第七話 予想外の反応
一週間後、三人は最初の試作品を完成させた。魔石を組み込んだ小さな洗浄器で、レバーを引くと温水が適度な圧力で噴射される仕組みだった。
「よし、これを実演販売してみましょう」
市場の一角で、ウォル=水原たちは実演を始めた。最初は物珍しそうに見ていた人々だったが…
「お尻を洗う?何それ?」
「汚いことを大声で言うんじゃない」
「そんなもの、川で洗えばいいだろう」
予想以上に冷たい反応だった。
「でも、これを使えば清潔になって、病気も予防できるんです!」
ウォル=水原の必死の説明も、なかなか理解してもらえない。
そんな時、一人の中年男性が近づいてきた。
「君たち、面白いものを作ったね」
男性は上質な服を着ており、明らかに裕福な商人だった。
「私はマルクス・ゴールドハンマー。この町で一番大きな商会を営んでいる」
「あ、あの有名な…」エルナが驚いた。
「この装置、私に売ってくれないか?」
三人は顔を見合わせた。思わぬ申し出だった。
「もちろんです!でも、お使いいただけるのでしょうか?」
「使う?いやいや、これは武器として売れるよ」
「え?」
「考えてもみたまえ。これだけの水圧があれば、護身用に使えるじゃないか。盗賊除けにもなる」
ウォル=水原は愕然とした。温水洗浄器が武器として認識されるなんて、想像もしていなかった。
「あの…これは清潔を保つためのものなんです」
「清潔?ああ、水で汚れを洗い流すという意味か。確かに血を洗い流すのにも使えそうだ」
完全に話がかみ合わない。
「ちょっと待ってください」エルナが割って入った。「マルクスさん、この装置の本当の価値を理解していませんね」
「ほう?」
「これは革命的な衛生機器なんです。使えば体が清潔になって、病気にかかりにくくなる。つまり、医療費が削減できるんです」
商人の目が輝いた。金の話になると、理解が早い。
「なるほど…確かに病気が減れば薬代も浮く。それは商売になりそうだ」
「そうでしょう?これは単なる武器じゃなくて、健康維持のための投資なんです」
エルナの商才に、ウォル=水原は感心した。
「よし、じゃあこの装置を十個注文しよう。銀貨五十枚でどうだ?」
「五十枚!?」
一個あたり銀貨五枚。材料費を考えれば破格の条件だった。
「ありがとうございます!」
こうして、異世界初の温水洗浄器の販売が成立した。




