第二十八話 魔法技術の革新
マジック・ウォーター組合長の協力により、研究は飛躍的に進歩した。
「従来の魔石効率が三倍になりました」
アクアマックス所長が興奮して報告した。
「アクアティック式水魔法陣と、ウォル式実用設計の融合が成功したのです」
実際、新しい装置は驚異的な性能を示していた。
少ない魔力で大量の水を浄化し、温度調節も自在。さらに、魔法使いでなくても操作できるほど簡単だった。
「これなら一般家庭でも導入可能ですね」
「しかも維持費が従来の十分の一です」
エクセレンシー首相も大満足だった。
「これで我が国の水問題は一気に解決するでしょう」
しかし、ウォル=水原はある問題に気づいていた。
「所長、この技術をさらに発展させれば、もっと大きなことができるのではないでしょうか?」
「大きなこと?」
「海水の淡水化です」
一同が息を呑んだ。
「海水を真水に変えるということですか?」
「はい。アクアティック王国は海に面していますから、無限の水源があることになります」
アクアマックスの目が輝いた。
「理論的には可能ですが…膨大な魔力が必要になります」
「なら、魔力を節約する方法を考えましょう」
ウォル=水原は前世の知識を総動員した。逆浸透膜、電気分解、蒸留法。様々な淡水化技術を魔法と組み合わせて検討する。
「この方式はどうでしょう?」
設計図を見せると、研究者たちが驚嘆した。
「太陽光を集めて水を蒸発させ、魔法で効率化する…画期的です」
「しかも維持費がほとんどかからない」
「これなら砂漠の国でも導入できますね」
研究チームは興奮していた。しかし、実験が始まってすぐに予想外の問題が発生した。
「大変です!隣国のデザート王国から抗議が来ています!」
「抗議?」
「『我が国の貴重な水源を奪う気か』と言ってきました」
エクセレンシー首相が困惑した。
「海水淡水化が他国の水源を奪う?意味が分からない」
「どうやら、デザート王国は水不足で困っているらしいのです。それで、我が国が大量の真水を作ることを警戒しているようです」
「理不尽ですね」
ウォル=水原も呆れた。
しかし、国際問題に発展する前に解決策を考える必要がある。
「なら、デザート王国にも技術を提供すればいいのでは?」
「それは…外交上、複雑な問題になります」
「なぜですか?」
「両国は長年にわたって水の権利を巡って対立しているのです」
アクアティック王国とデザート王国。水の豊富な国と水不足の国。確かに複雑な関係だろう。
「でも、技術があれば両国とも問題が解決するじゃないですか」
「理屈ではそうですが、政治的には…」
その時、研究所に緊急連絡が入った。
「デザート王国の使節団が到着しました!」
「もう来たのですか?」
「しかも、かなりの大人数です。軍の護衛も付いています」
緊迫した空気が流れた。まさか軍事的な圧力をかけてくるつもりだろうか。
「どうしましょう?」
エクセレンシー首相も困り果てている。
しかし、ウォル=水原には一つのアイデアがあった。
「首相、私に任せていただけませんか?」
「何をするつもりですか?」
「直接交渉です。技術者同士で話し合えば、解決策が見つかるかもしれません」
「危険すぎます」
「でも、このまま対立していても何も解決しません」
ウォル=水原の決意は固かった。
「異世界を楽園に変えるためには、国境を越えた協力が必要です」
使節団との対面が始まろうとしていた。果たして、水を巡る国際対立は解決できるのだろうか。




