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第二十話 貧民街の天使

 王都南部の貧民街、通称「渇き町」。ここは王都で最も水の確保が困難な地域だった。

「ひどい状況ね...」

リリィが呟いた。人々は遠い井戸まで水を汲みに行き、長時間待たされている。子供たちは汚れた服を着て、明らかに衛生状態が悪い。

「この区画から始めましょう」

ウォル=水原は一つの区画を指差した。約五百世帯、二千人ほどが住んでいる。

「でも、住民は協力してくれるかしら?」

「まずは話してみましょう」

区画の集会所で住民説明会が開かれた。しかし、反応は冷淡だった。

「また役人の甘い話か」

「どうせ金だけ取られて、何も変わらないんだろう」

「水道?そんなもの金持ちの贅沢だ」

住民たちの不信は根深かった。これまで何度も行政の約束に裏切られてきたのだろう。

「皆さんの気持ちはよく分かります」

ウォル=水原は誠実に語りかけた。

「でも、私たちは違います。まず、無償で実演させてください」

「無償?」

「はい。効果がなければ、一銭も払う必要はありません」

住民たちの表情が少し和らいだ。

「本当に無料なのか?」

「本当です。ただし、一つだけお願いがあります」

「何だ?」

「成功した時は、他の人たちにも教えてください」

数日後、一軒の家で実証実験が始まった。家主は半信半疑だったが、興味深そうに見守っている。

グランドがいない今、土魔法は王都の技術者に頼む必要があった。しかし、アルカナが意外にも協力してくれた。

「面白そうじゃないか。やってみよう」

土魔法で地中に配管を通し、水魔法で水圧を管理する。セオドアの魔法陣が全体を制御している。

「すごい...」

蛇口から勢いよく清水が流れ出ると、住民たちは驚きの声を上げた。

「本当に家の中で水が使える!」

「しかも、こんなに清潔な水が!」

効果は一目瞭然だった。家主はその日から、近所の人々に熱心に宣伝して回った。

「あの家に行ってみろ!本当にすごいぞ!」

一週間後、区画中の住民が設置を希望するようになった。

「みんなで協力すれば、費用も安くなる」

住民たちは自主的に組織を作り、集団での導入を進めた。

「これは...予想以上の反応だ」

王都の役人たちも驚いた。住民が自発的に衛生改善に取り組む姿は、前例のないことだった。

一ヶ月後、区画全体の上水道が完成した。効果は劇的だった。

「子供たちの病気が激減した」

「水汲みの時間が節約できて、他の仕事ができるようになった」

「生活の質が完全に変わった」

この成功は王都全体に知れ渡った。他の貧民街からも導入の要請が殺到した。

「素晴らしい成果だ」

レディ・ハイクラスが満足そうに言った。

「これで予算承認も問題ないでしょう」

しかし、ウォル=水原の心は既に次のステップに向かっていた。

「次は下水処理システムです」

「下水?」

「上水道だけでは不十分です。汚水処理も同時に行わなければ、真の衛生改善にはなりません」

「それはまた大きな挑戦ですね」

「でも、必要なことです」

ウォル=水原は決意を固めた。

「俺は必ず、この王都を楽園に変えてみせる」

王都改革の第二段階が、いよいよ始まろうとしていた。

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