第二章
第二章
5月10日 東京 午前 2:20
よし! 気を取り直して、話の続きを始めるか。
さっき質問した答えをさっさと聞こう。
えっと何の話だったっけ?
気が抜けて、少しぼっーとし過ぎた。
それに、さっきの長話しを、長々と聞かされたせいで。
自分が何を、質問しようとしていたのか、忘れていてしまっていた。
あっ!そうだ。
ゲッペラー社に、なぜ、任務の件が漏れているのだろうか。聞きたかった。
いや、この場合、なぜ伝わっているのだろうか。の方が、正しそうだ。
それと、 任務遂行の件と同盟の件には、関係があるのかも。気になる。
まぁ、共通点がありそうな匂いはするが。
とにかく真相を、聞きたかったんだ。
「まぁとにかく、お前が言いたい事は、悪魔の血玉は秘宝ではないって事だろう」
「あぁ、そうだ。それが、わかってもらえればいい」
俺の返答にそんなに簡単に、返してくるのなら。
最初からそう簡潔にまとめて、話してくれれば、いいのに。
と、思った。
「ところで、さっきの質問に戻るが、お前たちが、任務のことを知っていたのなら。
何の為に俺は、血玉を盗む任務を命じられたか知ってるよなぁ」
「さっき同盟の話が出たが、それと少し関わりがある。
と、言っても、我々もまだ詳しいことは知らないが。
わかる範囲で教えよう」
横っことに逸れた、さっきの秘宝の話しで、場の空気は一度、和らいでいたが。
また、元に戻ったようだ。若干の緊張が漂う。
そこに、五月雨の日の涼やかな風が、重なり身体が少し強張った感じになった。
「先ほど行われていた、会議、まぁ同盟会議だな」
「で、…」
そんなこと言わなくてもわかっている。
「そちらの、ガオス盗団から、我ら、ゲッペラー社にこう、通達が来た。
お前の任務評価をしてくれ。
自分達、組織の一員としての、目線で評価を頼む。
我々、ガオス盗団では、今までの任務で、今回の重大任務で役に、立つ人材の一人であると、判断した。
使える人材だと、思ったから、我々、盗団にその旨を、幹部を通して、伝えて欲しい。
とな」
「重大任務!?」
何だそりゃ、そんな噂今まで、少しも耳にしていない。
重要案件と言われている任務はでも、たまにほんの一部だか、情報が漏れることがある。
それは、組織のセキュリティが甘いのではなく、団員の能力が、セキュリティを上回っているからだ。
そんな奴らが、ゴロゴロいるなかで、俺なんかが、重大任務に関わる一人になるとは。
夢にも思わなかった。
しかも、こんなに早く。
大抵、入社|(入団)してからの昇級システムは、
十級:素人|(入団時)
九級:アマプロ
八級:プロ
七級:プロレギュラー
六級:プロリーダー
五級:プローズ
四級:マスター
三級:マスターレギュラー
二級:マスターリーダー
一級:マスターズ
となっている。
ちなみに、重大任務と言われる、任務に着けるのは、七級以上だ。
若しかして、七級受かったのか!?
「あ、もしもし。バディッシュさん?
私、ガイトです。さきほどの案件のことですが、現場の判断では、合格です」
「そうか分かった。それじゃ、ガオス盗団に伝えておく」
電話?そういえばさっき、幹部を通して、連絡してくれと、盗団から通達があったって言ってたなぁ。
あいつ、ガイトっていうのか。
「では、お願いします」
ピッ!
電話は済んだようだ。
「おい!お前の名前のを教えてくれないか」
「俺の名前か!?
その前に、他人の名前を聞くときは、まず、自分の名前からっていうだろ」
とは言ってみたが、さっきの電話のやり取りで、名前は知っている。
だが、裏社会では、もう一つの名前を、持っていることがある。
全く違う名前もしくは、番号で呼ばれることもある。
「おっと。これは悪かった。
俺の名前は、ガイトだ。これから、よろしく頼む」
「俺の名前は、パルだ」
よろしく頼む…ってどういう事だ?
「パルか!これからよろし頼む」
又だ、よろしく頼むってどういうことだ。
その口調だと、こいつらと、関わりを持たなければ、ならないという事か?
俺は、少しでも早く。この場から、立ち去りたいのだが。
チラリと腕時計を見ると、時間は午前二時半を過ぎたところだった。
同盟会議が行われてから、一時間十分。
もう、そんなに時が経っていたのか…。
予定では、今頃、さっさとアジトに帰り着いていた頃だろう。
話に、夢中になっていたせいで、気づかなかったが。
雨は止んでいて、月が雲の隙間から、顔を出そうとし始めている。
雲の流れが速いな。
そんなことに浸っている俺に、相手は、俺に話を続け語りかけてくる。
「 俺たちは、同盟を、共に組んだ組織どうしだ。
これからの任務は大体、一緒に組み、行動を共にするだろう。
そう、上から言われた。
だか、まだそれ以上の事は、詳しくは知らない。
ほらよっ!」
「携帯!?」
同盟を組んだ、という出来事で、今は、先程より場の空気が軽くなった。
そのせいか、お互いの立ち位置が。
少しだけ縮んでいた。
それでもまだ、距離はある。
大体、五メートルほどだ。
ガイトが俺に、携帯を渡すため、放り投げてきた。
携帯は、なめらかにキレイな放物線を描き。
俺の手に収まった。
「ただの携帯じゃないぞ」
ただの、携帯じゃない!?
「あの、ケイヴィブラート社の携帯だ」
ケイヴィブラート社と言えば、世界一の携帯会社とも、言われているくらいの、大企業だ。
急に、手渡されたので、そこまで、気が行かなかったせいで、気づかなかったが。
よく見ると、確かに、この携帯に、刻まれているマークは、ケイヴィブラート社のもののだ。
だが、そう言われてみても、見た目はやはり普通だ。
ただ、ケイヴィブラート社の携帯だという事だけで、何か、これといって特別さを、感じるところはない。
若しかして、ただ単に、最新モデルってだけの事か。
「ケイヴィブラート社の、携帯だって事は、分かった。
でも、悪いがどう見たって、ただの携帯にしか、思えない。
最新モデルの携帯てっ事か?」
「あぁ、まぁ最新モデルってのは確かに、当たっている。
だが、それだけではない」
もしかして、スパイ映画で、よく出てきて、よく見かける。
多機能携帯か!?マジか!いや、そんな事あるわけ…。
いや、待て待て、もしかすると本当にそうかもしれない。
絶対そうだ!…。
だが、あまり推測し過ぎると、さっきガイトが、重要な話しをして来ると思って、身構えていたが、大外れだった。
だから、あまり推測し過ぎるのは、辞めておこう。
でも、少しずつ推測していく能力も、高めて、身に付けていかないと、この裏社会ではやっていけないだろう。
だからこそ、もう少し、深く考えてみよう。
そう思い。さらに考えを深めて行った。
この裏社会でなら、あの大企業、ケイヴィブラート社に、多額の金と圧力を加えれば、作ってもらえる可能性は、充分考えられる。
それに、そんな携帯を作る事など、朝飯前だろう。
それと、このケイヴィブラート社は、以前から何かと良くない噂を、よく耳にする事が多い。
それは、ケイヴィブラート社が、大企業、故に、欲望が深まり。
表社会だけでの、利益だけではこと足りず。
裏社会にまで、その手を伸ばし、あらゆる闇組織と、手を組み癒着しているという、噂が、日々耐えない。
「その、携帯を持っていれば。周囲一キロ範囲内にある、携帯や他の電子機器端末などから。自動的に、情報などを自由に入手出来るらしい。
まぁ、こういった商品は、この裏社会では、持って来いだな」
俺に、そんな凄い機能を、使いこなせるだろうか。
「まぁ、機能の事は、あまり重要ではない。
携帯を、渡した理由は、共に行動する中で、お互い連絡を取り合うためだ。
それと、その携帯には、GPS機能も備え付けされているから、常に互の位置を把握出来る。
任務には、一番欠かせない機能だ」
そうか、確かにこれから、共に行動するに当たって、連絡を取り合うのは、当たり前だな。
まだ、互いに警戒しているせいか、そこまで考えなかった。
ちょっと考えれば、簡単なことだったな。
「まぁ、お前に話したい事は、だいたい話せた。
任務の情報については、また、おいおい連絡し合おう」
「あぁ、わかった。いろいろ情報をくれて、ありがとう」
少しだか、お互いの事がわかった様な気がする。
「じゃあ、俺はそろそろアジトに帰る。
任務の報告とガイト!あんたらとの、今後の任務の同行について、いろいろと上の者に、聞きたいからな」
「そうだな、我々もまだ、同盟について、詳しい事は知らない。今後の、任務の動向も気になるところだ。
まぁ、任務同行の件があり次第、連絡する。では我々も、これで失礼する」
そして、各々アジトに戻り。同盟と今後の任務について、組織の幹部達から、詳しい説明を聞かされた。