表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/36

第三十話 砂漠に咲く清潔の花

「温水洗浄便座を普及させる?」

 ドライネス大臣が困惑していた。


「はい。清潔な水の供給と、快適な衛生環境はセットです」

 ウォル=水原は真剣だった。


「砂漠という厳しい環境だからこそ、衛生管理は重要です」

 サンドストーム技師長が興味深そうに尋ねた。

「その温水洗浄便座とは、どのような装置ですか?」


「実際に体験していただくのが一番です」

「体験?」

「はい。アクアマックス所長、例の魔法強化型をお借りできますか?」

「もちろんです」


三十分後。


「これは…これは…」

 トイレから出てきたサンドストーム技師長の目には涙が浮かんでいた。

「革命です!これは完全なる革命です!」


「どうでした?」

「砂漠では水が貴重で、満足に体を洗うこともできません。でも、これがあれば…常に清潔でいられる!」

 

 ドライネス大臣が眉をひそめた。

「技師長、たかがトイレ装置で大袈裟な…」

「大臣、ぜひ一度お試しください」

「私は結構です」


 しかし、サンドストーム技師長は必死に説得した。

「大臣、これは我が国の衛生問題を根本から解決する可能性があります」


「そんなわけが…」

「お願いします。一度だけでも」

押し切られたドライネス大臣は、渋々トイレに向かった。


二十分後。


「…………」

 ドライネス大臣は放心状態で戻ってきた。


「大臣?」

「私は…私は何を反対していたのでしょう…」

「大臣?」

「これは…これは砂漠の民にとって福音です」

 またしても温水洗浄便座の威力が発揮されたのだった。


「技術提供を受け入れます」

 ドライネス大臣は深々と頭を下げた。「海水淡水化プラントと、温水洗浄便座の両方を、我が国に導入させてください」


「喜んで協力いたします」

 エクセレンシー首相も笑顔だった。


「これで両国の関係も改善されますね」


 かくして、アクアティック王国とデザート王国の間で、史上初の「水技術協力協定」が締結された。

 一ヶ月後、ウォル=水原はデザート王国の首都オアシスポリスにいた。


「こちらが建設予定地です」

 案内してくれたのは、すっかり協力的になったサンドストーム技師長だった。

「海岸から五キロ内陸の平地です。ここに淡水化プラントを建設します」

「良い場所ですね。海水の取水も、真水の配送も効率的にできそうです」

 建設工事は、両国の技術者が協力して進められた。アクアティック王国の水魔法技術と、デザート王国の砂漠工学技術の融合である。


「砂嵐対策の建築技術は参考になります」

「こちらこそ、水魔法の効率化技術を学ばせていただいています」

 国際的な技術交流が活発に行われていた。

 そして三ヶ月後、ついに砂漠初の海水淡水化プラントが完成した。


「稼働開始!」


 巨大な装置がうなりを上げて動き出す。海水が吸い上げられ、魔法と技術の力で清潔な真水に変わっていく。


「成功です!一日一万リットルの真水を生産できます!」

 デザート王国の人々は歓喜した。


「もう水不足で悩まなくて済む!」

「子供たちに清潔な水を飲ませてやれる!」

「商売でも安心して水が使える!」


 しかし、真の革命は別のところで起きていた。


「温水洗浄便座の普及率が九割を超えました」

 サンドストーム技師長が報告した。


「砂漠の民にとって、これほど歓迎された技術はありません」

「それは良かったです」

「おかげで、感染症の発生率が八割減少しました。医療費も大幅に削減されています」

「経済効果も絶大ですね」

「はい。水関連の病気が減ったことで、労働生産性が向上しました。国全体のGDPが二割増加しています」


 ウォル=水原は感慨深く思った。

「異世界を楽園に変える…少しずつ実現していますね」


 しかし、彼はまだ知らなかった。この成功が、さらに大きな注目を集めることになることを。


「ウォル殿、緊急の連絡です」

 エクセレンシー首相から魔法通信が入った。


「何でしょうか?」

「大陸会議から正式な招待状が届きました」

「大陸会議?」

「各国の首脳が集まる国際会議です。貴殿の技術について説明を求められています」

「私が?」

「はい。どうやら、アクアティック王国とデザート王国の技術協力が大陸全体で話題になっているようです」


 ウォル=水原の技術は、ついに大陸レベルで注目されることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ