第40話「決着」
炎と闇が、ぶつかり合った。
轟音とともに地面が抉れ、吹き荒れる衝撃波が観客まで届く。
ヤヤとケイ――二人の“覚醒者”が、空へと舞い上がっていた。
黒き翼と、炎の翼。
夜空を裂くように交差し、火花と闇の閃光が散る。
「いくぞッ、ケイ!!《葬鎌・夢想》!!」
ヤヤの声とともにが唸りを上げた。
黒雷を纏い、闇そのものを斬り裂くようにケイの懐へと突き出される。
ケイは微動だにせず、右手の燃え盛る巨大なフォークの先端から紅蓮の炎が奔流のようにさらに噴き出し、ヤヤの鎌と激突する。
――パリン。
次の瞬間、ヤヤの死神の大鎌である葬鎌・夢想の闇のオーラが、嘘のように消え失せた。
「なぁ……っ!?」
ヤヤが目を見開く。
ケイはわずかに口角を上げ、静かに告げた。
「そうだ。今ので気づいたか?……俺の《八咫叉》は、あらゆる異能の効果を――打ち消す。」
「その炎のフォーク……異能の効果を無効化するのか……!」
ヤヤの声は、驚愕と興奮の入り混じったものだった。
ケイは燃え盛る巨大なフォークを回しながら、逆光のような笑みを浮かべる。
「君の神器――《葬鎌・夢想》だったか……さっきの銃と同じ力の系統のようだな。想像が現実となる……ただし、それを俺が“否定”できる限りは、どんなことを想像しようと意味をなさない」
「……なるほどな」
ヤヤは鎌を構え直す。瞳の奥で黒い稲妻が走った。
「俺はあらゆる異能を“生み出す”。あんたはあらゆる異能の効果を“打ち消す”。――つまりここからは、真っ向勝負ってことか。」
ケイの口元がわずかに歪む。
「その通りだ。……面白いじゃないか」
次の瞬間、二人の影が弾けた。
爆風。炎。闇。轟音。
互いに神器を振るい、空中で何度も衝突を繰り返す。
《夢想》が想像した爆破、拘束、雷撃――だがケイの《八咫叉》がそれを触れた瞬間、すべてを“消す”。
黒雷が弾け、炎が掻き消え、ただ残るのは二人の荒い呼吸と火花の匂い。
「す、すげぇ……」
地上で見上げるカイトが息を呑んだ。
「異能が……消されてる?そんなこと……!」
ユウヒが言葉を失う。
シルファはうっとりしながら自信に満ちた表情で呟く。
「やはり……最強はあなたです。ケイ……」
戦いはさらに加速した。
ケイの炎が渦を巻き、背中の太陽の翼がさらに輝きを増していく。
動きが……速い。ヤヤの目で追えない。
次の瞬間、ケイの姿が――消えた。
そして、背後。
「速いっ!?」
振り向くより早く、八咫叉の一撃がヤヤの胴を貫いた。
爆炎とともにヤヤの体が吹き飛ぶ。
トリガーモードの闇が霧散する。
地に落ちたヤヤは、苦悶の声を漏らす。
ケイも地上に降り立つ。ゆっくりとフォークを下ろし、燃える瞳で倒れたヤヤを見下ろした。
「いい忘れていたが俺の《八咫叉》は――異能を打ち消せば打ち消すほど、俺の身体能力を強化する。炎も速さもパワーもすべてが加速していく。」
「くっ……バカな」
ヤヤの目が驚愕に見開かれる。
カイトが叫ぶ。
「ヤヤ!! 立て!!」
「ヤ、ヤヤ君……」
ユウヒが泣きそうな声で手を握りしめる。
だがケイ立てない。ただ、静かに地に倒れたままだ。
「どうやら決着がついたようだな……俺の勝ちだ」
太陽の光のような炎が、ケイの背からゆらりと揺れる。シルファはその姿を見つめ、頬をほんのり赤く染めた。
「お疲れ様です……あなた♡」
炎と闇の戦いは、こうして幕を閉じた。
第二試合、勝者は茜坂ケイとキョウは宣言するのだった。




