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記憶探偵の旅行記  作者: 蒼井 柊
9/9

早く行こうよ・・・

もうちょっとで十話!

のろのろペースですが、よろしくお願いします!!

「いや~、再開できて嬉しいよ」

「まぁ昨日の今日で、嬉しいも何もないけどな」

「あはは、まーいいじゃないの。こういう偶然ってのも運命ぽくて」

「運命ねぇ・・・」

 目をだらぁっと細め、朝食に出されたパンを頬張りながら話す俺に、ノエルはふふっと笑った。ここは食堂。彼は俺の前に座り、優雅に、朝食を食べている。優雅と言ったのは、彼の服装があまりにも庶民とかけ離れていたからだ。半袖半ズボンとまではいいものの、その生地はなんと黒いスーツ生地だった(しかもまだ光沢が残った)。半袖の白シャツの上に、黒いベストを着たその姿はどこぞやの保安官の様だった。彼の座る椅子の傍らにこれから被るのであろう、ハットも置いてあるからなおさらそう見える。

「お前さぁ、やっぱり金持ちなんじゃねぇの?」

「ん?どうしたの、その質問昨日からずっとしてくるけど」

「いや、その服装みたら誰だってそう思うだろ」

「え、僕の服装なんか変⁉頑張っておしゃれしたつもりだったのになぁ」

「そういうことじゃねぇよ」

 自覚なしか。まぁ着てるやつは自分じゃ気づかないわな。

「俺らの間じゃそんな服着てるやついねーんだよ」

「そうなの?なんで?」

 お前、それを言わせるか。

「金がねーからに決まってんだろ!」

 いや、金があったとしてもその服を買わないと思うけど。

「・・・ま、いいや。で、お前今日何すんの?」

「ん、特に何も~」

「じゃあ一緒にフローラの見舞い来るか?近くの病院に泊まってるんだ」

「お、行く行くっ」

「おけ。あ、お前親とかに連絡取れてるのか?」

 エーラに誘拐された子供は、エーラの野郎が寄り道しない限りは、全員カドゥ国の者だ。バディアランテでは情報が広がっていたとしても、カドゥにはまだ届いていない。だから、身寄りがある子供は心配されているはずだ。

ちなみに誘拐された子供の中には自分の名前すら言えないような幼子もいたので、今頃国籍管理局は苦闘しているだろう。なのである程度自分の状況が整理できる年齢の子供は既に役所の手配により、帰宅の準備をしている。

かくいうクライドもその一人で、フローラの隊員が済んだら、即刻カドゥに送り返されることになっている。

「あー取った取った。ここの宿屋の電話借りてさっき~。アランが迎えに来てくれるって」

「ほー、ならいいけど」

「おそらく今日の夕方くらいにはこっちに着いてるかなぁ」

「でもよ、お前惜しいことするよな、あの時先返ってなかったら国の金使って送ってもらえたのに」

 昨日、ノエルは警察が入ってくるのとほぼ同時に汽車から離れたため、国はノエルを誘拐された子供としてカウントしていない。

「あ!それもそうだね」

ノエルは今気づいたらしく、ちょっと残念そうな顔になった。ったく、抜けてんなぁこいつ。何度も言うけど、これでも探偵か?迎えに来るアランって奴が少し気の毒に思えた。

「ばーか。ここの下宿代だって出してくれたのによ、まぁちんけな宿だけどな」

「すまないねぇ、ちんけな宿に泊まらしてしまって」

「‼(やべ)」

 いつの間にかノエルの横には一人の老人が立っていた。ここの宿主だ。さっきまで食堂にいなかったのに!クライドは汗で背中をひんやりぬらしながら、大げさなほどに両手を振った。

「いやいやいやいや!ちんけだなんてとんでもない。部屋もすんごいきれいだし、この料理も超うまいなぁ!」

 そうして慌てて目の前にあるスープを口の中に掻っ込む。それを見る宿主の目はどこか薄暗ぁく見えて、クライドはよそを向いたまま「はははは」と浮いた声を出した。この宿主は白いひげを生やし、大分と高齢で、穏やかな(ぽかぽかとかいう擬音が似合いそうな)お爺さんだと思っていたのに。視線をそらしている自分の体が、それだけではなかったと証明していた。

「ヤンさん、そんなに睨まなくても」

 クライドと宿主(ヤンというらしい、それが苗字なのか名前なのかということは俺がつっこめる空気ではない)の様子を見かねて、ノエルが笑って切り出した。

「・・・そうじゃな、ノエル様に言われては仕方ない」

 ヤンさんは大人しく引き下がった。明らかに場の雰囲気は変えて、またいつもの和やかな(そうに見える)雰囲気に戻った。クライドはほっと胸をなでおろした。ヤンさんの手綱はどうやらノエルが握っているようだった(ノエル、友達でいてくれてありがとう‼)

「や、ヤンさんとはどういうご関係で・・・?」

 クライドが口を開いた瞬間に、ヤンさんは再びあの黒い視線でクライドをにらんだ。

「ひっ!や、ヤン様とはどういうご関係でいらっしゃるのですか!」

「あ~もうちょっと!クライド君がおびえてるじゃないか!」

 瞬間的に固まった俺を見て、ノエルはヤンさんに言った。当の本人は「ほっほっほっ、いや面白くてつい」とすっかり静かなおじ様に戻り、笑っていた。

「すまんな、小僧。別に怒ってなどおらん。からかいたかっただけじゃ」

「は、はは」

 ユーモラスな爺さんだな、と心の中で思ったが、口に出すのはやめておいた。もうあの黒い視線を受けるのは嫌だ。

「ノエル様は古くからのお得意様でね、家族ぐるみでようさせてもらってたんだよ」

「うん、だからバディアランテにいるときはよく泊まらせてもらってるんだよね」

「なるほど」という意味を込めて、俺はうんうんとうなずいた。

「ところで、ノエル様、今日はそちらのお坊ちゃんの妹さんのお見舞いに行くんだとか」

「まったく、地獄耳だなぁ、どっから会話聞いてたんだよ」

「えぇもう最初っから」

待ち構えていたようなヤンさんの答えにノエルは薄く笑った。おそらく長年にわたって繰り返されている会話なのだろう。

「だと思った。で、何?」

ヤンさんは懐からあるものをノエルに渡した。それは黒縁の眼鏡だった。

「お前、視力悪いの?」

「んーん、全然。・・・これは護身用メガネ」

「護身用?」

眼鏡が護身用?どういうことだ?ハテナマークを飛ばす俺にノエルは例を挙げて説明した。

「あぁ、例えば道を歩いていた時に前から来た人がこけて、こーいう状態になるかもしれないだろ?」

 ノエルとヤンさんが実演する。ノエルの正面からヤンさんが来て、つまずく、コケる。でその手が目ェェエエエ‼ノエルの目に、もんのすごい勢いで貫通した。いや、貫通は眼鏡によって防がれたが。

「どーいう状況だよ⁉ピンポイント、ピンポイントに吸い込まれたな、その指!それ絶対初めから用意してただろ!」

「まー、こういうことも起こるかもしれないから、一応ってことで」

「起こんねーわっ、地球に隕石降り注ぐくらいの確率でねぇわ!」

「地球に隕石⁉あぁ、それも起こったらどうしよう!ヤンさん、とりあえず鎧出して!」

「承知しました」

「ちょっとまってぇぇ!」

 鎧を引っ張って来ようとする(あるのかよ・・・)なんとか止めて、眼鏡にはもう触れずに、やっとのことで宿を出た。まだ一歩も歩いてすらないのに、なんだこの疲労感は・・・。無駄に照り付ける日差しが疲れを倍増させる。

「昨日よりも体力使うかも・・・」

頭を垂れてつぶやくクライドを置いて、ノエルはうきうきで歩いていった。はぁ、とため息を吐いて、クライドはピョンピョンと跳ねるノエルの背中を追った。


ノエル「わーい、やっと町に出れるーー!」

クライド「長かったなぁ、ここまでの道のり(ほろり)」

ノエル「(笑)クライド君、ヤンさんに気に入られちゃったしね」

クライド「気に入られた⁉敵認定されたの間違いじゃなくて⁉」

ノエル「いや、警戒しすぎwwあれはどっちかというと、味方認定の範囲内だと思うけど」

クライド「味方で、あの態度かよ(素)」

ヤン「ん?何か言ったか、小僧?(キラーン)」

クライド「なんでもないでーす!!!(ビシッ)」

ノエル「wwww」


読んでいただきありがとうございました。

次は見舞編!←題名決まらぬ。


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