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1-7

オフィス街に響く地響き。

人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。

街路樹は薙ぎ倒され、破壊された自動車からは黒煙が上がる。

車道の真ん中に立つのは、怪人カマキライズ!

奇妙な笑い声が辺りにこだまする。

「カマカマカマッ! 今日からこの街はオレ様のもの! 人間どもは皆殺しだーッ!」

なんでも切り裂く鋭い鎌を持ち、体は硬い外殻に覆われている。

カマキライズはコンクリートを踏み砕きながら進む。進行方向に建つのは商業ビルだ。

一階部分のコンビニでは逃げ遅れた人々が恐怖で動けなくなっている。

ぬっと割れた窓ガラスから顔を覗かせるカマキライズに、誰もがもうダメだと諦めた時……、

「待ちなさい!」

廃墟となったオフィス街に一人の少女が立つ。

降り注ぐ夕日でその正体はわからない。

だが今更確かめるまでもなかった。

「やはり現れたな、メルシー!」

「罪なき人を傷つける! 無意味で卑劣な悪行三昧! 絶対に許さない!」

有賀カヨ子は万華鏡型の変身アイテム『メルシースコープ』を覗き込んで呪文を唱える。

「カレイド・エクロージョン!」

直後、鏡の空間にカヨ子は飛ばされる。鏡に写し出される自分の姿が次々と変化していく。

髪が伸びて色が変わる。服は袖が膨らんだフリフリのドレスへ。年齢もプラス五歳ぐらいお姉さんなる。

魔法のステッキを構えてメルシーは決めポーズをする。

「遍く命に感謝を込めて。カレイド・メル……」

「カヨ子おおおおおおおッ!!」

メルシーの視線の先、配達用の三輪バイクで太輔が猛然と迫って来る。

「お父さッ」

そのまま太輔はフルスロットルでカマキライズに突っ込む。

「……」

太輔の体は宙を舞う。

俯瞰で見下ろす全ての景色がスローモーションに見える。

怪人はバイクの直撃を受けながら微動だにしない。一方配達用のバイクは豆腐のようにぐしゃっとひしゃげる。

力の差は歴然だ。

あ死んだ……と思った直後、ゴロゴロゴロ、ビターン! と太輔の体は地面を転がり壁に叩きつけられる。

「……」

不思議と体に痛みはない。脳みそがアドレナリンでドブ漬けになっているからだろう。

しかし意識は朦朧とするし、体は思うように動かない。それでも怪人に一矢報いるべく這ってでも進もうとする。

だがコツンと、魔法のステッキに小突かれて太輔は意識を失う。

メルシーは虫の息の父親を抱きかかえる。目に涙をためて強くカマキライズを睨む。

「どうしてアナタたちは人を傷つけるの!?」

「……え?」

「絶対に許さない!」

「いや、あの……」

弁明の余地はない。

カマキライズは星になった。


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