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ピリリリリリリリリリリリ!!!!!!
「.....」
爽やかな朝をぶち壊す騒音により、まだ眠気の取れない身体を起こして僕は目覚めた。
目覚めた、と聞くと何故か壮大なイメージを持ってしまうのは僕だけではないだろうとどうでもいいことを考えながら目覚まし時計を止め、ベットから出てジャージに着替える。
時間はまだ早朝の5時。
普通の学生ならまだ暖かいベットの中で寝ている時間帯だが、僕は昔からの習慣でやっているジョギングと"軽い運動"をしなければならないと、最早それが義務であるかのように続けている。
ジャージに着替え終わり、二階の角部屋にある自室から出て廊下を歩き階段を降りる。
「あ.....」
階段を降りる途中、下から声が聞こえた。
電気を点けていないから暗くてよく見えないが、ポニーテールにしている青髪が見えたので妹だと分かった。
「.....こんな時間に何をされているんですか?」
少し沈黙が続いて、妹の方から冷たい声でそう聞いてくる。
僕はわざとらしく肩をすかして答える。
「見ての通り習慣づいた特訓だよ」
「...............あー、まだ続けていたのですか」
何故かまた沈黙してた妹は、更にまた冷たい声で返す。
僕は「お陰様で」とわざとっぽく返し、それにより妹の目にまで冷たさが宿る。
「あなたがそんなことしても無意味だと思いますけどね。
そんな昔からの習慣何て引きずらずにマジックを少しでも覚えたらどうですか?」
「そうだね、君の意見が正しいよ」
「そう思うのならそうしてくれると助かるのですが。
あなたの学校での評価は、少なからず私にも影響するってこと分かってますか?」
この短い会話で分かると思うが、僕は妹に嫌われている。
昔はよく僕の後ろをついてきて兄さん兄さんってなついてくれていたのに、いつの間にか僕から離れて"あいつ"とよくいるようになっていた。
まあ思春期ってのもあるし、あいつなら安心して任せられるから良いのではあるけど......兄さんは少し寂しいぜ。
「すまないな、迷惑かけるよ」
僕はそれだけ言うと冷たい妹の横を通り過ぎて、目の前の玄関に向かう。
「......私は、あなたが嫌いです」
靴を履いた辺りで歯を噛み締めただろうギリッという音が聞こえたあと、そんな言葉を言った。
僕は振り替えることなく「ごめん」と一言だけ言ってドアを開け、昔三人でやっていた特訓へ出掛けた。