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記憶探偵の旅行記  作者: 蒼井 柊
8/9

少年の正体

テストが終わりましたーーーー!

ってことで、続き投稿しやす!

いやぁ、八話でやっと二人目の主人公の名前と正体が明かされるって遅すぎやろおいこら

「よし、これでオッケーっと」

 上半身裸の少年は、乗り合わせていた子供たちと協力して、白目をむいてのびているエーラの体を縄で縛った。思いのほか奴の体に食い込んでいるのは、この二、三時間という短い時間の間に積み重ねられた子供たちからエーラへの恨みの賜物だろう(無意識か?)。ぐったりとして横になった妹の横で座り込んで俺は彼らの様子を見つめていた。

「ねぇ、この汽車国境に着くまでに止まったりしないよね?」

 俺の前に来た少女が不安そうな表情で尋ねてくる。バディアランテの国境にはエーラ達を今か今かと待ちわびた警察がいる。俺は彼女に「大丈夫だ」と答えた。

「この汽車の運転手はじいさんだ。耳が遠いらしくて、おそらくこの騒ぎには気づいていない。それに、運転室は石炭運んだり、運転したりで、後ろのこと構ってる余裕なさそうだしな」

「ほんと、よかった。本当に助かるんだ」

 そして彼女は涙目になったかと思うと、崩れ落ちるように床に座り込んだ。顔を手で押さえて、その耳は赤い。すると、彼女に同調するかのように、三号車内にいた何人かの子供が泣き声を次々にあげだした。今まで、本当にこの汽車の荷物であったかのように黙り込んでいた子供たちが、嘘の様だった。その様子に胸が何だか落ち着き、そんな彼らの様子をみるとやっぱりこの計画を実行してよかったと思った。あとは・・・フローラが無事助かることを願うばかりだ。

「おにいちゃ・・・」

 フローラは俺の隣で横たわって、静かに息を吸い、そして短く吐く、を繰り返していた。その速度がだんだんと上がってきているのがずっと気がかりだった。フローラの差し出す弱弱しい手をそっと包み込んでやる。

「大丈夫だ、お前は絶対に助かる」

 俺の言葉にフローラはふふっと笑い、しんどい状況は変わらないのだが、その様子にひどく安心した。あの少年が近づいてきて、フローラの隣にしゃがみこんだ。

「ほんの少しでバディアランテに着くよ」

 そして少年は残っていた布でフローラの額の汗をぬぐってやった。

「おつかれさま。お前がいなきゃ、エーラを倒せなかったよ、感謝してる」

「‼クライド君に素直に礼言われると、なんか怖いなぁ」

少年は汗を拭く手を止めて、なぜか半笑いで俺に言う。こめかみのあたりが一瞬うずく。

「なんでだよ」

「いや、だって会ってから今まで怒ってるクライド君しか見てないし」

「んなことねーよ!」

「ほら、やっぱ怒ってるじゃん!」

 気づくと、俺は身を乗り出していた。少年の正論に、後に言葉が続かない。俺ってどうしてこうなんだろ、久々に自分の感情制御のキャパシティーのなさを感じ、ため息を吐く。

「ほんとにありがとうって思ってんだよ」

俺は重い頭を片手で支えながら、どことなく言い訳気味につぶやいた。すると少年はくすっと笑って「わかってるよ」と返した。そっか・・・。

そして何となく口を開きにくい微妙な空気が流れる。調子狂う、何なんだよこいつと若干逆ギレ状態になっていると、まさにその通りの疑問が浮かんできた。

「お前、さっき、俺が銃撃とうとしてたの止めた時!何で、あんなこと」

あの時のフローラと全く同じ言葉。一瞬耳を疑った。


“復讐したからって母さんが戻ってくるわけじゃない!残るのはどのみち行き場のない怒りと虚しさだけだよ、お兄ちゃん”

 脳内でフローラの声が反芻される。あの時はひどくあいつに怒られたな。


母さんを失って、ただただエーラを殺し、復讐してやろうとばかり考えていた俺に、フローラは叫んだ。泣きながら、だめだよぉ!と叫んだ。フローラの言うことは正論だ、俺の、喉のすぐそこまで来ていた復讐心やら恨みやらが一度はぐっとつっかえたのも事実。とは言っても、それだけで収まるようなもんじゃない。

「じゃあこのままあいつにされたこと受け入れろっていうのか⁉やってられっかよ!」

「そんなの、私だって同じだよ!あいつの顔思い出すだけでも虫唾が走るし、母さんが殺されたのに何であいつがとか、あんな奴消えちゃえばいいのにとか思うよ!でも・・・」

「何だよ、でもって、あいつがどうなろうが後悔することなんてなんもねーよ!」

「違うよ!エーラの事じゃない。あいつ、殺しちゃったら・・・あんな奴でも殺したら悪だよ。お兄ちゃんに、あいつとおんなじになんてなってほしくない」

 フローラはキッと顔を上げ、涙を浮かべた瞳で俺をまっすぐ見た。一歩引きぎみになる。

「別にいいんだよ、俺のことなんて。母さん殺された時点で俺の人生終わってんだから!」

 パンッ。視線が地面へと移されると同時に、乾いた音が部屋に響いた。後からじわじわと広がっていく痛みを頬に感じた。頬を押さえながら目線をもとに戻すと、クライドを叩いた張本人は目からぼろぼろと涙を落としながら、彼を見つめていた。

「それ本気で言ってんの⁉本気だったらマジ怒るからね!」

「既にキレてんじゃん・・・」

 ゴッ。今度は視線が下に下がる。

「お前はキレたら殴ることしか出来ねーのかよ!」

「そうだよ!ヘタレなお兄ちゃんに対してはそうなるよ!何よ、人生終わったって!自分の人生、人の死にゆだねてんじゃないわよ!後ろばっか見てないでよ。お兄ちゃんにはお兄ちゃんの人生があるんだから・・・」

フローラは俺の襟首につかみ、だんだんしぼんでいく声と共に頭を垂れた。喉の奥がグッと締め付けられた気がした。

 俺は妹にこんな顔させて何をやってるんだ。

「すまん・・・。さっきのは訂正する」

フローラはぐずっと鼻をすすって、涙をぬぐうと腕組みをした。

「ふん、わかったならいいよ。でも、お兄ちゃんは私のお兄ちゃんでもあるってこと忘れないでよ」

「あぁ、当たり前だ」

 俺はまだ目の下をさすっているフローラの頭を抱き寄せた。

 大人になったなぁ。お前はいつの間にそんなに頼りがいのある女になったんだ。

「ありがとな」

俺の顔の下でうつむく頭にそういうと、「うぅ~、タオル取ってきて~」とまだ湿った声が返ってきた。その声を聞くと、やはりこれは甘えん坊の妹だということを思い出し、少しおかしくて笑ってしまった。



「クライド君、妹ちゃんに叱られた時の事でも思い出してんの?」

「あぁ、あいつのビンタは痛かった・・・っておい!だからそれ!何で知ってんだよ⁉」

少年は「ふふ~ん」と得意そうに鼻を鳴らすと、自分の両手のひらを俺に向けた。

「実はねぇ、僕は人の記憶を探ることができるんだよ」

「はぁ?」

 この少年、また訳の分からないことを言い出したかと思えば。

「え、どうやるの?」とそばにいた少女が彼に尋ねる。

「方法は簡単。まず~相手の手と自分の手をガッとつかみ合って~、そして僕が、ん~クライド君の事もっと知りた~いって願うとクライド君の過去がぜーんぶ見れちゃうわけでーす」

「・・・はぁ」

半信半疑の声でそういうと少年はむっとしたようにその後を続ける。

「だからぁクライド君の最後のおねしょが十歳の時だったとかっ・・・」

「‼てめぇ何抜かしてんだ!」

 俺は少年のもごもごと動く口を必死で押さえつけた。しかし間に合わず、「えー、お兄ちゃん、そんなになるまでおねしょしてたのー」と子供たちのくすくす笑う声がする。

「する訳ねぇだろ、ばか!」

「うん、それでお母さんに怒られて、一週間洗濯手伝わされてたんだよ~」

「お前は、だまってろ‼」

 少年を黙らせるのに必死になっていると、フローラのふふっという笑い声がまた聞こえた。「笑うなよ」と俺が言うと、「だって」と笑いを含んだ小さな声が耳に届いた。

 突然ガシャンという音が聞こえ、それが汽車の止まった音だと認識したほんの数秒後、一二号車に大勢の人が乗り込んでくるのが窓から見えた。耳をすますと、バディアランテ国の警官達の声だと気づいた。胸の中で高揚感が関を切った川のように押し迫ってくる。

「あー‼僕ら助かったんだ‼」

 一人の少年が叫んだのを皮切りに少年少女たちの歓声があちこちで上がる。その声を聞きつけた警官らが「そこに子供たちがいるのか!」とドアを叩きながら問うた。誰かが「はい!」と元気よく叫び、それに合わせるように警官が「よし、今ドアを開けてやるぞ」と答えていた。クライドはほっと大きく息を吐いた。

 これでやっとフローラが助かる。俺は今にも泣き崩れそうになった。

「フローラ助かったぞ・・・」

 俺の弱弱しい声に彼女は声には出さずにうんとうなずいた。

「よかったね、フローラちゃん」

 少年はフローラの頭を最後になでると、立ち上がりドアの方へと向かった。そして振り向きざまに言う。

「じゃあね、クライド君。僕はお先に失礼するよ。取られた荷物も取りにいかないといけないしね」

「あぁ、また会えるといいな」

「んっ。そうだね、また」

 少年はそして俺たちに背を向けた。そして俺はふと思いだした。

「おい!お前の名前聞いてない!」

俺の声に少年は再びふり向いた。

「あ、そうだっけ。僕はノエル。ノエル=オズバーン。しがない探偵ですっ」

「ノエルか・・・やっぱお前が探偵ってのがまだ信じらんねー」

「ふふっ」

 あんな探偵がこの世にいるか?クライドの脳内では、発対面の時の少年のなぜか突然膝の上で寝だすという突飛な行動、物怖じせずにエーラの前に飛びだすという無防備極まりない行動の数々が再生されていた。まぁ探偵っていうのは変わり者が多いって聞くしな。そう思って顔を上げると、彼は既に去った後だった。

「どちらにせよ、面白い奴だったな。ノエル」

 クライドは暗い汽車の中で偶然出会った小さな探偵に好感を抱いた。



 翌朝もう太陽がすっかり上がりきった頃に宿屋にて目を覚ますと、小鳥のさえずりが耳をかすめ、その安らかさに昨日の出来事が夢だったように感じられた。しかし動かすと若干痛む腹はそれが嘘でなかったことを物語っている。

 あの後、エーラは警察に連れていかれ、フローラはすぐに病院へ運ばれた。フローラの手術は朝方までかかったが、無事成功した。エーラの方はきっと懲戒免職にでもなるんだろう。というか刑務所行きだな。・・・ざまぁみやがれ。

さて、今日はお見舞いにでも行こうかな。フローラは桃が好きだから買って行ったら喜ぶだろうか、いやまだ食べられないかなぁ。そんなことを考えながら洗面所に行こうと、部屋の扉を開けた。

「えてっ」

「あ、すみません」

 寝ぼけ眼で扉を開けたため、廊下に人がいたことに気が付かなかった。慌てて謝る・・・ってシルエットになんか見覚えが・・・。

「だいじょ~ぶ。ってあれ⁉クライド君!」

「お前、昨日の!」

 立っていたのは間違うことなき昨夜の少年、ノエル=オズバーンだった。

「わぁ!すっごい偶然だね!クライド君とまた会えるなんて嬉しいなぁ」

 ノエルは寝癖のついた頭ではしゃぎだす。いや、それにしても、偶然過ぎるだろう!

 俺は少年との思わぬ再開に嬉しさ何やらよりも先に、苦笑いがこぼれた。


クライド「偶然ってすご・・・」

ノエル「明らかな第三者による意図を感じるよね(ニコ)」


ん?何かなぁ~???

物語ってのはなんかうまくいくようにできてんだよっ!

では、本日は以上!!!

(ちょっとあとがきの方式を変えてみました)

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