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「一体何度言えば諦めてくれるんだろう....」
僕は一人愚痴を溢しながら生徒会室の前までの廊下を歩いていた。
いつも誘いを断るのに、こうもあの手この手で呼びされては流石に嫌気が差してくる。
今回はもう何も言ってこない程に断ろうと思っていたら生徒会室の前までたどり着いた。
そしてその扉の奥から見知った人の怒鳴り声が聞こえてくる。
「.......校内放送のせいで来ちゃったのか」
校内放送で呼べば僕を生徒会に入れたくない"副会長"が来るのも分かっていただろうに......いや、あの人は"それを分かってて"やったんだろうな。
「ホント、迷惑なことだよな...」
こうして何時までもここに立ち尽くしても意味がないので、僕は嫌々目の前の扉を開けた。
「......から私はッ、!?」
「やあ、待っていたよ如月 颯斗君」
目に写ったのは窓際の中央に置かれた高級感ある木製の机と椅子、それに優雅に座り机の上に両肘を立て手を組んでいる現生徒会長 嶺岸 麗子と、机の前に立って生徒会長に怒鳴っていた現副会長の如月 凜.....まあ、僕の妹がそこにいた。
「にッ......何しに来たんですか?」
何かを言おうとして咄嗟にそれを飲み込み、冷たい目と声で僕に問いかけてくる凜。
それに若干傷付きながらも、僕はいつものように肩をすくめて苦笑いをする。
「校内放送で呼ばれたからだよ。
無視しようと思ったけど、そうすると校門前で待ち伏せされるからね」
実際に呼び出しを無視したら校門前で待ち伏せされたあげく、必要以上に勧誘してきたのであのときは本当に困った。
何せこの学校のアイドル兼お姉様と呼ばれている美少女の生徒会長がCクラスで"副会長のお荷物"と呼ばれる僕にたいして「君という人材が欲しい」とか「君じゃなきゃ駄目なんだ」等の言葉を繰り返し、挙げ句の果てには「君が入ってくれないなら死んでやる!!」と暴走する始末。
あのとき生徒会長メンバー全員が来て会長を止めてくれなければ、下校中の生徒たちの"気を逸らしていたのが壊されて"面倒な事態になっていたと思う。
だからこうして出向いているわけだけど、凜はそれがお気に召さないみたいだ。
まあ凜にしてみれば嫌いな僕が生徒会に入るかもしれない可能性がある行動が嫌なんだろうけど.......自分で思って悲しくなってきた。
「無視しようと思ったとは酷いな。
そんなに私が嫌いなのかい?」
僕の言葉に反応した会長は少し拗ねた感じでそう言ってきた。
僕は苦笑のまま答える。
「会長の事は嫌いじゃないですし、生徒会自体も嫌いじゃないですよ」
「そうか、それは良かった」
素っ気ない言い方ではあるがその実、声は嬉しそうで顔には眩しいくらいの笑顔を浮かべていた。
それにつられて僕も笑顔になり、場の空気が多少暖かくなった。