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アンノウン・ブレイブ  作者: 染井Ichica
1章 紅の魔女と銀月の龍
8/101

8

本日はハッピーハロウィンということで二話投稿です。そして二話目です。

 審判の合図と共にミコトは腰の革袋から煙玉を複数個まとめて取り出して思い切り地面に叩きつけた。

「シズカ、頼んだ!」

 真名無き今は人間同然なので相手の持つ竜退治の優位性は発動しないだろうが、万が一に備えてだ。煙幕の中からシズカの声が聞こえる。

「OK!」

 とはいえどうするのか。丸投げしつつもミコトがそう考えていた時だった。

「《この試合が終わるまでベオウルフは結界に邪魔されてマツリヤ・ミコトを攻撃することは出来ない》」

 高らかに宣言したシズカの声が訓練所全体に反響するような錯覚を抱いた。周囲には魔力が満ち、世界の法則が塗り替えられていくのが肌でわかる。あっさりと放たれたそれはあまりに大規模で、そして同時に呆れてしまうほどに強力だった。

「能力ほとんど使えないってのは嘘かよ……」

 本当に、最強の嘘吐きだ。ここからでは見えないもののシズカが鼻歌を歌いそうなほど浮かれているのが分かる。

 それは強制力だった。彼が吐いた嘘は現実となり、障壁を形成する。どっからどう見ても二対二という試合条件を勝手に書き変えているのでこれは反則技なのだが、あのシズカだから、きっといつもの微笑を浮かべたまま、反則っていうのはルールが正常に機能してこそ初めて言えるんだよリーダー、つまり最初からルールを機能させなければ無問題だ、馬鹿なのかい、とか一蹴しそうだ。

 事実審判が何かシズカに言ったようだが数回のやり取りでシズカに論破されたらしく、今はもう黙りこんでいた。なんとなく哀れな審判の心が折れてないことを願いたくなった。

「いや、これは嘘じゃないさ。ちゃんとは使えないとは言ったけどこれぐらいなら楽勝。だって僕は虚と実をうつろう者だからね。さぁ、リーダー、頑張って!」

 彼は根っからの嘘吐きだ。ミコトはニヤリと笑って抜刀した。目の前にいるのは、神話で金色林檎の守護者と謳われた化け物が一体。

「蛇もどき……覚悟しやがれ」



〈おっとコノハナ陣営、分断に成功!まるでよく見知ったかのようなナイスコンビネーションです!〉

 司会がマイク越しに叫ぶのが聞こえる。私は改めてシズカの規格外の強さに驚くしかなかった。

「あれは言ったことを実現させているの……?」

〈ここで皆さんお待ちかねの使い魔紹介です!プレンデル陣営の使い魔は《神霊》龍種ラドンと竜殺しの《英霊》人種ベオウルフ!元の世界では天敵同士ともいえる二体だが何故ペアを組んだのか!?〉

 きっと龍種であるミコトを確実に倒すために違いない。もっともシズカの策謀によってそれは不可能になってしまったが。

〈一方、コノハナ陣営はどちらも《無名》!マツリヤ・ミコトは人種、シズカは妖種となっています!そしてもし話が本当ならばミコトの真名は今現在プレンデルによって剥奪されているようだが、はたしてラドンに対抗することは出来るのか!?〉

 とミコトが刀を抜いた。やはり刀身自体があの時と同じく淡い光を帯びている。彼は幾つかの頭に切りかかった。その刀は一気に狙った首を刈り取る。ぼとりと断ち切られた頭部が地に落ち地面を赤く染める。そのままミコトは依然戦闘態勢を崩さないで、迷わず落ちた首を踏み潰していた。隙の無い動作である。ここで改めて実感した。ミコトは戦い慣れしている。

「無駄だよ」

 それを見てプレンデルが笑った。

「ただの刀に神話が滅ぼせるはずないだろ」

 それと同時に音を立てて再び切り落としたはずの首が生えてくる。間近にいたミコトの表情が一瞬強張るのが分かった。だが彼はすぐにラドンから距離を取り、そして脇腹を押さえる。装備の隙間から覗く咬み痕。どうやら知らないうちに他の首に攻撃されていたようだ。深手ではないが大量の血が流れているのが見えた。

「そして最早蜂の巣も弱点だと認識している時点で対策済み、最早効かない!」

 傷は再生能力で修復出来るものの、それは焦りに繋がったらしい。ミコトは唇を噛みしめ、すぐに不敵に微笑む。何かを確信したような、そんな様子だった。

「……ミコト?」

「神話か。そうか、そういう考えがあったか」

 私の声に反応したミコトは刀を水平に持って何かを呟いた。

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