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アッチラの街の孤児とか、マジ?

ちょっと長いです。2日ぶりなので!

明日の投稿は何時も通り短くなると思います。

明らかに年齢の若い私たちは子供たちから圧倒的な視線を集めた。


「あれ、誰のママなんだよ?」


な~んて声が聞こえてくる。

ひそひそ声というよりも、周囲に聞かせて答えが返ってくるのを期待するような声の大きさだ。


そんな答え合わせに、でもジャックが反応することはなかった。


恥ずかしがってるのかな?


パッと見て、クラスの平均年齢は12歳前後。さすがAクラスとだけあって、10歳になるや否や働きに出るような家の子はいないみたいだ。みんなお金持ちっぽい服装をしてる。むしろジャックがカジュル過ぎて浮いている。というか年齢からして浮いてるんだけどね。


パンパン! と男先生が手を打って生徒をしずめる。


「授業をはじめますよ。みなさん、普段通りにすること。いつもの授業態度を見てもらうことが大切なんですからね」


そう前置きをして始まったのは数学の授業だった。

……算数じゃない。

数学だ!


前世の私は、いわゆる落ちこぼれだった。

正直、小学校6年生の算数でさえ微妙にお手上げだ。

公爵令嬢として習ったのも算数まで。女なのだから余計な知識は要らない、という考え方からだ。


最早、先生の言っている言葉がチンプンカンプン。


サシャは、と見れば。澄まし顔をしていなさる。長い付き合いだから分かる。あの顔は、私と同じでチンプンカンプンだから考えるのを辞めて、ジャックにのみ興味の全てを注いでいる顔つきだ。


そしてロッカは。時折、うなずいてる。理解してるみたいだ。やっぱロッカってば賢いんだなぁ。


いやいや、違った、驚くのはそこじゃない!

ジャックは7歳でしょう? マジ? マジで天才児だったの?


けど、数学はまだまだ早かったみたい。

先生が黒板に設問を板書しては、生徒が挙手して、そのうちの誰かに答えさせているのだけれど、ジャックは授業の間、ずーと手を上げなかった。


けど…最後の最後。

授業の時間的に考えて最後の設問という段になった時だった。


先生が板書を終えて振り返ったけど、今度は誰も挙手してなかった。


よっぽど難しい設問なんだろうなぁ。なんて思っていると、ジャックがチラリとこっちを振り向いた。


そろそろと手が上がる。


ニョッキリと上がったのはジャックの細っこい腕だった。


「では、ジャック君」


先生に名前を呼ばれて、ジャックが立ち上がって前に進み出る。


ジャックは背が低い。ので、先生が用意してくれた椅子にのぼって板書をした。


カッカッ、と小気味のいい音を立てさせて、ちょこっとも考え込むことなくスラスラと答えを黒板に書いてゆく。


「できました」


ジャックがこっちを振り向く。

少し緊張した顔をしてる。かわいいじゃん♪


「正解です、よくできましたね」


先生が言うと、クラスメイトから拍手が起きた。


おお! 愛されてるなぁジャック。

してみるとクラスのマスコット的な存在なんだろう。


そそくさとジャックが席に戻る。


「落ち着きなさいよ、サシャ」


ロッカが小声で、盛大に拍手をするジャック大好きを制する。

生徒やママン達からのほの温かい視線が半端ない。


カラーンカラーンと学校の鐘が鳴った。

授業の終わりだ。


でも授業参観はあと1時限ある。


お次は校庭で体育だ。


私たちが教室を出る際、ふとジャックを見たら、クラスメイトに囲まれていた。


どうやらイジメとかの心配はないみたいだ。

お母さん達がギスギスしてるから心配してたけど、なんといってもジャックは7歳。圧倒的に年下だから、イジメの対象にはならないんだろう。


そして体育。

体育はABCの3学年合同で行われる。


言ってみれば、時間の短い運動会みたいなものだ。


生徒たちは体操着になって校庭に出てきた。


まぁ、体操着なんていっても、男子は白いランニングシャツに紺色のジャージのズボンだし、女子は野暮ったい小豆色したジャージの上下だ。


というか! この世界にジャージあったんだ!

部屋着に超欲しい!


体育が始まった。


徒競走をするみたいだ。学年での分け方じゃなくて、年齢で走る組をつくってるんだと思うけど、なかなか好い勝負をしてる。


お母さんたちも若いから、けっこうな歓声をあげて応援してるし。


え? 私? 私もロッカも、サシャに全てを任せたよ。

さっきからジャックをすんごい声で応援してる。


おかげで、というか何というか。


ジャックは1位だった。


そのジャックをねぎらおうと、みんなで彼のところへ行く。


「ジャック、凄かったじゃん」


「速かったわね」


という私とロッカの言葉に照れた少年は



無言でサシャに抱き着かれて、大いに慌てた様子だった。


「や、やめてよ姉ちゃん、恥ずかしいよ」


だが、はがれない。粘着シートみたいに引っ付いてる。


私とロッカはやれやれと肩を竦めた。


と、そんな時だった。


10歳ぐらいの子たちがゴールに走り込んできた。


ぜぇぜぇ、と1着をとった少年が両ひざに手をついている。


そんな彼を、既に走り終わっていた子が2人がかりで小突いて倒したのを、私は見てしまった。


「いい気になンなよ、Bにも上がれない癖しやがって」


「身の程をわきまえろってんだ」


これは! イジメか!


「こらぁ!」


私はめちゃくちゃ低い声を意識して拳を振り上げた。


「うわ!」


とイジメッコどもが逃げてゆく。


その間にも、気の利くことで私のなかで定評のあるジャックが倒れた少年に手を差し出していた。


「大丈夫?」


「ああ、ジャックか」


身長差があるからか、少年はジャックの手を借りずに自分で立ち上がった。


「2人とも知り合いなの?」


ロッカが訊く。


「俺、孤児院に住んでるんです。すみません、もうジャックとは付き合いませんから」


なんて卑屈さ全開で答えたのは少年だ。


「いやいや、別に付き合っててもかまわないから。どうして、そんなこと言うかな?」


「だって、俺。孤児ですよ?」


訊けば。アッチラの街での孤児は差別の対象らしい。食うに困って村から来た連中が、育てられずに捨てた赤ン坊や子供って認識らしい。そして、それは事実なんだそうな。


「砦の街は、明日は我が身の気持ちで孤児に対しての差別意識はなかったけど、ココまで来るとそういう気持ちもないだろうねぇ」


ロッカが教えてくれる。


「ボクはそれが気に食わないんだ!」


ジャックが拳を握って言う。


「同じ人間なのに、差別するなんて。それにアティは頭が良いんだ。本当ならBにだって上がれるのに、わざと昇級テストの時に答えを間違えてるんだ」


「何か理由がありますの?」


「金がないんだよ」


吐き捨てるようにアティ少年が言う。


「ん? それっておかしくない? 学校は無料のはずでしょ?」


「授業はね」


「他にも筆記用具や教科書が高いんだ。俺等は先輩の先輩から教科書を受け継いでるけど、それはCのだけで、新しくBのを買うような余裕はないんだよ」


ジャックとアティ少年の言葉に、なるほどねと私は得心した。


「それで、あんな憎まれ口を叩かれてたってわけだ」


「でも、食べさせてもらってるだけ幸せよね」


などと情のないことを言うのはロッカさんです。


「ちょ、ロッカ」


さすがに彼女の袖を引いて黙らせようとするけど


「砦の街の孤児たちは、毎日を食べるものにも事欠いてたわ。それに比べたら、この子達は幸せでしょうが?」


まぁ。それは…。


私が色々な副業を開発するまで、それはそれは砦の街の孤児たちはガリガリだった。明日は我が身といえども、無い袖は振れないわけで。とにかくお金がなかったのだ。

それに引き換え、アッチラの街の福祉は充実してる。それは孤児院だって例外じゃないだろう。だってアティ少年は血色もいいし、ジャージだってお古だろうと継ぎのないのを着てるもん。


「あんた…というか、あんた等さ。自分で稼ごうとした? 教科書を買うために知恵を絞った?」


ロッカに問い詰められて、アティ少年は顔を真っ赤にした。


「あんたに俺たちの何が分かるってんだ!」


その大声に先生や生徒やママさん達がコッチを向く。


「分かんないわね。というか、そんな通り一遍のことしか言えないようなあんたの気持ち何て分かろうとも思わないわ」


おおう! ロッカってば、何でそんなに攻撃的なの? 虫の居所悪いの?


更に言い合おうとしていたロッカとアティ少年だけど、先生が遣って来たことで無効試合になった。


そのまま先生に連行されて、私たちは学校の外に追い返される。


「ロッカァ…」


サシャが眉毛を逆立てて迫る。


「ごめん、ごめんってば」


そんなサシャにかなうはずもなく、ロッカが逃げ腰になる。


「で? なして、あそこまで喧嘩腰になっちゃったわけ?」


私が尋ねると、ロッカはチラリと私を見てから答えた。


「昔のさ、あたしを見てるみたいで腹が立ったのよ。リリンと会う前の、何もしてない癖して何もできないと思い込んでいたあたしを見てるみたいでさ、ムカついちゃったのよ」


う~ん? 


「なにそれ?」


「分からないでしょうよ、リリンには。けど、サシャなら通じたでしょ?」


ふ、とサシャが苦笑した。


「通じましたわ、痛いくらいに」


「な~に、2人して? もしかして、私、馬鹿にされてんの?」


アハハ、とロッカとサシャが同時に笑った。


やっぱりだ、馬鹿にしてたんだ。ムスリとなってしまう。


「違うから、馬鹿になんかしてないって」


「逆ですわよ」


「逆って何なのさ?」


訊いても、2人はクスクス笑いをして答えてくれない。


「もういい!」


私はソッポを向いた。


そんなヘソを曲げた私を、両隣からサシャとロッカがご機嫌取りをしてくれる。


うんうん、よしよし、そうまで言われたら仕方ない。


というわけで、私は3分もしないうちに機嫌を直したのだ。


「で、リリン? なんかお金儲けの方法ないかしら?」


「へ?」


いきなりのロッカからのねじ込みである。


「へ? じゃないでしょ? 孤児たちが教科書を買えるようにしないと。期限は夕飯時まで。じゃないと、あたしがジャックと仲直りできないからさ」


「へ?」


思わず、サシャに助けを求めて視線を向けるけど。


「頑張ってくださいましね」


だってさ。


「へ?」


「とにかくアイデアお願いね。あたしはそれを実行に移す係だから」


なんだか知らないうちに、大変なことになったぞ!

ジャックの天才がとどまるところを知らない。

ちょっと盛り過ぎた感が否めません。

年齢の設定を間違えたかなぁ……せめて12歳ぐらいにしとけばよかったか。

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