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第二十五話 予想外の協力者たち

 コマーシャルとディーラーの改心は、組合内部に大きな波紋を呼んだ。


「何だって?コマーシャルとディーラーが寝返った?」

 ビジネマンは事務所で怒り狂っていた。


「組合の幹部が敵に協力するなど、前代未聞だ!」

「でも、ボス」別の幹部が恐る恐る報告した。「二人とも『人生が変わった』と言って、もう普通のトイレを使いたがりません」

「バカな!たかがトイレ装置ごときで!」


 しかし、組合内部の分裂は止まらなかった。コマーシャルとディーラーが密かに他の幹部たちにも温水洗浄便座を紹介し始めたのだ。

「騙されたと思って、一度だけ試してみろ」

「そんなものに興味はない」

「いいから!後悔はさせないから!」


一週間後。


「ボス…申し上げにくいのですが…」

「何だ?」

「幹部の八割が…その…敵側に協力すると…」

「何だと!」


 ビジネマンは愕然とした。組合の中枢が次々と寝返っているのだ。

 一方、技術評価委員会では予想外の展開に戸惑っていた。


「資材の調達が急に順調になりました」

 アクアが報告した。「コマーシャル議員の口利きで、運送業者の協力が得られるようになりました」


「人手不足も解消されています」

 ヘルスィが続けた。「ディーラーさんが『水道工事は素晴らしい事業だ』と宣伝してくれているおかげで、志願者が殺到しています」


 エクセレント様は複雑な表情をしていた。


「敵の協力で事業が進むとは…皮肉なものだな」

「でも、本心からの協力なのでしょうか?」

 ウォル=水原が心配した。「単に温水洗浄便座が欲しいだけでは?」


 その答えは、コマーシャル自身から聞くことができた。

「確かに、最初は装置が欲しかっただけです」


 技術評価委員会で開かれた協力会議で、コマーシャルは正直に話した。

「しかし、実際に清潔な水の恩恵を受けてみると、これがいかに重要なことか分かりました」

「どういう意味ですか?」

「私の屋敷で働く使用人たちにも装置を使わせてみたのです。そうしたら、彼らの健康状態が目に見えて改善された。病気で休む者が激減し、仕事の効率も上がりました」


 ディーラーも同意した。

「我々組合員も、実は汚れた水に苦しんでいたのです。利益を追求するあまり、自分たちの健康を犠牲にしていました」

「それに気づいたから、協力を?」

「そうです。本当に市民のためになる事業なら、利益の構造を変えてでも支援すべきです」

「でも、ビジネマンはまだ反対しているのでは?」

「彼も時間の問題でしょう」

 コマーシャルがにやりと笑った。「実は昨日、彼の屋敷に内緒で装置を設置してきました」


「それは…いいのですか?」

「明日の朝には、きっと態度が変わっているはずです」


 翌朝。


技術評価委員会に、ビジネマンから連絡が入った。

「あの…ウォル=水原殿にお会いしたいのですが…」

 声が震えている。


 一時間後、現れたビジネマンは別人のようだった。いつもの威圧的な態度は消え、なぜかしおらしい表情をしている。

「昨夜…屋敷で…その…装置を使ってしまいまして…」

 またかよ、と全員が心の中で思った。


「率直に申し上げます」

 ビジネマンは深々と頭を下げた。「私が間違っていました。水商人組合は、今日から技術評価委員会に全面協力いたします」


「本当ですか?」

「はい。組合の資金、人員、流通網、すべてを水道事業のために提供します」


 かくして、最大の敵だった水商人組合が、最大の協力者に変わった。


「これで建設が一気に進みますね」

 アクアが喜んだ。


「王都全域への配水管敷設も可能になります」ヘルスィも興奮している。

 しかし、ウォル=水原は少し複雑な気持ちだった。


「温水洗浄便座の威力、恐るべしですね」

「技術の力で人の心を動かす…これも立派な革命だ」

 エクセレント様が感慨深げに言った。


「異世界を楽園に変える第一歩としては、上出来じゃないか」


 王都水道革命は、思わぬ形で大きく前進した。しかし、ウォル=水原はまだ知らなかった。この成功が、他の王国からも注目を集めることになることを…。

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