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2-5話

GM: では、傷ついたコボルトは息も絶え絶えです。傷口にはグールの爪が刺さり、その不潔な毒が体内を駆け巡っている事でしょう。

サンドラ: あ、『アンチドーテポーション(解毒薬)』は買ってないんだよね。一応、応急処置とかできます。

GM: 問題ありません。応急処置をすることで、いくらか状況はよくなったようです。コボルトは気が付きますが、すぐ悔しそうにつぶやく。

コボルト: 「何てことだ、こんな時に麻痺毒を負うだなんて。これじゃ明日は…」

GM: しかし、君たちを見て鼻をピスピス鳴らすと、ハッとしたようにディートを見ます。

ディート: オレ?

コボルト: 「ああ、よかった。まだ、希望はある」

GM: はい。そして、震える手で懐から布でくるんだ何かを差し出す。

コボルト: 「君にこれを託す。明日、日の沈むころ、東地区の旧アーリントン館だ。これを見せれば君を入れてくれるだろう。オレ達にとっても、貴重な…夜に…」

GM: と言うと、気を失います。その包みが手から落ち、地面に落ちます。ほどけた布から、黒い木の皮が零れ落ちます。

サンドラ: とりあえず拾っておきますか。その皮って何かわかりますか?

GM: はい。彼の行動を見ていたので、すぐにわかりますが、グールに襲われる前に、ガリガリと削り取っていた木の表面です。見ると、削り取る為に使用していた小さなナイフも見つかります。

サンドラ: それが何かの毒になるとかそういったことは分かりますか?

GM: …レンジャー技能かせージ技能で判定ですね。

サンドラ: 「8」で『13』

カンモン: 「4」で『9』

GM: 二人とも、そういった話を聞いたことはありませんね。

トロント: とりあえず、調べてみるしかないね。このコボルトはどうする?

GM: 一応、応急手当てをしたからわかるけど、命に別状はありません。二、三日休めばよくなると思います。とはいえ、先ほども話しましたが夜になると帝都の門は締まり、中に入る事はできません。郊外でキャンプを張って朝まで待つしかないようです。

カンモン: まあ、帝都の門の外ならそれほどひどい事にはならないだろう。


GM: では、一晩明けました。城門も開き交易商人たちも帝都へと入っていきます。

トロント: とりあえず、コボルトを休ませるか。場所はどうしよう。

GM: 当然ですが、帝都には宿泊施設があります。ランクも様々です。

ディート: 冒険者の宿でいいんじゃないか?

GM: まあ、事情を話してお金を払えば、止めるくらいはしてくれます。まあ怪我人なので個室になるので割高になりますが…50ガメルも払えばいいでしょう。

トロント: それじゃ、お金を払って…食事も頼むことにして+10ガメルほど。

ルーサー: 「おう。任せておけ」

サンドラ: ついでに、この木の皮について、調べられる人っているか聞いてみるわ。

ルーサー: 「まあ、無難なところで薬草店かね?毒なら盗賊ギルドってのもアリかもしないな。あとは、普通に学者先生かね?帝都には風変わりな学者がごろごろしているから、中にはそういった学者もいると思うぞ」

GM: とはいえ、ルーサーも植物学者のツテはありません。なじみの薬草店位なら教えてくれます。

サンドラ: では、薬草店に行きます。


GM: はいはい。ルーサーの紹介する薬草店は、サンドラもなじみのある薬草店です。エルフが店員をしていて、サンドラとも面識があり、軽く挨拶してくれる。

エルフの店員: 「いらっしゃい。薬草をお求めで?」

サンドラ: 「いや、そうじゃないのよ。ちょっと見てもらいたいものがあってねぇ」と言って、例の包みを開ける。

GM: エルフの店員は、中身を調べて首をひねる。一応、これが何かサンドラに聞きますが正直に答えますか?

サンドラ: もちろん。帝都の外にある古い墓地跡に生えていた木から採取したものらしいと伝えます。

GM: (サイコロを振る)

エルフの店員: 「ゼデロットの木かな?」

サンドラ: これはどういうものなんです?

エルフの店員: 「どういうって…普通の木ですよ。荒野のような閑散としたところに生える場合が多いかな。逆に森にはあまり生えていない」

サンドラ: 毒とかそういった効能は?

エルフの店員: 「効能?聞いたことはないですね。花や実も特に聞きませんし。木の皮ですが、食べた所で腹を壊すのが関の山でしょう」

サンドラ: 毒じゃないのかね?

トロント: 何かの儀式の道具?香木とか?

ディート: じゃあ、カモフラージュ用に似たような木の皮とかないか聞いてみよう。

サンドラ: ああ、もしもの時のすり替えようだね。

GM: では、20ガメルほどで、それっぽい薬草を用意してくれます。


GM: あ、一応。仕事の内容は「摘発の助力」までなので、衛兵のエリク君にも報告をお願いしますね。

トロント: はいはい。じゃあ、詰所に言ってエリク君に報告しよう。

GM: では、エリク君は君たちの連絡を受けると、大いに喜びます。集会場である東地区の旧アーリントン館もすぐに場所を特定してくれました

エリク: 「こちらでも衛兵の助力を要請します。夕方ごろ、アーリントン館の近くで落ちあいましょう」

カンモン: アーリントン館ってどんなところ?

GM: はい。エリク君が教えてくれますが、没落した貴族の別邸だったらしいです。没落した時に放棄され、持ち主がわからなくなってそのまま放置されています。

カンモン: 勝手に入るとまずい?

GM: 帝都の東地区はスラム街に近く、治安も管理もあまり行き届いていません。確かに、褒められたことではありませんが、持ち主がいないという事は、誰が文句を言うのか責任が曖昧なところでもあります。まあ、捕まったとしても軽犯罪。せいぜい追い出されて終了ですね。罰金を取る価値すらないような罪です。

ディート: 罰金をとる価値すらないというのもすごいな。

GM: お金のない浮浪者が空き家に住み着いて、その罰金を取っていたら、それを回収する義務が生じるわけです。手間がひどい事になります。基本必要になったら追い出して終了です。

ディート: まあ、最悪強硬策も可能って事か。

GM: そうですね。


GM: では、準備は整いましたね。夕方になります。残念ながら、集合場所に来たのはエリク君一人だけです。

エリク: 「申し訳ありません。他の同僚たちは忙しい上に、準備できる時間が少なすぎて、助勢が得られませんでした」

ディート: そうなると、結社員全員をとらえるのは難しいな。向こうがどれだけいるかわからないけど。

エリク: 「はい。なので、敵の首領か、せめて組織の幹部を捕まえるだけでも構いません。ただ、敵の多くはコボルトの様です。驚かせたり敵の首領を捕まえれば、戦意を失うでしょう」

サンドラ: ということは、コボルト以外の無力化を狙えばいいのか。

エリク: 「そうなります。こちらにも衛兵としての権限があります。不慮の事故で殺したとしても、蛮族の仲間という事なら、皆さんに罪科が及ぶようなことにはなりません」

ディート: となると、強行突入するより、中に入って首領に近づく方がいいか。

トロント: 武器を持って入っても大丈夫なの?

GM: そこらへんはあまり気にしないで大丈夫です。治安の悪い場所ですので、護身用に武装している人は結構います。巨大な両手剣の『ドラゴンスレイヤー(Aランク武器)』みたいなのを持っているなら別ですが。

トロント: とりあえず、皮鎧のままで行くか。


GM: 扉をノックしてしばらくすると、一人の男が現れる。大柄な男だ。スキヘッドで太い腕を前で組んで君たちを威圧しているようだ。への字に結んだ口に、藪睨みの目で君たちを見下ろします。

ディート: とりあえず、包みを見せます。

GM: スキンヘッドの男は、その中身を見ると、君を得から下までじろじろ見ます。

スキンヘッドの男: 「新入りか。ベルティオ!バレンティノの代理だ」

GM: と、館の奥にどなる。するとすぐに、奥から一匹のコボルトが出てきて、君たちの顔を見て不審がる。

コボルト: 「えっと…バレンティノの代理の人ですよね?」

カンモン: だれだよ。バレンティノって?

サンドラ: あのコボルトの名前なんじゃない?

ディート: じゃあ、こいつがベルティオ?

GM: その言葉を聞くと、コボルトはうれしそうにうなずきます。

ベルティオ: 「はい。私がベルティオです。さあ、奥へ。早く準備をしないと」

GM: と、ディートの手を取ると、館の奥へ引っ張ります。館の奥は大きなホールになっており、そこでは十数人のコボルト、そして数人の人族らしい人影がいます。中央にはメラメラと炎を上げる台が置かれており、そこでは一人の高齢のコボルトが手に持ったフライパンに様々な粉末を投げ入れている。


老コボルト: 「踊れ食材たちよ!!刺激的に!軽やかに!!」


(一同爆笑)


※SW2.0の世界では、コボルトの作る多彩なソースによる料理『コボルト料理』が普及している。


カンモン: 畜生。なんだかとっても畜生(笑)

ディート: まじめに考えていた心配事が、問答無用で無意味と分かった時の疲労感ってキッツイな(笑)

ベルティオ: 「さあ、その材料を細かく粉末状にしてソースに深みを出すんだ」

トロント: そういう事か。

カンモン: 調味料なんだ。毒じゃないんだ。

GM: はい。毒ではありません。

サンドラ: レンジャー技能とか、セージ技能ではわからない者なの?

GM: 君たちが調べたのは「毒(薬)ではないか?」です。これには毒の効果がない以上、毒かどうか調べてもわかりません。宝箱に『聞き耳』をしても、罠がわからないのと一緒です(笑)

サンドラ: 薬屋がわからないのもそれが理由ね。

GM: 薬屋さんは薬屋さん。食材店ではありませんからね。

トロント: シャドウファングってなにさ!?

ベルティオ: 「ソースによる味付けの陰にピリリと調味料の牙。すなわち、コボルト料理秘密研究結社『シャドウファング』!」

GM: 嘘は言っていませんよ。コボルト料理なんだから、その大多数はコボルトなわけです。そして、コボルトは間違いなく蛮族です。タレコミ内容も、依頼内容にも嘘はありません。

ディート: 自信満々に言うな!!

GM: 勘違いしているけど、ディートを指名したのも“穢れ”のせいではなく、ディートが「コボルト料理人」である事を見抜いたからです。何の問題もありません。

ディート: だから自信満々に言うなぁぁぁ!!


(一同笑)


トロント: ヨハン君に聞いてみるけど、これって逮捕できるの?

GM: 衛兵のヨハン君も首をひねって悩んでいます。

ヨハン: 「う~ん。料理を作っているだけだから犯罪性は皆無なんですけど、通報通り蛮族の集団であるという意味では、正しいといえば正しいんですよね。でも、コボルトの料理人ですからねぇ…」

トロント: 法の隙を突くなんて…『シャドウファング』。なんて恐ろしい組織なんだ(笑)

カンモン: 始末に悪いな。怪しいけど無害な秘密組織って(笑)

GM: さて、君たちはとりあえず静観していると、コボルト料理人の料理はどんどんと進んでいく、周囲ではその料理の出来栄えに大興奮だ。料理のいい匂いがホールに充満し、食欲が刺激される。

ディート: まあ、オレ個人としては料理人としての腕を上げるのには問題ないのか…


GM: しかし彼らの料理は、突如轟音と共に中断させられる。同時に、館が激しく揺れると、壁の一部が倒壊。なにか大きな物が壁を破壊して突入してきた。

謎の声: 「はーっはっはっは!」

GM: 壁を突き破って突入してきた荷車のような物体の上に、高笑いと共に3つの人影が現れる。3人の人型の生き物だ。身長は150cmほどのがっしりした体系で、筋肉質だ。手に鍋や皮袋を持っている。顔には目の部分に穴の開いたズタ袋をかぶっているので、表情は分からない。ただ、ズタ袋の下から豊かなあごひげが伸びている。

カンモン: …それってドワーフじゃない?


※SW2.0においてドワーフは火属性に完全耐性を持つ種族である。外見や能力はオーソドックスなドワーフである。


GM: ズタ袋をかぶっているのでわからないね。彼らは部屋にいる者達を見下ろすと高らかに笑います。

ズタ袋の男: 「はーっはっはっは!醜悪な蛮族料理など駆逐してくれるわ。教えてやろう、真の料理とは、火力でもって作られる『ドワーフ料理』なのだという事を!!」


(一同大爆笑)


※SW2.0の世界では、ソースを生かしたコボルト料理と、火力で勝負のドワーフ料理とはライバル関係である。これはルールブックにも記載されている事である。(自己弁護)


コボルト結社員: 「やつらはFFFの構成員だ!」

トロント: FFF?

ディート: KKKみたいなものか?

コボルト結社員: 「『フライパン フレンドリィ ファイア』というドワーフ料理を研究する秘密結社です。アイツ等、いつも俺たちに嫌がらせを…くそう。この集会まで邪魔するのか!?」

GM: と、悔しそうに拳を握ります。…一応、コボルト達をのラードリシアン君が「敵がいる」って伏線は出しよ。

ディート: わかるかそんなもん(笑)

サンドラ: それって、アタシ等の事じゃないのかい(笑)

GM: さて、FFF結社員は手慣れたように荷車を操作して巨大な携帯窯に変形させると、素早く固形燃料を入れる。すると、皮袋を持ったFFF結社員がそこに袋の中の油のような液体をぶちまける。

トロント: “油のようなもの”って油なんですね?

GM: はい。油です(断言)。そして、その前で腕を組んでいた偉そうな結社員は、懐に手を突っ込む。

FFF幹部: 「見るがよい!大地に祝福された我らが料理を!!」

GM: 懐から取り出した手には、真っ赤な宝石が握られている。それを窯に向けると…

FFF幹部: 「<ティンダァァァァ!!>」

GM: 発火魔法により、勢いよく燃え上がる炎に、持っていたフライパンを置くと、そこに材料をぶち込んで料理を始める。窯でフライパンを振る幹部の周りを、2人の結社員がスキップしながらぐるぐるとまわり始める。


(一同笑)


ディート: なんだ、この混沌とした状況は(笑)

トロント: 邪教の儀式でも、もっと整然としていると思う(笑)

GM: 部屋を二分するように、シャドウファングも調理を続けますが、明らかにコボルト側は気圧されます。

カンモン: 当たり前だ(笑)

コボルト結社員: 「あんな火力を使われたら、部屋の室温が上がりすぎて、ソースの香りが飛んでしまう。このままじゃあ…」

ディート: どうする?ぶん殴って放り出してもいいと思うんだけど。

サンドラ: でも、これって殴りかかった方が犯罪じゃない?

トロント: ただ料理しているだけだかしね。正直法律的にはどうなの?

GM: まず帝都ですから、帝国民を傷付けたら当然犯罪です。何か、そうする正当な理由がないと罪に問われます。ヨハン君もいますしね。

トロント: 何か罪を犯していれば、合法的にぶん殴れるのか。

ディート: 改めて言葉にするとすごい内容だな(笑)


※GMとPCは「壁を破壊して入ってきたこと(器物損壊)」を忘れています。まあ、攻撃していい罪かといわれれば微妙です。


GM: FFFの料理もどんどん進む。周りで踊る結社員が、新しい材料を放り込むと、すかさずもう一人が油をさす。フライパンを揮うFFF幹部の手は、ますます冴えわたり、それに合わせて炎はどんどんと大きくなる。

カンモン: …ふむ。いっそ余計に油を叩き込んで炎をでかくして放火で捕まえるか。

FFF幹部: 「食材どもよ!、我が炎によって美味しくなるがいい!!」

GM: さらに大きくフライパンを振ると、その大胆にして大きな動作で、入りきらなかった食材が炎を纏ったまま、即席の厨房から零れ落ちて飛び散り、周囲の誇りやごみに引火しはじめる。さらに、炎は大きさをまし天井をチロチロとなめ始める。

カンモン: 手を加える前に勝手に自爆したぁぁぁ!!

ディート: ナチュラルに放火するなぁぁぁ!!


(一同爆笑)


どうでもいい話だが、幹部の周りで踊る結社員は、そもそも「周りで飛び散った炎を踏み消す」役割であった。だが、長い年月で本来の目的が失伝し、形骸化した結果「踊る」事のみが残ってしまったという、長い伝統ゆえの弊害である(力説)。


※FFFは平和的なドワーフ料理の研究を目的とした団体です。(何事にも例外はある)

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