表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

天王寺春と仲間たち

 はあーー。


 最悪だ。

 今から、夜勤なのに……。




「水かかったなーー。みんな大丈夫?」

「うん、大丈夫、大丈夫」

「俺も平気」

「私も大丈夫だよ」

「なら、よかった」

「戻ってタオルで体ふこう」

「だなーー。あれ?水止まった?」

「変な音もしないよ」

「えっ?本当?」



 近づくと確かに音も水も止まっている。

 あれ?何か変だな。

 駐車場の隅に来ているのに……。        

 何故かお客さんの車が一台も見当たらない。



「あれ。今日って、華金だよな」

「そうだけど」

「さっきまで20室、満室だったはずだよな?」

「そうだよ」

「おかしいなぁーー。何で、車が一台もないんだろう?」

「えっ、あるだろ」



 駐車場を見たみんなは固まっている。

 だって、どこからどうみてもお客さんの車がひとつもないからだ。



「みんな帰った?」

「そうだよな」

「中に入ってみよ」

「うん」



 ホテルの中に入る。


 フロントの後ろにスタッフの休憩スペース、その奥に洗濯場とスタッフの更衣室が併設されている。 

 別に変わったところはない。


「いや、満室のままだぞ」


 秋人の言葉に俺達は、「じゃあ、何で?」と疑問を持った。


 けれど、朝までお客さんは帰ることがないので車をどうしたかなど確かめようがない。


 変に電話をかけて、もしも最中だったらと考えるとゾッとする。



「モーニング渡す時にわかるんじゃないか?」

「そうだな」

「はい、タオル」

「ありがとう」

「じゃあ、私たちは拭いたら帰るね」

「うん、気をつけて」



 馬込さんと奈良崎さんは、いつも0時15分の電車に乗って帰る。

 2人はタオルで濡れた髪や服を拭いてから出て行く。

 さあ、夜食だ。

 2人が帰ってすぐに俺と御影は夜食を食べるのがお決まりだ。



「お疲れさま」

「お疲れ」



 防犯カメラに馬込さんと奈良崎さんが帰って行くのが映っている。



ーーピロロロン


 という音と共に二人は消えた。

 消えたというより、防犯カメラに映らなくなったってだけだ。


「今日の夜食は、何だろなーー。うわーー、最悪だわ」

「どうした?」

「いやーー、弁当持ってきてたつもりが家に忘れたわ」

「冷蔵庫にしまったんじゃないのか?」

「しまったと思ってたんだけどさ、なくて」

「天王寺は、昔からおっちょこちょいだなーー。仕方ないから、俺のストックラーメンわけてやるよ」

「えぇ、どうせ辛いんじゃないの?」

「辛くないのもストックしてるんだ」

「なら、それわけてくれよ」

「はいはい」



 何も知らない俺達は、何も気にせず笑っていた。



「お湯沸かすよ」

「よろしく」



 蛇口を捻って3秒してから、水を触ると……何だ?

 ネバネバとした液体が出てきた。


ーーうん?


 もう一度触ると、いつも通りのさらっとした水だった。


 何だったんだ?気のせいか?


 不思議に思いながら、俺はヤカンに水を入れる。


 そういえば来月には、スタッフルームに電気ケトルをオーナーが持ってきてくれるって約束になっていた。


 電気ケトルの方が、ガスコンロで沸かすよりも便利だ。



 ガスコンロはお湯が沸くまで、その場から離れられないから困る。



 ヤカンに入れた水を火にかけようとした時だった。



【ダメダメダメ】


「えっ?」

「何?」



 俺と御影は、どこから聞こえているのかわからない声に困惑しながら見つめ合う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ