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第36話「最強への挑戦」

「……さて。第一試合は――遅刻してきたコードⅠにやってもらうとしようか」


キョウが腕を組み、スクリーンに目をやる。


「問題は対戦相手だな。誰にぶつけるか……」


訓練場の空気がざわつく。

誰もが互いの顔を伺い、目を逸らした。

“茜坂夫婦”という言葉そのものが、もはや恐怖と同義になりつつある。


「コードⅢか……いや、あそこは昨日の仕事の負傷がまだ残ってるな。コードⅦは後半予定だし――」


キョウが顎に手を当て、思案するように視線を泳がせたその時。


「その試合、ウチでやらせてください」


訓練場の中心で、ひときわ明るい声が響いた。

視線が一斉に向く。

そこに立っていたのは、桃色の髪を軽くかき上げたレインだった。

唇の端に浮かぶ笑みは、どこか挑発的で、まるで“退屈を壊しにきた”ような気配を纏っている。


「……コードXIII、です」


一瞬、静寂。

次の瞬間、どよめき。


「はぁ!?」「マジで?」「相手コードⅠだぞ!」

周囲の声を意に介さず、レインはしなやかに腰へ手を当て、キョウを見上げる。


「ボス、いいでしょ? 新参チームの実力、ここで見せなきゃ印象薄いままですから」


キョウは眉をひとつ上げた。


「……理由はそれだけか?」


「もちろん、それだけですよ♡」


レインは涼しい顔で言い切る。

だが、その目の奥に、何かがちらついていた。


(――あの旦那さん、やばいほどイイ男ね~。

仲良くなって遊んでみたくもなるわよ♡ふふっ……!)


唇の端がわずかに上がる。

そんな下心を完璧に隠しながら、彼女は真面目な声を作る。


「それに、“最強”の意味を確かめたいんです。

私たちがどれだけ通用するか――いい経験になるかと」


キョウはわずかに笑い、腕を下ろした。


「……いいだろう。第一試合、コードⅠ対コードXIII。承認する」


その瞬間、会場の空気がざわめきから静寂に変わった。

誰もが信じられないものを見るような目をしている。


ヤヤがレインを見て、思わず声を漏らす。


「……あいつ絶対悪いこと考えてるだろ」


カイトが苦笑しながら頭をかく。


「だろうな……ったく肉食系女子は恐いぜ」


ユウヒもレインの瞳の奥に漂う“妙な艶”を見逃さなかった。


(うわぁ……あの目、戦うより別の意味で狩る気だね~)


レインは自信満々に前へと進む。その後をカイト、ヤヤ、ユウヒはついていく。

そして、訓練場の中央――茜坂夫婦の前に立った。


ケイが柔らかく笑い、手を軽く上げる。


「コードXIIIか。最近できたチームだって噂で聞いたよ。俺は茜坂ケイ。よろしくな」


その笑顔――まっすぐで、曇りがなくて、罪深いほどに爽やかだった。


レインの口角がさらに上がる。


(あー、やっぱり顔が良い。想像以上ね)


「こちらこそ。光栄です、茜坂さん」


「ははっ!ケイでいいよ。堅苦しいのは苦手だ」


レインの声のトーンは真面目そのもの。だが、瞳だけが妙に濡れていた。

その横でシルファが静かに夫の腕に触れ、柔らかく微笑む。


「まぁ……先日、私達の店にいらっしゃった方々ですよね?あなた達、ジャスティスだったのですね」


ヤヤが小さく息を呑む。


「やっぱり覚えてたのか」


ケイがへぇ……と驚きながら言葉を口にする。


「奇遇だな。トラモント亭に来てくれてたとは。俺達普段は料理人なんだ。元々京都で店を出してたんだが最近東京に移店してな」


「そうだったのか。旨かったぜ。あの飯。それにしても縁ってのは面白いもんだ」


「ああ!同感だ」


カイトとケイがそんな穏やかな会話をしている一方で空気はじわりと張り詰めていく。

シルファの微笑みが、氷のように静かに冷たくなったからだ。


「……ふふ。それはさておき――少しだけ、“遊んで”差し上げますね。」


その声は優しく、けれど底に鋭い刃を潜ませていた。

まるで“処刑宣告”を囁く天使の声。


次の瞬間――

電子音が鳴り、フロア全体に淡い青の光が走る。

照明が落ち、戦闘モードを示すラインが床を走り抜けた。


――コードⅠ 対 コードXIII。

いよいよ戦いのゴングが鳴り響こうとしていた。

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