第九話 思わぬ協力者
翌日、三人は役場に向かった。正式な許可を得るためである。しかし、受付で待たされること二時間。ようやく担当者が現れた。
「君たちが例の装置を作った者か」
現れたのは痩せぎすの中年男性で、書類の山に埋もれているような役人だった。名札には「衛生管理課 課長補佐 レジナルド・ペーパーワーク」とある。
「はい、温水洗浄器の開発者です」
「温水洗浄器?何だそれは。報告書には『水を噴射する装置』としか書いてないぞ」
ウォル=水原は内心でため息をついた。お役所仕事は異世界でも同じらしい。
「人体を清潔に保つための装置です。具体的には…」
「待て待て」レジナルドが手を上げた。「まず申請書類を提出してもらう。様式第27号から第34号まで、全8種類だ」
「8種類も!?」
「当然だ。新商品の認可には厳格な審査が必要なんだ。特に人体に直接触れるものとなると…」
その時、役場の奥から声が聞こえてきた。
「レジナルド!また新しい発明家をいじめているのか!」
現れたのは白髪の老紳士だった。服装から見て、かなり地位の高い人物のようだ。
「あ、アルバート様…」
レジナルドの態度が一変した。
「君たちが噂の温水洗浄器を作った者たちか。私はアルバート・ワイズマン、この町の町長だ」
「は、初めまして!」
三人は慌てて頭を下げた。
「レジナルド、彼らの装置を実際に見たのか?」
「いえ、まだ書類審査の段階でして…」
「だめだな。実物を見ずに判断などできるわけがない。さあ、案内してくれ」
アルバート町長の権限で、三人は特別に装置の実演を行うことになった。町長は興味深そうに装置を眺めている。
「ほう、これが水魔法を応用した衛生器具か。面白い発想だ」
ウォル=水原が装置の仕組みを説明すると、町長の目が輝いた。
「素晴らしい!これがあれば、町の衛生状況が大幅に改善される」
「町長がそう言ってくださると…」
「実は、私も長年この町の衛生問題に頭を悩ませていたのだ。特に夏場の疫病の流行は深刻で…」
町長の話によると、この町では毎年夏になると下痢や皮膚病が蔓延するらしい。原因は明らかに衛生状態の悪さだった。
「この装置が普及すれば、病気の発生を大幅に減らせるかもしれない」
「ぜひそうしたいです!でも、認可の手続きが…」
「レジナルド!」
「は、はい!」
「この装置の認可を最優先で進めろ。町の公衆衛生改善のための特別事業として扱う」
「し、しかし規則では…」
「規則は人のためにあるものだ。人が規則のために犠牲になってはならない」
町長の一言で、認可手続きは一気に進むことになった。
「ありがとうございます、町長!」
「いや、感謝すべきは私の方だ。君たちのような若者がいてくれて心強い」




