四話目+英語vs蘭南 前編
コンコン———
「お兄ちゃーん」
「ん?」
いつもは鍵が開いてても強引にドアを叩いたりするのに軽くノックをして蘭南が入ってきた。
俺は午前中する事も無かったからベッドに転がり漫画を読んでいた。
「どうした?」
蘭南は入ってきても両手を隠すだけで何も言おうとしない。
「あのね?…英語教えてほしいの…」
「…この俺に頼む?」
「お姉ちゃんは忙しいって言ったから…」
姉貴が忙しい訳ねぇだろ…。
またPCでもやってるのか…もしくは教えるのが面倒くさかったのか…だな。
俺は体を起こすとベッドからおり、床に座る。
するとなぜか蘭南は俺の横に座る。
「…何で隣に座るんだ?」
「……」
「正面の方が教えやすいんだが…」
「……」
蘭南は黙ったまま首をふる。
…まぁいいや。
「で?英語のなに?」
「会話文を覚えないといけなくてね?昨日頑張って覚えたの」
あぁ、夜中の11時くらいに聞こえてたのはそれか…。
てっきりなんかの呪文でも唱えてるのかと…。
つか、そのせいで俺あんまり寝れなかったんですけど!!!!
「おう、言ってみな?」
「えと…相手になって私の質問に答えてくれる?」
「あぁ…分かればな」
すると蘭南は思い出す仕草を始める。
俺はその間中学で習った英語を思い出していた
「Hello.」
「え、そこから!?Hello」
質問がくると思ってたのに。
挨拶からだったのか…つかはろーくらい悩まず言えるだろ。
どんだけ自信ねぇんだ。
「わっちゅゆあーねいむ?」
…何て言った?今。
Helloは無駄に発音よかったくせに一気に発音悪くなったな…
しかも何だ『わっちゅ』って…。
「My name is Takuya.」
「Nice to meet you.」
いや順番おかしいだろ。
俺ら初対面の設定?
だったらいきなり名前聞くの失礼すぎるだろ。
「…Nice to meet you too.」
「は、はうおーるどぅわーゆー」
「は?」
何語喋ってんだ、お前はさっきから!!!
これ何が聞きてぇのかわかんねぇから!!!
「はうおーるどぅわーゆー!!」
いや変わってねぇから。
そんな『ゆー』を強調されても…。
「…Pardon?」
「だーかーらっ!!何歳ですかって聞いたの!」
「痛い痛い痛い…」
蘭南は何度も聞き返す俺に怒ったのか教科書で俺を殴る。
俺のせい?…発音が悪くて聞き取れないのは俺のせいじゃないだろう…。
「んじゃ次いくねっ」
「…まだあるのか…」