サシャが冷めた目で注意する。あれまぁ。ロッカにばかり構っていたから拗ねてしまったようだ。
ともあれ。さすが嫁! 心のなかで賛辞を送りつつ、如何にも注意されたから踊るのをやめましたという風を装ってロッカを開放して席に座らせた。
幸いなことに、2人ともシンボルの変化には気づいてない。
つーか。私も知んないから! なんで光った!? 関係ない、私は絶対に関係ないぞ!
「今のが考えていた宣伝歌なのかしら?」
サシャが訊いてくるから、内心の動揺を押し隠して、私は逆に訊き返した。
「そ。サシャ的に聴いててどうだった?」
「如何にも浮ついた感じだったけど、小さな子が喜びそうなテンポだったわね」
「よかった、よかったよ~」とロッカが私の腰にしがみつく。
前世でもいたけど、この娘はひっつき虫さんだ。
「なら、明後日。パパに暇をもらって聴いてもらうけど、いい?」
「明後日か。なら、それまでに3人で上手に歌えるように練習しておこうね」
この私の発言に、サシャとロッカは非常に甚だしくおびただしく嫌そうな顔をした。
ちらっ、とイジリス教のシンボルに目をやる。
よかった。いつも通り薄ぼんやりとだけ光ってる。
でも、だ。
「練習するのは礼拝堂以外にしようね」
私は予防線をはったのだった。
……神様さ、これ以上、私に余計な重荷を背負わせないでよね!