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いきなり窮地とか、マジ?

やったー! 300ポイントを超えました!

嬉しすぎて、今日はこれからシュークリームとイチゴオレを買ってきて甘味パーティーです!


本当にココまで読んでくださって、ありがとうございます!

めっちゃ、うれしい!

白狼、伝説、魔獣の森を統べる王。


そ~んな設定、あの乙女ゲーにあったんだろうか?


私は手のなかでヘアピンをもてあそびながら考える。


乙女ゲーだと出なかったんだけど。それともレア・キャラというやつで、RPGモードのときにすんごい低確率でエンカウンとしたりしたんだろうか?


改めて、ヘアピンに目を落とす。


このヘアピンもな~。私は気づいてしまったのだ。この細工も何もされてない白っぽい地味なヘアピンが、実は…修道院のシンボルと同じ材質らしいということに。暗いとこだとボンヤリ光ってるし。


ど~ゆ~こと? これって今は滅んだドワーフ族が残した代物じゃないの?


「う~~~~~」


考えれば考えるほどに、知恵熱で頭がカッカッしてくる。


「もーやめた! やめやめ!」


どうせ考えたところで答えなんて出ないんだし、私はこの世界の本筋からドロップアウトした身。シンプルに考えよう。防犯ブザーを手にいれた、それぐらいの心持ちでいこう。うん、そうしよう。


思い定めたところで、目の前に座るシスター・ライザと目が合った。


「あの…なんですか?」


「リリンシャールは、もう少し悩んだほうが良いと思いますよ? あなたはお気楽すぎますから」


「そんなこと…」


「ありますよね?」


「…………」


そういえば、前世でも親友から同じようなことを言われてたような…。『お気楽も過ぎると能天気、能天気もすぎると大物に見えてくるから不思議だわな』と。


私はシスター・ライザから目を逸らして、ヘアピンを髪にとめた。


「そのヘアピン…何処かで似たような色の物を見たような」


「気のせいじゃないですか?」


「気のせい…ですかね?」


強引に誤魔化す。けど、まさか白狼から貰ちゃったとは言えないしね。


ゴトン、と馬車が止まった。


遂に初めの野営ポイントに戻ってきたのだ。


思わず、シスター・ライザと笑顔を交わし合う。


だって、明日の今の時間には砦に戻れてるんだよ!


私、決めてるんだ。砦に戻ったら、イの一番にお風呂に入るんだ!






兵士さん達の顔色は明るい。みんなでワイワイしながら食事をしている。


家族が待っている人もいれば、恋人が待っている人もいる。お酒を浴びるほど飲むぞと息巻く人もいれば、ベッドで好きなだけ寝るんだと言う人もいる。


みんな浮かれていた。私も、シスター・ライザも。

そして、アゼイですらも油断していた。


だから気づくのが遅れたのだ。


うぉおおおおおおおん!


ハッ、としてみんながお喋りをやめる。


魔獣の興奮した吠声が近づいて来ていた。

それも1匹や2匹という数じゃない。まるで、この野営ポイントを取り囲む勢いで四方八方から恐ろし気な声が殺到してきていた。


「総員、戦闘準備!」


アゼイの声で、時が動き始めた。


兵士さんが大急ぎで蒸気ライフルの準備をして、隊のなかでも一番身軽な兵士さんが幌馬車の屋根にのぼって、周囲を確認する。


「魔獣が…! 魔獣が、四方八方から来ています! 数は少なくとも6以上!」


りん陣形を敷け!」


アゼイの指示で、兵士さんが馬車を囲むように位置取りする。


馬車に積まれた蒸気機関が最大稼働を始めた。


その機械の騒音にまけないぐらいの獣声が大気を震わせている。


私とシスター・ライザは、馬車の屋根にのぼらされた。蒸気機関が全力で稼働をすると、馬車のなかは熱がこもって、とてもじゃないけど居られないのだ。


「各員、目視で魔獣を確認次第、撃って良し!」


ドン! と蒸気ライフル特有の射撃音がして、戦いが始まった。


高いところから見ていると、よくわかる。あっちからも、こっちからも、波のように止めどなく魔獣が次々と迫ってきていた。


今のところは、どうにか魔獣を食い止めている。


『大繁盛』だったおかげで、兵士さんのライフルの扱いが格段に上達しているのが大きい。


でも本当に、どうにか、薄皮一枚、といった感じだ。


「数が多すぎる!」


「森津波の前兆か!」


兵士さんから悲鳴が上がる。


いいや、実際に悲鳴が上がった。馬だ、アゼイの乗って来ていた馬が襲われたんだ。


あっという間に馬に魔獣がたかって咀嚼音が聞こえる。


だんだんと追い詰められている。


弾丸だって無限じゃない。カートリッジを入れ替えないと、15発で撃ち止めになってしまう。


私は頭のヘアピンに手をやった。


使うなら、今しかない!


ヘアピンを両手で握りしめて、願う。白狼! 助けて! 私たちを守って!


おおおおーーーん


声がした。魔獣よりも、よっぽど朗々とした吠声。

間髪置かずに、森から白い輝きが4つ、飛び出してきた。小さかったはずの3匹の赤ン坊が、母親の半分ぐらいの大きさにまで成長している。


「白狼か!」


叫んで、アゼイが私を振り仰ぐ。


4匹は縦横無尽に駆け巡って、魔獣をほふり始めた。


「あれは俺たちの味方だ! 攻撃するな! 今のうちに弾丸の補充を急げ!」


「アゼイ!」


私は幌馬車のうえから飛び降りた。


リリンシャール! とシスター・ライザの焦った声が頭上から聞こえるけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


私はアゼイに駆け寄った。


「あれは、お前が?」


私はうなずくだけで答えとして


「まずいよ、アゼイ! 魔獣の数が多すぎる、まだまだ森の奥から来てる!」


「そんなにか!」


「上から見てると分かるけど、波みたいに。今は森の浅いところのグァバみたいな弱いのしか来てないけど、そのうち奥にいるヤバイのも来ちゃうかも」


アゼイは私の言葉を咀嚼そしゃくするみたいに2拍ほど考えてから


「撤退だ! みんな、撤退するぞ!」


即決して、動き出した。手早く指示して、隊をふたつの班に分けると、1班を馬車の守りに、2班には馬車から蒸気機関をおろすように言った。


この馬車の蒸気機関はメンテナンスを考慮して、簡単に荷台から下ろせるようになっているらしく、蒸気機関そのものが車輪のついた台車にのっている。と、私は兵士さんの1人から聞いていた。


とはいえ、今は全力で稼働している最中だ。蒸気機関は高熱を発している。


馬車から下ろすのには時間がかかった。


その間に、兵士さんにも怪我人がでている。

いよいよ、白狼だけでは抑えきれないほどに魔獣が出てきてしまったのだ。

その白狼も、白ではなく真っ赤になっている。返り血なのか、それとも怪我をしてしまったのか…。

私はシスター・ライザに連れ戻された馬車のうえで、それを見ているしかなかった。


でも……間に合った。


蒸気機関は馬車から下ろされた。下ろした兵士さんのなかには、無理をしたせいで火傷をしている人もいる。


「みんな! 馬車に乗り込め!」


兵士さんがこんな時でも整然と馬車に乗り込んで、最後にアゼイが巨馬のお尻をひっぱ叩くと、動き出した馬車に身軽に乗り込んだ。


私は再度、ヘアピンを握りしめた。


白狼たちも逃げて! もういいから、逃げて!


気持ちが届いたらしく、白狼たちも野営ポイントから駆けて行く。


蒸気機関をなくした馬車は巨馬にとっては軽いらしく、ぐんぐんと速度があがる。

このままでいけば、追いすがる魔獣を引き離すことはできるはず。


「リリンシャール! 怪我人の治療にいきますよ!」


シスター・ライザが、気の抜けそうになっていた私に呼びかける。


そうだ! 私の戦いは今からなのだ。


私はシスターに続いて、幌馬車のなかへと戻った。


森に夕闇が迫っていた。

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