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第一章

第一章


32xx年 5月10日 東京 午前 2:10


「ズッ…ザッ、ザザッ…」


まだ少し肌寒い五月雨の中、深淵の様に染められた真っ黒なフードコートを、深く被りる俺は、足早に裏通りをかけていた。


「待て!そこを動くな!」


「ッ…‼」


 目の前には、これ又、深淵の様に染められた真っ黒な服を着た3人の男。

たが、彼らは俺とは違い、スーツ姿だ。

上手く逃げれたと思ったのに…まぁ、仕方ないまだ、俺の腕がそこまでの実力しかないという事だ。


 「チッ…全く、あんたらは、そんな堅っ苦しいスーツ着ながら、よくここまで追いかけて来れるな。ハハッ!」

 「我々は、お前らの様な、虫けら同然の盗賊から、我がゲッペラー社に代々受け継がれし秘宝を、守るため日夜、数え切れない訓練をしているからだ」


 まったく、この雨の中、長話をしたくてわざわざ追って来たのだろうか。

数え切れない訓練って⁉

 一日中やったとしても、限度ってものがある。

さすがに数えられるくらいしか、訓練出来ねえだろ…。ってか若しかしてあいつら単純計算できねえのか?

 でもまぁ、訓練で頭うち過ぎ他のかもな。ハハッ…。


俺も訓練のやり過ぎには注意が必要かもな…。

まぁ、どうでもいい俺はさっさとアジトに帰宅したいと思った。


 「おい!長話しがしたいなら、お前ら三人でこの雨の中で勝手に盛り上がってな。

俺は濡れたくないんで、さっさと帰らせてもらうぜ!」


 そう、捨て台詞を吐いてアジトへの帰路に向かおうと、少し走り出してから。


 「おい、だから待てと言っているだろう。

別に長話をしようと思って、我らは、お前を追って来た訳ではない」


そこで、俺は少し足を止め先ほどの三人の男達に振り向いた。今、男達との距離は、七、八メートル。

襲いかかって来たとしても、現時点での俺の実力なら難なく避けることが出来るだろう。

 だが、相手はその気配を見せない。


 「この、予告状だか、下剋上だかわからない物を送ってきたのは、お前らガオス盗団か?」


 我が社、ガオス盗団がそんな事をするとは思えない、何より盗団が任務情報を外に漏らすなど自爆行為もいいところだ。

もし、そんな失態を犯した奴がいたのなら、その行為の数時間後には人知れず抹殺されるだろう。

そして、その者についての話題を、持ち出した者でさえ、何かしらの厳重処罰。

若しくは、死罪になる可能性も考えられる。

 だからこそ、そんな事をする愚か者はいないだろう。


 「我が社に限ってそんな事をする様な者はいない!」

 「そう断言する組織ほど、欠点はあるものだ」

 「ほぉー!お前らに、我が社の何が分るのかな」

 

まぁ、そんなことを言う俺もまだ組織に入ってから二年ほどだ。

ある程度、盗団の組織情報は把しているつもりだ。

だが、噂によると、幹部の中には他の組織と通じている者がいるという情報もある。

ガオス盗団も、表社会からしたら、裏社会の部類に含まれている。だが、裏社会の中では、まだ表社会に近い位置にある組織だ。


「まぁ、俺も自分の組織(ゲッペラー社)の情報をすべて把握しているわけではない。

たが、お前がそこまで言い張ると言うならば、信じよう」


「本当か!?…」


この、裏社会でこんなにすんなりと、言葉だけで信じてしまうとは…。

裏社会に生きる人間としてはあり得ない行動発言である。


「本当だ!我々が信じてやろうというのだ。悪い気分ではないだろう」


確かに悪い気分ではないが、 悪い、良いの問題ではない。


「お前らの言う通り、悪い気分ではないが、なぜそんなことを言う。

そんなに優しく接してくれるのなら、さっき言ってた。

虫けら同然の盗賊って言葉、取り消してくれないか」

「悪かった!さっきは少し慌てていてな、何時もの口調になってしまった。撤回しよう。

仕事ではなるべく丁寧に紳士らしく、話しているつもりなんだが」


紳士って、それにしては、あまり紳士らしくない様だが…。

まぁ、いい。そんな事より、話を少しでも進めないとな。


「あぁ、そうかまぁ、そう簡単に謝られるとは、思わなかった。だが、ありがとう。

それより、 さっきから俺の言葉を信じるだの、慌てていただの、言ってだが…

何か、違和感がある言い回しだな!」


まぁ、軽く突っ込んだ言い方になったが、多分、言葉を濁して、遠回しに話してくるだろう。

又は、全く別の話に逸らされるってのが。

こういう場面での、筋ってものだろう。


「我々、ゲッペラー社とそちらのガオス盗団が、この度、手を組む事になった。

まぁ、同盟という奴らしい!」


たが、相手は直球で返してきた!?

俺の予想、見事に大外れだった。


「そんな話は一切、俺の耳に入って来ていないが」

「先程、午前1時二十分頃、お互いの組織中枢部の幹部のみで、密かに会議が行われたらしい。

我々も先程、知ったばかだ。

それと、我々以外にもう一つの組織も、会議に参加されたそうです」


もう一つ…?ガオス盗団と関係のある組織…?


「デミック教団だ!」

「デミック教団って確か、バチカン市国に本部がある、組織だよな。

何で、そんな巨大組織が、この日本の闇組織と、同盟なんか!?」


そもそも、その会議で同盟組んだとか、どんだけデカい山にガオス盗団は、手を出そうとしているのだろうか。

しかも、午前一時二十分頃って、ちようど任務遂行、直後だった時か。


「我々も、まだ詳しい情報は聞かされていないので、よく分からない。

ただ、お前の任務遂行を見届け、後を追いかけて、今話したことを、伝えろと言われただけだ。

それ以上は、我々も分からん」

「その言い方だと、最初から俺がどんな任務行動を、起こすか分かっていたんだな」


まぁ、よく分からんが、とにかく、聞ける所まで突っ込んで聞いてみるか。

今の調子なら、もう少し深くまで情報を聞き出す事が出来るだろう。


「そうだ!お前の言うとおりだ。

それと、お前が任務遂行で手に入れた、悪魔の血玉を返して貰いたい。

それも含めて、追って来た」

「チッ!任務がバレているなら、俺が盗んだのも、バレていて当然だな。

仕方ない、ほらよッと」


真っ赤な悪魔の血玉は、宙を舞った。


「うわっ!?」


今までの威勢は何処へやら、紳士さのカケラもない声を出しながら、悪魔の血玉は無事にゲッペラー社の社員の手の中に収まった。


「急にに投げるなど危ないだろ!」

「確か、あんたらさっき、我々は日夜数え切れない試練をしてるとか、言ってたよな。

だから、てっきり簡単に取れると思ってつい、こうなんと言うか。

手が滑ったみたいな…」


ってか、それは今、思い出した口実で、俺の小悪な子供心という、本能が呼び起こされ、つい気軽に投げてしまった。

確かあれ!五千万円前後だった気がした…。


「 手が滑っただと、この悪魔の血玉の価値を知っていて、盗んだんじゃないのか?

これは、ただのオブジェじゃないんだぞ。

千年前でこそ、その価値は八千万円、現在では、二十三億円だ!」


二十三億円‼マジですか…。

確か、我が社、ガオス盗団の資料室で読んだ本には、五千万円前後って書いてあったはずだが…。

まぁ、それでも、高額である事に変わりわない…。

そい言えば確か、あの本気になっていたが、かなり古本だった気がした。


「軽い気持ちで投げ渡した事は、悪かった!

だが、何故その秘宝を俺に取らせたんだ?

同盟の事は、詳しくは知らないとしても、任務の事は聞かされていたんだろ。

なら、なんで、なんの為に俺は、任務を命じられだんだ?」


たぶん、同盟との関わりかも、あるのだろう。


「それは…。

その前に一つ言っておきたい事がある」


俺の問いかけた質問に、答えようとして、少し間か空いた後、別の話に逸らされた。

そのせいで、少し場の空気が重くなったのを俺は、薄っすらと肌に感じた。


多分、今から言う事は、今後の重要な鍵を握っているのだろう。

若しかすると、同盟の話にも関わりがあるのだろうか?


俺は、そう長くはない、今までの人生で得た経験から、何と無くだか感じ取れた気がした。

あくまで推測だが、全ては繋がっている!って、なに探偵気取りな考えをしているのだろうか。


「っ…おっ…おっい、おい!」

「ハッ!」


少しぼぉーっとしていいた様に見えたらしい。


「あぁ、悪い!で、俺の質問に答えてくれる前に、何か言いたい事があるんだろ」

「では話を、進めるぞ。

さっき、何で秘宝を盗むん任務をしたのか言ってたが。

この悪魔の血玉は、最初に俺が言った我が社、ゲッペラー社に代々受け継がれし秘宝ではない。

確かに、これもまた先程説明したが。

ただのオブジェではないと言っただけで、秘宝とは一言も言っていない」


何だか、話が長くなりそうな雰囲気がしてきた。


「金額は、確かに二十三億円と高額だが、秘宝は遥か想像も及ばぬ、値打ちだと聞く。

まぁ、実際には、世界中の鑑定士を呼び集めても、価値を付けられる代物ではなかったと、言われている。

まぁ、鑑定したのは、何世紀も前の事だ」


「ヘぇ〜」


あまりそういうことには、興味がないので、相槌だけ打っておいた。


「たが、当時の資料によると、価値を一回付けたらしい。

では何故、価値を外したのか。

それは、金額を目にして秘法の価値を、知るのではなく。

目で見て、秘宝に触れる事で、感じることこそ、本当の価値が分かるそうだ。

そう、書いてあった。

人によって価値が変わるという事を伝えたかったのだろうな。 多分…」


おっ、終わりか。それにしても、長い演説だった。

こっちの質問を逸して、聞きたい事がある、なんて言うから。

同盟との重要な関係性があると身構えていたら、全然予想はずれだった。


そのせいか、少し気が抜けてしまった。

全く、こいつらと話していると、時間が幾らあっても、足りない気さえしてきた。




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