第三十四話 帰郷と新たな決意
世界規模の水道事業が軌道に乗った頃、ウォル=水原は久しぶりに故郷の町を訪れた。
「ウォル!」
迎えてくれたのは、懐かしい仲間たちだった。
「リリィ、エルナ、みんな元気そうですね」
「あなたこそ!世界的な有名人になって」
「新聞で読みました。大陸会議での活躍、すごかったです」
町は大きく変わっていた。立派な上下水道が整備され、街角には温水洗浄便座の看板があちこちに見える。
「町の様子も随分変わりましたね」
「ええ。あなたの技術のおかげで、町は完全に生まれ変わりました」
案内してくれた町長が誇らしげに説明した。
「病気の発生率は十分の一になり、商業も活発になりました。人口も倍増しています」
「観光客も増えました」
エルナが付け加えた。「『温水洗浄便座発祥の地』として有名になったんです」
「発祥の地?」
「記念館もできました。あなたが最初に作った装置が展示されています」
案内された記念館で、ウォル=水原は感動した。
「これは…」
展示されていたのは、確かに彼が最初に作った簡素な装置だった。今思えば粗雑な作りだが、すべてはここから始まったのだ。
「多くの人が見学に来られます」
館長が説明した。「特に技術者の方々が『原点を学びたい』と言って」
「そうですか…」
館内には、各国での事業の写真や資料も展示されている。王都の配水管工事、デザート王国の淡水化プラント、大陸会議の様子。自分の歩んできた道のりが可視化されていた。
「ウォル殿」
振り返ると、懐かしい顔があった。
「グランドさん!」
土魔法使いのグランドだった。今では王都の工事現場監督を務めている。
「久しぶりですね。会いに来ました」
「元気でしたか?」
「おかげさまで。王都の工事も順調に進んでいます」
「そうですか…最初の仲間たちが皆活躍していて、嬉しいです」
その夜、町の宿屋で昔の仲間たちと再会パーティーが開かれた。
「乾杯!」
「ウォルの成功に乾杯!」
懐かしい顔々が集まっていた。リリィ、エルナ、グランド、そして町長も。
「みなさんのおかげです」
ウォル=水原が感謝を込めて言った。「最初に協力してくれなければ、ここまで来られませんでした」
「何を言ってるんですか」
リリィが笑った。「私たちは最初からあなたの技術が素晴らしいと分かっていました」
「でも、リスクもありましたよね」
「確かに」
エルナも笑顔だった。「でも、やってみる価値があると思ったんです」
「あの頃が懐かしいですね」
グランドが感慨深げに言った。「まさかここまで大きくなるとは思いませんでした」
「これからはどうするんですか?」。町長が尋ねた。
「実は…」
ウォル=水原は少し迷った後、決意を込めて話した。「新しい挑戦を考えています」
「新しい挑戦?」
「はい。これまでは水道技術の普及に専念してきましたが、今度はもっと根本的なことに取り組みたいんです」
「根本的なこと?」
「教育です。技術を教える学校を作りたいんです」
一同が興味深そうに聞いた。
「世界中で技術者が不足しています。でも、従来の魔法学院では実用的な技術は学べません」
「確かに…」
「だから、実践的な技術教育を行う学校を作って、世界中に技術者を送り出したいんです」
「素晴らしいアイデアですね」
「場所はここ、故郷の町にしたいんです」
「ここに?」
「はい。すべてが始まった場所だから。それに、静かで勉強に集中できる環境ですから」
町長が感激した。
「それは…町としても大歓迎です!全面的に協力いたします!」
「みんなも手伝います」
リリィとエルナも賛成した。
「技術学院の設立…新しい挑戦の始まりですね」
ウォル=水原は夜空を見上げた。星々が美しく輝いている。
「異世界を楽園に変える…まだまだ道のりは長いですが、確実に前進しています」
新たな決意を胸に、彼の次なる冒険が始まろうとしていた。




