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花宵の宴

 春の第一月の終わり。僕達は再建されたコノハナ邸の中庭に集まっていた。

「えー、それでは……改めてミコト!シズカ!ナナミ!この世界にようこそ!乾杯!」

 サクヤの言葉に合わせて僕らは祝杯をあげる。これはささやかながら契約してくれた使い魔達に対する歓迎会なのである。よくあることではあるのだが少し遅れてしまったのにはやはりミコトさんの召喚時にあった事件の事後処理が長引いてしまったのが関係している。あまりに面倒だったので途中で僕の使い魔のシズカは飽きて、調査官の精神をフルボッコにして楽しんでいた。合掌。だが逆に考えると時期がずれたおかけでお祝いに使うような品が品薄になってなかったから助かった面もあるが。

「お、酒あるじゃないか。いいのか?飲むぞ」

「どうぞ御自由に」

 ミコトさんが早速日本酒を手に取る。ちなみに一般的な名前こそ日本酒だが類似した製法は様々な世界から持ち込まれているのでご当地ネームのこともある。このお酒は大人気《ジルバーン・ローザリウム社》の特選大吟醸《那由多の峰》である。

「でも未成年者には飲ませないでね。あと僕にも」

「分かった分かった」

 シズカもお酒は苦手らしく、僕らと同じソフトドリンクを手に持っている。

 まさかのこのセリフがフラグになるとは思ってもいなかった。



 数十分後。

 そこには地獄が広がっていた。

「あははは!このジュースおいしいわぁ!!」

「……」

 ほんの数分。御手洗いに行くため席を外しただけだったはずだ。なのにどうしてこうなった!?

 分かりやすくいうと見渡す限り見事に酔っ払っていた。サクヤは変に笑いながら明らかにワインボトルと思われるものを撫でているし、ミコトは近くの桜の木にもたれかかりながらうつらうつらしてる。一見すると散り際の夜桜を見てうっとりしているように思えるがどう考えてもその首の動きは半分寝てる。酒好きなのに弱いとかこれコメントに困る。シズカはそれを死んだ目でぼんやりと見ていた。そして弟のネルは何故かふにゃふにゃしてて、ナナミさんは鼻息が荒い。

「ふふふ!完璧なショタ!将来有望ショタ!」

「ナナミさんくすぐったいよー」

 駄目だこの痴女。とりあえず酔っ払いに慈悲無しということで僕はナナミさんの首筋に手刀を叩き込み、気絶させる。やれやれ。そしてこの一部始終を見ていたはずのシズカに視線をやった。

「シズカ?どうして止めなかったの?」

「いや、だって本当に誤飲の一杯でみんなこんなになったから止めようがなくて」

 彼にしては珍しく本心から困っている。と、僕は既に彼の顔が赤いことに気付く。そういえば表情も緩い。

「……ねぇ、シズカ?君も飲んだ?」

「うん、飲まさせられた。サクヤちゃんに」

 サクヤ!!何してるんだよこの残念令嬢!!僕が頭を抱えているとシズカはへらりと笑う。

「えっちなおにいさんはすきですか?」

「アウトーー!はい寝ろ!」

 こいつもだった!ぱたんと倒れたシズカを置き去りにし、僕はサクヤに近付く。

「サァクゥヤ?ストレスが溜まってるのは分かるけど君、いい加減にし」

「ヒャッハー!」

 突然鈍器で頭を殴られた。おそらくさっき撫でてたワインボトルだろう。危険すぎる。痛くはなかったがそれなりの衝撃に思わず固まった僕の顔をガシッとサクヤが掴む。ああ、やっぱり可愛いなこの残念令嬢。こぼれた笑みで唇が綻ぶ。次の瞬間。

 僕は大量のワインを流し込まれる羽目になった。



 翌日、当然ながら死屍累々となった中庭で寝たせいで風邪を引いた。そしてネルはしばらく僕を見るととても怯えていた。何故だ。

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