突然の再会
・・・・・・・暑ッ!!何をしていても真夏の暑さは時を選ばず、俺に熱気をはこび、俺の体力とやる気を奪っていく。
今なら世界が滅んでも、暑いと思うことの方が重大だろう。それほどまでに今の俺の家は暑いのだ。なにせ、俺の家は代々続いている神社なのだから。厳格な神主である両親はクーラーなるものや扇風機を我が家に持ち込むことを災いとし、おかげで家にはうちわと扇子しか暑さをしのげるものはない。両親は、 「2つあるからまだいい。」
と、言っていたが、うちわと扇子の使い道は扇ぐ以外に思いつかなかった。
扇ぐものが二種類あるからって状況変わるわけ無いだろ!あまりの過酷さに俺は少し目頭を濡らした。ふと、境内に植えられている大きな木に目をやった。木の周りには暑のせいか、寿命なのか、けっこうな数のセミが死んでいた。ああ、俺もあんな風に死んでいくのか・・・・・・。あまりの暑さとおびただしい数のセミの死体で俺の精神はすりへり、目の前の景色が陽炎のようにゆらゆら揺れた。揺れ動く視界の中でひとつだけ、と言うよりは一人だけ俺の目にマトモに映った人がいた。思わず、俺は境内に出ていき、その人へ近づいていった。ここからだと後ろ姿しか見えない。 「あの………」
声を掛けようとしたら、イキナリその人が振り返った。髪型はショート、整った顔立ちで茶色の瞳。服装は真っ白なブラウスに濃紺な色のスカート。黒のソックスに黒い靴をはいていた。素敵な人だった。 「こんにちは」
イキナリ挨拶されたからちょっと動揺。その動作がおかしかったのか、彼女は少し笑っていた。彼女に笑われたことが妙に恥ずかしかった。何故だか知らないが、ずっと昔にもこんなことがあったような気がしてならなかった。すると彼女が、
「やっと会えたね、浅岡君!昔と全然変わってない」
それを聞いた俺は走馬灯のように(もし本当なら、死ぬ直前なのだが)昔の記憶がよみがえってきた。それは、幼稚園の時の記憶。仲のよかった女の子が遠く離れた所に引っ越してしまった時の儚い記憶。今思えば初恋の人だった彼女が12年ぶりに俺のにいる。 「もしかして…サヤノ!?」
「当たり〜!久しぶりだねぇ〜!」
自分も昔と変わらないハイテンションのくせにと思いながら、 「いつから帰ってきてたのか?」
と聞いた。 「今日だよ〜」
と、サヤノはまた、ハイテンションで答えた。 「そっか……」
俺は夏休みの初日にサヤノに会えたことに少しドキドキした。なにせ、12年ぶりの再会なのだから。