表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/36

第三十五話 技術学院の設立

 故郷の町での技術学院設立計画は、予想以上に大きな反響を呼んだ。


「世界各国から入学希望者が殺到しています」

 エルナが入学申込書の山を見せた。

「こんなに?」

「はい。大陸十二ヶ国すべてから応募があります。東大陸からも多数の希望者が」

「定員は何人にしましょう?」


「最初は百人程度が妥当でしょう」

 町長が提案した。「宿舎や教室の問題もありますから」


「でも、これだけ希望者がいると、選考が大変ですね」


 その時、リリィが面白いアイデアを出した。

「選考試験の課題を『温水洗浄便座の改良案』にしてはどうでしょう?」

「それは…斬新ですね」

「技術への理解度と創造性、両方を測れると思います」

「面白いですね。やってみましょう」


 かくして、史上初の「温水洗浄便座改良コンテスト」による入学選考が行われた。

 応募作品は実にバラエティ豊かだった。


「砂漠仕様の節水型装置」

「山岳地帯の高地対応型」

「船舶用の揺れに強い設計」

「魔法効率を極限まで高めた超高性能型」


 どれも創意工夫に富んでいる。


「採点が困りますね」

「でも、どの作品からも技術への真摯な姿勢が感じられます」


 最終的に、百人の合格者が決まった。各国から様々な背景を持つ学生たちが集まった。


 学院の開校式では、大陸各国から来賓が参加した。


「ワールド・テクニカル・アカデミーの開校を宣言します」

 ウォル=水原が式辞を述べた。

「この学院の目標は、世界を楽園に変える技術者を育成することです」

「技術は人々の生活を豊かにするためにあります。利益や名声のためではなく、人類の幸福のために技術を使える人材を育てたいと思います」


「そして、最も重要なことは」

 ウォル=水原は微笑んだ。


「清潔で快適な生活の素晴らしさを、世界中の人々に伝えることです」


 会場から大きな拍手が起こった。


 授業が始まると、学生たちの熱意は想像以上だった。


「水魔法と機械工学の融合理論」

「効率的な配水システムの設計法」

「各地域の気候に応じた技術調整」

「温水洗浄便座の構造と改良方法」


 どの授業も満席で、学生たちは真剣に学んでいた。

 特に人気が高かったのは、実習授業だった。


「実際に装置を分解して、構造を理解しましょう」

「次に、各自で改良版を設計してください」

「完成したら、実際に使用してみて効果を確認します」


 学生たちは目を輝かせて作業に取り組んだ。


 半年後、最初の成果発表会が開かれた。


「極寒地仕様の凍結防止装置を開発しました」

「高温多湿地域での防カビ機能を強化しました」

「船舶用の省スペース設計を実現しました」


 どの作品も実用的で、即座に各国から導入したいという依頼が舞い込んだ。


「学生たちの成長が素晴らしいですね」

 エクセレント様も視察に来ていた。

「技術者としての基礎だけでなく、人々のニーズを理解する姿勢も身についています」

「教育の成果ですね」


 一年後、最初の卒業生たちが世界各国に旅立った。


「私は故郷の村に帰って、井戸の改良に取り組みます」

「僕は商船の設備改善をやりたいです」

「私は新大陸の開拓事業に参加します」


 それぞれが明確な目標を持って巣立っていく。


「みんな、世界のどこにいても、清潔で快適な生活の大切さを忘れないでください」

 ウォル=水原が送辞を述べた。

「そして、温水洗浄便座の素晴らしさを、一人でも多くの人に伝えてください」


「はい!」

 学生たちの元気な返事が響いた。


 こうして、ワールド・テクニカル・アカデミーから巣立った技術者たちが、世界各地で活躍を始めた。


「異世界を楽園に変える…着実に実現していますね」

 町長が感慨深げに言った。

「はい」

 ウォル=水原も満足そうだった。「でも、まだ始まったばかりです。これからもっと多くの人々に、清潔で快適な生活を提供していきたいと思います」


 かくして、一人の水道工事職人から始まった小さな夢は、世界規模の教育事業へと発展し、異世界に新たな文明をもたらし続けるのだった。


 そして今日も、世界のどこかで新しい温水洗浄便座が設置され、初めてその快適さを体験した人が感動の涙を流しているのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ