表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/85

第74話「放課後のコンビニとアイス」

退院してから初日の放課後。

ヤヤは校門を出た瞬間、小さくため息をついた。


「はぁ……完全ノー勉で小テストは無理だろ……」


数学の小テスト。問題を見た瞬間、頭が真っ白になった。

寝たきりブランクは伊達じゃない。

しかも、よりによって現実を見たくない点数を容赦なく返してきた。

その紙を手にぶら下げながら歩くヤヤの横で、ユウヒが覗き込む。


「ヤヤくん〜、顔が死んでるよ?

 ほらほら〜見せなって」


「嫌だよ。絶対バカにするだろ」


「しないよ〜。……多分ね?」


「“多分”って言っちゃってるじゃん!!」


そんなやり取りをしながら、二人はいつものコンビニに到着する。

ユウヒはヤヤの肩をトントンと軽く叩いて、店内を指さした。


「じゃ、慰めアイス買ってあげるから。選んでおいで」


「アイス……」


その響きに、ヤヤは少しだけ肩の力が抜けた。

アイスの冷たさに癒やされる感じ、悪くない。


--

店内に入ると、ユウヒは真っ先にアイスコーナーへ走る。

その速さにヤヤは苦笑した。


「……なんだよ、その全力ダッシュ」


「いや〜、アイスってテンション上がるじゃん?

 それに今日は特別だし」


「特別?」


「うん。ヤヤくん退院記念日」


ぱっと振り向いて、いたずらっぽく笑うユウヒ。

ヤヤは思わず言葉に詰まる。


「……別に記念日ってほどじゃ……」


「あるよ。ヤヤくんが無事で、隣歩いてくれてる。それ以上の記念日ないよ」


平然と言うくせに、ユウヒは目をそらして照れ隠し。そんなところがまたズルい。

ヤヤはごまかすように、ソーダアイスを手に取る。


「俺はこれでいいよ。安定のソーダ。王道って感じの」


「はーい、じゃあ私は……これ!」


「え……それ買うの?」


ユウヒが掲げていたのは――

コーンポタージュ味のアイス。


「いや、なんでそれ選ぶんだよ!?」


「え、だって気になったんだもん。初挑戦だよ?」


「挑戦の方向性がバグってるだろ!」


「え〜?ヤヤくんだって一口食べたいくせに〜」


「絶対いらない!!」


そんなことを言い合いながら会計を済ませ、コンビニ前のベンチに腰掛ける。

ヤヤはソーダアイスを開けて、ひんやりした甘さに少しだけ救われる。

対してユウヒはワクワクしながら謎アイスを開封した。


「じゃ、いただきまーす!」


「本当に食べるのか……?」


もぐっ、とユウヒは一口。


数秒静止する。


「どう?」


「……………うん」


「うん?」


「……………コーンスープが……冷たくなって……がんばってる……味?」


「説明が雑!!いや、がんばってる味って何!?」


ユウヒはむぐむぐしながら、なぜかもう一口食べる。


「ねぇヤヤくん、思ったより……」


「思ったより?」


「……癖になる」


「ならねぇよ!!」


その必死のツッコミに、ユウヒは声を立てて笑った。

その笑顔に、ヤヤの落ち込みはすっかり薄れていく。

しばらく二人でベンチに座り、アイスを食べ続けた。

夕方の空は少しオレンジが混ざっていて、風が気持ちいい。


「……なんかさ」


ヤヤがぽつりと呟くと、ユウヒが首をかしげる。


「ん?」


「こういう日常、久しぶりだなって思って」


「そうだね。ヤヤくん、ずっと戦ってたから」


「……ユウヒもだろ?」


「でも、こうやって一緒にアイス食べられるなら、それでいいじゃん。明日もさ、ヤヤくんが落ち込んだら、また変なアイス買ってくるから」


「アイスは嬉しい……でもお願いだから普通のにしてくれ」


「やーだ。ヤヤくんがツッコむの好きだから〜」


「お前のために俺が存在してんじゃねぇよ……」


「え、違うの?」


「違うよ!!」


ユウヒはケラケラ笑い、ヤヤはため息をつきながらも笑ってしまう。


 ――ああ、こういう時間がずっと続けばいいのに。


そんなことを、誰にも聞こえない声でヤヤは思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ